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恋路と時の風化?

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田舎の無人駅を抜けて、電車がやってくるのを待つ私カディア。
なぜ、ここに来たのか、それはまだ言えない。
ただ、言えるのは人生後悔をしたくないから思い残した事をやりたい。
ただ、それだけさ。

そう言って、私はつばの長い帽子深く被る。
そして、電車が来るのを駅一つのベンチで待つ。
ただ、感じるのは少しのさみしさ。

「…」
さて、電車来た。
そう言って、一両編成の電車に乗り込んだ。
電車特有の金属のような匂いを感じた。
そして、席に着くと列車はゆっくりと走り出した。

しばらく、私は景色を傍観していた。
そして、しばらくしてトンネルに入った。
私の視覚は退屈して、目線が下に下がる。
私は、胸ポケットに入っていた懐中時計を取り出した。

カチッ
その音とともに開かれる外蓋。
目線は、時計の針ではなく、その内側にプリントされた写真を見た。
そう、それは私の妻と小さい頃の息子の写真。
「…あれから、何年経っただろうか?」
「…」
そして、しばらくしてトンネルを抜けた。
そして、町に向けて電車は走っている。
しばらくして、私は眠気に誘われ意識が深い闇に落ちた。



一方その頃、美玲、香恋、僕を乗せた車は紗那市へと着いた。
「ようこそ、紗那市へ」看板が僕らを町に着いたと知らせていた。
「香恋?ここって?」
僕は、疑問を香恋に問いかける。

「もぅ、私はあなたの実の姉よ」
「お姉ちゃんって呼んで?」
「はい、say sister」

「なぜ、英語?」
車内で、僕と姉こと香恋とがじゃれ合っていると、美玲が何も言わずこちらを見てくる。
その冷たい視線が怖い。
香恋は、何も言わず僕の体をつねる。
「痛い、痛い、痛いから無言でつねってくるのは止めて香恋」
香恋はむすっとして、つねっている手を引っ込めた。

「あれれ、美玲私たちのじゃれあいを見て嫉妬しちゃったのかな?」
香恋は、ここぞばかりに煽る。

美玲の挑発にまた煽る。
「ブラコンとか、マジでキモいんですけど」
車内の温度は、急に下がった気がするぐらい寒い。
また気まずい空気が流れる。
僕らを乗せた車は、紗那市のコインパーキングの前に着いた。
コインパーキングは、一時間あたり1000円だ。
「…」
「これが、町の値段ってやつか」
そう言いながらも、ここに止めた。

ここは紗那市、名産は海産物が有名らしい。
海が近いからだろうか?
この町は、3つに分かれている。
下町の港地区、中心街の紗那地区、上町の北地区、そして現在居るのが紗那地区。
つまり、中心街というわけだ。

「私は、ちょっとコンビニ行ってくるわね」
そう言って香恋は、コンビニに入っていった。

「おやぁ、あなたたち不思議な力が使えるようだねぇ」
そう言って音もなく現れたのは、知らないお祖母さんだった。
お祖母さんは、僕を見透かしたように言う。
「ネラスの使い手ね」
「私についていらっしゃいな」
そう言ってお祖母さんは、路地裏に入っていった。
大きな国道沿いの道路から一歩入ったこの路地裏は、建物との間の狭い空間が広がっていた。
路地裏は何もなく、ただあるのは細く長い道。
しばらく歩き、奥が眩しい空間にお祖母さんは消えていった。

「…先輩?行くんですか?」
そう言って、僕のシャツを引っ張る。
その手は、少し震えていた。
怖いのだろうか?
「行くよ、あのお祖母さん悪い人じゃなさそうだし」
そう言って僕は、シャツをつかまれながらもお祖母さんを追いかけるように、その空間へと入って言った。

空間に入ると光に包まれた。
しばらくして、ようやく目が慣れて景色が見えてくる。
そこで見えたのは、個性的な家が建っていた。
円錐形の離れと本館のらせん状の窓が特徴の家にお祖母さんは入っていった。

「…まだ、ついて行くの?」
美玲は、そう言って今度は僕の脇にくっついてきた。
「怖いの?」
そう聞くと、怖くなんか無いそう言って少し強がる。
そう言いつつ、また脇にくっついてきた。

大きな檜のドアの玄関を抜けて、本館の中央だろうか構造は3階建ての吹き抜け構造になっていて、太陽の光が入ってきてとても暖かい。
「大きな家だなぁ」
思わず口にするほど家は大きい。
2階にいたお祖母さんが手招いた。
その手招く方へ向かった。
ガラス張りの階段を上り、2階に上がった。
「後ろを向いてみ」
そう言って、僕らに後ろを振り返らせた。
らせん状の窓から光が入ってきて、それは中心に集まっていた。
美しい景色に思わず息をのむ。
「どう、綺麗でしょ」
そう言って、お祖母さんは僕らを奥の部屋に案内した。


