私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

第一皇子の思惑①

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◇◆◇◆

 ────時は少し遡り、第一・第二皇子の訪問を受け入れた直後のこと。
私は胃が痛くなるような空気に精神を蝕まれ、早くも泣きそうになっていた。
だって────向かい側のソファに腰掛ける金髪の美男子と茶髪の美青年が、一触即発の雰囲気を醸し出しているから。

 いっそのこと、二人同時にお通ししてしまえばいいと思って、そうしたけど……私の判断は間違っていたかもしれない。

「チッ……!何でこいつも一緒なんだよ!」

 苛立たしげにテーブルを蹴り上げ、マーティン殿下はエレン殿下を睨みつける。
零れたお茶や崩れたケーキなど目に入らないようで……謝罪はおろか、申し訳なさそうな素振りすら見せなかった。
『相変わらずの暴君っぷり』と辟易しつつ、私は使用人達に片付けるよう指示する。

「二人同時に来られたと聞いたので、てっきり三人でお話したいのかと思ったのですよ。お気を悪くされたのなら、謝ります」

 『私なりの配慮だった』と見え透いた嘘を吐き、新しく淹れてもらった紅茶に手を伸ばした。

「ところで、ご要件は何でしょう?」

「ハッ!いきなり本題とは、礼儀のなっていないやつだな!」

「私はただ、お二人の時間を奪いたくないだけですよ。特にマーティン殿下はお忙しいでしょう?狩猟大会の運営に加え、狩りにまで参加するんですから」

 『ここで道草を食っていていいのか』と問うと、彼は言葉に詰まる。
恐らく、図星だったのだろう。

「……チッ!」

 ソファの背もたれに身を預け、マーティン殿下は両腕を組んだ。
かと思えば、エレン殿下からようやく視線を外す。

「こっちの用件はただ一つ────エーデル公爵家とクライン公爵家が、私を支持するよう説得しろ」

 案の定とも言うべき要求を突きつけ、マーティン殿下は真っ赤な瞳に強い意志を宿した。
『断ることは許さない』と態度で示す彼を前に、私はティーカップに映る自分を眺める。

「申し訳ありませんが、それは致しかねます。私はもうすぐエーデル公爵家を出る身であり、まだクライン公爵家の苗字を名乗ることすら出来ない立場ですから。家門の決定に物申す権利など、ありません」

「そう思っているのは、お前だけだろ」

「と言いますと?」

「エーデル公爵家の現当主も、クライン公爵家の小公爵もお前の話になら耳を貸す筈だ。どっちもお前の反応をかなり気にしていたからな」

 『私の目に狂いはない』とでも言うように目元を軽く叩き、マーティン殿下はじっとこちらを見つめた。

 案外よく人を見ている……ただの暴れん坊では、なさそうね。

「確かにアイリスもヴィンセントもよく私を気に掛けて下さいます。でも……いえ、だからこそ己の分を弁えているのです、私は」
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