5 / 38
第5話 (勇者視点)剣聖を迎えに行く
しおりを挟む
宿屋の外に勇者であるロベルトはいた。
「へへっ……旦那」
ロベルトはあの外道者(アウトロー)達と待ち合わせをしていたのだ。
「首尾の方はどうなった?」
「そいつはもう、バッチリ。あの鍛冶師のガキをちゃんとあの地下迷宮(ハーデス)に捨てて参りましたぜ」
「そうか……これであの辛気臭い顔を見なくても済むわけだな……せいせいするぜ」
ロベルトはロキを殺害(実際にはできていないのだが、本人はそうだと思っている)したにも関わらず、僅かばかりの罪悪感すら抱いていなかった。
「へへっ……それはようございました。それで、旦那。約束のモノを」
「……ああ。こいつだ」
ロベルトは外道者(アウトロー)達に小袋を渡した。
「中身を見て確認してもよろしいでしょうか?」
「ああ。別にいいぜ」
「では……す、少し多いようですが」
「気持ちってやつだ。遠慮なく受け取ってくれよ」
「へへっ。では遠慮なく」
外道者(アウトロー)達に金を流す事がどういう事になるのか、当然のようにロベルトは知らないわけでもないだろう。殺しにすら平気で加担するような奴らだ。人さらい麻薬の密売。非合法な事なら何でも手をかけてくる。
間接的にではあるが、そいつらに加担する事になる。その結果、平和な世界が遠のいていってしまう事であろう。
「……そろそろ戻らないとパーティーの連中が怪しむ。じゃあな」
「へへ。それじゃあまたごひいきに」
こうしてロベルトは外道者(アウトロー)達と別れたのだ。
◇
宿屋での事だった。ロベルトはパーティーの仲間達と落ち合った。
「ロベルト、ロキがいないの」
回復術士のセリカが心配そうに言う。セリカは回復系の魔法を主とするサポート系の職業――回復術士を生業としている、美しい少女であった。
「ロベルト、あんた何か知らない?」
顔立ちは整っているが、少し気の強そうな少女が聞いてきた。彼女の名はルナリアと言い、セリカとは対照的に攻撃魔法を主とした魔導士の職業に就いている。
当然のように、彼女達はロキが忽然と姿を消した事を心配していた。何の事情も伝えられずに、突然姿が見えなくなれば不安に思うのも必然だった。
「……ああ。あいつだが、何でも故郷にいるお袋が危篤になったらして、飛んで帰っていったぜ」
ロベルトはこう言っているが、当然のように嘘である。
「そう……しばらく帰ってこないの?」
「ああ……かなり長期間の離脱になるだろうな」
「そうなの……不安ね。ロキがいないなんて」
「あんな奴、いなくても問題ないだろ。闘えるわけでもねーし。早い話が戦力外なんだよ」
ロベルトは吐き捨てる。
「ロベルト、その言い方は酷いじゃないの。ロキは今まで私達のパーティーを陰ながら支えてきてくれたのに」
セリカはそういう。
「ロキの鍛冶師としての腕は本物。ロキがいなかったら今の私達のパーティーはないも同然」
ルナリアもそう言った。
「た、確かに一理あるかもしれねーな。けど、装備も武器もLVも整った俺達にはあんな闘えもしねー無能、必要ないっての。それより、これからもっと頼りになる仲間を迎えに行くんだ。『ローレライ』って隣街の酒場で待ち合わせをしている。明日の早朝から移動するぞ。だから今日のところは寝ろ」
「わかったわ……」
「そうね。急用なら仕方ないか。早くロキが戻ってくるといいけど」
しかし、ロキがもう二度と戻ってはこない事をロベルトだけは知っていたのである。
こうしてロベルト達は翌日、隣街である『ローレライ』に移動していったのだ。
そこで『剣聖』と呼ばれる程に卓越した剣の腕前をした、一人の少女を迎えに行く為に。
そして、そこでもまたロベルトにとって予想外の出来事が起こるのであった。
「へへっ……旦那」
ロベルトはあの外道者(アウトロー)達と待ち合わせをしていたのだ。