奥の部屋に入ると、これまた個性的な内装だった。
部屋には、一面に豪華絢爛を感じさせるような雰囲気が漂っている。
天井にはシャンデリア、部屋を見渡せば広い空間、ぽつりと置かれた革張りのソファーに腰を掛けた。

お祖母さんは、僕らの対面のソファーに座った。
「さて、ここまで良く来てくれたねぇ」
「私は、えーと名前何だったけ?」

僕&香恋「え」
「冗談さ、乙女のかわいい遊び心さ」
そう言って、お祖母さんは微笑む。
「私は、フェイ・リーリアさ」
「今はここで、一人で暮らしている」
「君らの名前は、知っているよ」

「ローラスから聞いたからね」
僕らは、ローラスと聴いて身構える。
「あぁ、でも安心してあの子に頼まれたとかじゃないから」
「そう、ローラスの本名はフェイ・ローラス」
「あの子は、私の息子よ」
「そして、今あの子は危険な架け橋を渡っているわ」
「私は、それを止めたいのだがもう歳でな」
「そんで、あんたらに頼もうと思ったのさ」
「引き受け手はくれないか?」

「危険な架け橋って、なんですか?」
僕は、率直な考えを言う。
「それわね、ネラスの不正使用よ」
「あなたたちは、選ばれて力を使えるようになったわよね」
「でも、ローラスは違う、ファイル82の不正使用よ」
「力には代償をと言う言葉があるように代償が必要」
「だから、ローラスは香恋にもそれを取得させて、彼女に代償を押しつけたは」
「ようは、生け贄にしたのね」
「だから簡単に言えば、ローラスが力を使うほど香恋の命が減るそういうことさ」
「そいで、あんたたち引き受けてくれるかい?」
お祖母さんは、真剣な顔で言う。


「紗那町、紗那町終点です…」
電車のアナウンスに体を起こしたのは、私フェイ・カディア。
通称、喫茶店のおじさんだ。
長いハットをまた深く被り直し、終点の駅紗那市に着いた。
さて、電車がホームに着き、私は電車を降りた。
電車を降りて、懐中時計を見た時刻は12時を指していた。
空腹にお腹も音を立てていた。
「コンビニでもよって、おにぎりでも買うか」

そう言って私は、駅近くのコンビニによった。
おにぎりのコーナを眺めていた時、横に女性が来た。
その女性は、どこか見たことある女性だった。
私は、横を向くと彼女もまた横を向いた。
二人は、目を合わせると同時に目を見開く。
二人「あ」

「そう、目にした女性とは前に来たお客さんだった」
「私香恋って言います、そういって頭を下げる」
「こないだは、ありがとうございました」
「いやいや、私は思ったことを言ったまでだよ」
「行動したのは君、その結果を導き出したのも君さ」
「だがら、気にしなくていい」
そう言って、私は彼女の頭を上げさせた。

「と言うか、なんでマスターはここに?」
香恋は、そう言ってきた。
「ほら、前に人生に悔いが無いように生きてほしい、そう言ったでしょ」
「あれから、自分の人生を振り返ってみたんだ」
「そうしたら、まだ悔いが残っていてね」
「それを解消するために、ここに来たんだ」
「そう、私の妻に会うためにね」

そう言って、私と香恋はコンビニを後にした。
そして、香恋が着いてきたいと言うから、一緒に私の家に向かうことにした。
大きな国道沿いの道路から一歩入ったこの路地裏は、建物との間の狭い空間が広がっていた。

路地裏は何もなく、ただあるのは細く長い道。
しばらく歩き、奥が眩しい空間に私と香恋は消えていった。
空間に入ると、光に包まれた。
しばらくして、ようやく目が慣れて景色が見えてくる。

そこで見えたのは、個性的な家が建っていた。
円錐形の離れと本館のらせん状の窓が特徴の家に私と香恋は入っていった。
そして、香恋を2階の奥の部屋に案内した。

「ただいま、帰った」
そう言って、私は奥の部屋のドアを開けた。
そこに居たのは、知らない二人と私の妻だった。
「あんた、よくのうのうと帰ってこられたわね」
そう、妻リーリアが言う。

それもそうだろう、お金だけ渡して自分は夢だった職業を追いかけ子育ては、リーリアが受け持っていたからだろう。
リーリアは、そう言いながらも私のことを抱きしめた。
私も長年のさみしさに、妻を抱きしめ返した。
それもそうだろう、長い間があったが夫婦は夫婦。
時でも愛情は、風化しない。
そのことがよく分った。
その場にいる人は、どこか心が洗われる風景だった。
冬の太陽の光が気を遣ったように、光が部屋に満ちた。
抱きしめ合う二人の再会を祝福するように。
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