宮廷ネクロマンサー、アンデッド嫌いの聖女に追放される~「人間は裏切るから戻ってきて!」と土下座されるがもう遅い!

つくも/九十九弐式

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吸血鬼の姫から不死王となり導いて欲しいと懇願される

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俺とエリザは不死者の国へと着いた。不死者の国は毒沼を超えたところにあった。荒れ果てた大地に聳える国。それが不死者達の国だ。
 彼らとて望んでこの地に住んでいるのではない。アンデッドは嫌われものであるのでこのような地に追いやられているのだ。

「エリザ様だ!」
「エリザ様がお帰りになったぞ!」

 グールやゾンビ、そしてスケルトンが騒ぎ始める。

「エリザ様! ご無事だったんだ! よかった!」
「だ、誰だ! あの人間は!」
「皆様、このお方は私を救ってくれたのです。この方は襲ってきたヴァンパイアハンターを返り討ちにし、私を助けてくれた命の恩人なのです」
「なんだと! あのエリザ様を助けてくださったのか!」
「ありがとうございます! エリザ様を助けてくれて!」
「ジル様、こちらにお越しください。私達不死者の国の城、不死城があります」
「ああ。お邪魔するよ」

 俺とエリザは不死城へと向かった。

「つかぬ事を聞いていいか? エリザ」
「はい。なんでしょうか。ジル様」
「お前にはご両親はいないのか」
「はい。父は荒唐無稽な人であり、もうこの不死の国にはおりませぬ。どこかで死んでいるやもしれませぬ。母も随分と前にヴァンパイアハンターに殺されました。私も同じようになっていたかと思うとぞっとします」
「そうか。悪い事を聞いたな」
「いえ。当然の疑問です。この人間で言う、国王や妃のような存在が出迎えないのですから」

 不死城にいたのは小間使いをしているスケルトンなどのアンデッドがいるのみであった。
 それらしい権威のある存在はいない。恐らくはエリザがそういった国王や妃などの正当な継承者だったのだろう。

「ジル様、お願いがあるのです」
「なんだ?」
「どうかジル様に我々の王となり私達アンデッドを導いて欲しいのです。皆心優しい良いアンデッドばかりなのです。しかし我々アンデッドはアンデッドというだけで忌み嫌われます。私達は人間に危害を加えるつもりはない。ただ心穏やかに暮らしたいだけなのにです」
「お前達アンデッドが危険な存在ではない事はネクロマンサーである俺が痛い程知っている」
「ジル様」
「お前達アンデッドより信用ならないのはむしろ人間の方だ。聖女アリシアに濡れ衣を着せられ、国外逃亡をせざるをえなくなった事により尚更気づいたよ。俺が力を貸すべきなのは人間ではなく、お前達アンデッドだってな」
「ジル様……それは」
「ああっ。なってやる。お前達の王。不死王に。そして導いてやる。そして俺達は作るんだ。アンデッドの住みよい楽園を」
「ありがとうございます。ジル様、私嬉しくて。ずっと心細かったんです。お父様もお母様もいなくて頼れる人もいなくて」
「おい。泣くなよ」
「ジル様、永遠にお慕いしております」

 エリザは俺に抱きついていた。涙で服が濡れる。俺はしばらくそのままエリザを泣かせてやった。今までずっと我慢してきたのだろう。
 こうして俺は不死王としてアンデッド達を導いていく事になったのである。
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