「首尾の方はどうなった?」
「そいつはもう、バッチリ。あの鍛冶師のガキをちゃんとあの地下迷宮(ハーデス)に捨てて参りましたぜ」
「そうか……これであの辛気臭い顔を見なくても済むわけだな……せいせいするぜ」
ロベルトはロキを殺害(実際にはできていないのだが、本人はそうだと思っている)したにも関わらず、僅かばかりの罪悪感すら抱いていなかった。
「へへっ……それはようございました。それで、旦那。約束のモノを」
「……ああ。こいつだ」
ロベルトは外道者(アウトロー)達に小袋を渡した。
「中身を見て確認してもよろしいでしょうか?」
「ああ。別にいいぜ」
「では……す、少し多いようですが」
「気持ちってやつだ。遠慮なく受け取ってくれよ」
「へへっ。では遠慮なく」
外道者(アウトロー)達に金を流す事がどういう事になるのか、当然のようにロベルトは知らないわけでもないだろう。殺しにすら平気で加担するような奴らだ。人さらい麻薬の密売。非合法な事なら何でも手をかけてくる。
間接的にではあるが、そいつらに加担する事になる。その結果、平和な世界が遠のいていってしまう事であろう。
「……そろそろ戻らないとパーティーの連中が怪しむ。じゃあな」
「へへ。それじゃあまたごひいきに」
こうしてロベルトは外道者(アウトロー)達と別れたのだ。
◇
宿屋での事だった。ロベルトはパーティーの仲間達と落ち合った。
「ロベルト、ロキがいないの」
回復術士のセリカが心配そうに言う。セリカは回復系の魔法を主とするサポート系の職業――回復術士を生業としている、美しい少女であった。
「ロベルト、あんた何か知らない?」
顔立ちは整っているが、少し気の強そうな少女が聞いてきた。彼女の名はルナリアと言い、セリカとは対照的に攻撃魔法を主とした魔導士の職業に就いている。
当然のように、彼女達はロキが忽然と姿を消した事を心配していた。何の事情も伝えられずに、突然姿が見えなくなれば不安に思うのも必然だった。
「……ああ。あいつだが、何でも故郷にいるお袋が危篤になったらして、飛んで帰っていったぜ」
ロベルトはこう言っているが、当然のように嘘である。
「そう……しばらく帰ってこないの?」
「ああ……かなり長期間の離脱になるだろうな」
「そうなの……不安ね。ロキがいないなんて」
「あんな奴、いなくても問題ないだろ。闘えるわけでもねーし。早い話が戦力外なんだよ」
ロベルトは吐き捨てる。
「ロベルト、その言い方は酷いじゃないの。ロキは今まで私達のパーティーを陰ながら支えてきてくれたのに」
セリカはそういう。
「ロキの鍛冶師としての腕は本物。ロキがいなかったら今の私達のパーティーはないも同然」
ルナリアもそう言った。
「た、確かに一理あるかもしれねーな。けど、装備も武器もLVも整った俺達にはあんな闘えもしねー無能、必要ないっての。それより、これからもっと頼りになる仲間を迎えに行くんだ。『ローレライ』って隣街の酒場で待ち合わせをしている。明日の早朝から移動するぞ。だから今日のところは寝ろ」
「わかったわ……」
「そうね。急用なら仕方ないか。早くロキが戻ってくるといいけど」
しかし、ロキがもう二度と戻ってはこない事をロベルトだけは知っていたのである。
こうしてロベルト達は翌日、隣街である『ローレライ』に移動していったのだ。
そこで『剣聖』と呼ばれる程に卓越した剣の腕前をした、一人の少女を迎えに行く為に。
そして、そこでもまたロベルトにとって予想外の出来事が起こるのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
624
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる