赤毛の行商人

ひぐらしゆうき

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2話 黒鉄の丸薬

嵐の予感

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 朝、目を覚ますと自宅の居間であった。不快な暑さにこの頭の痛み。最悪の目覚めと言っていいだろう。
 水を飲んで、少しの間座って休んでいると朧げにだが昨日のことを思い出してきた。
 そうであった。藤丸家で夕食を御馳走になった時にやたらと飲まされたのだ。
 あの男、久しぶりの酒だからと舞い上がってキヌさんに止められても飲むのをやめず、帰ろうとした俺を引っ張って無理やり酒に付き合わせてきた。酔うとあのようになる事はわかっていたというのに、なんとも不用意。
 途中からの記憶がないのだが、いつ酒宴が終わったのやらわかったものではない。
 果たしてあれだけ飲んだ藤丸は仕事ができているのだろうか?誤診を起こさない事を願うばかりだ。
 ポケットに入れっぱなしになっていた懐中時計を見てみると時刻は12時を少し過ぎていた。外がやたら明るくて暑いと思ったが、まさか正午を過ぎているとは思わなかった。
 少し気分が落ちついたところで外に出て[龍神の瞳]を投げてみると、今まで見たこともない濁った青と灰色が混じり合ったきみの悪い色になった。
 時期も時期だ。大嵐がやってくるという事だろう。数日悪天候が続くのであれば、しばらく家に籠る事になるだろう。
 そうとなればしっかりと対策をしなくてはならない。家に戻り雨戸を締め切って風で開いてしまわないように、家に転がっていた木材で補強を行う。
 あとは食料だ。背負子を背負い、町に繰り出した。

 風太郎の店に行くと、1週間前と同様に暇そうにしていた。食料を出来るだけ売ってくれと頼むと、干し魚4匹と粟と麦を小袋一つずつを50銭で買う。
 これだけあれば嵐の間は凌げる。あとは帰りの道中で野草を摘み取り炊飯の際に入れてかさ増しに利用することで麦や粟を節約できる。
 あとは、乾いた薪や着火用の杉の葉を家の中に入れておく。
 これだけやっておけば心配はないだろう。
 起きるのが遅かったこともあって、嵐の対策をしていただけで夜になっていた。風が強くなり、空には分厚い雲が出てきている。この分だと丑三つ時には嵐が到来しそうだ。
 明日からは昨日は美味い食事を食わせてもらったので、今日は干し魚1匹で我慢する。
 食事を終えたらやる事などないし、蝋燭が勿体無い。寝床を準備してすぐに眠りについた。
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