私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

家族③

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 不幸の始まりとも元凶とも言える人物の死に、私はどう反応すればいいのか分からなかった。
虚しいという気持ちを抱えながら俯き、強く手を握り締める。

 お継母様のことは別に嫌いじゃなかった。
確かに仕事を押し付けられるのは大変だったし、公爵家の財産を使い込まれるのはなんだか納得が行かなかったけど、許容出来る範囲ではあったから。
それにこの人はわざと私を貶めたり、虐げたりしなかったもの。
本当にただ自分の娘を可愛がっていただけ。
それが差別であり虐待だと言うのなら、そうなのかもしれないけど。

 『でも、私にはこのくらいの温度感がちょうど良かった』と考え、目を伏せた。
二度も母を失う羽目になるなんて、思わなかったから。

「────お母様……」

 火中の外に居たのはアイリスだったのか、少し離れた場所で立ち尽くす彼女を見つけた。
黒焦げの継母を見てポロポロと涙を零すアイリスは、覚束ない足取りで濡れた地面を歩く。
誰もが『見ていらない……』とでも言うように視線を逸らす中、彼女は継母の傍まで何とか足を運んだ。
と同時に、崩れ落ちるような勢いで膝をつく。

「おか……さま……わ、たし……ちゃんと……生きて……ます、よ……」

 か細い声でそう言い、アイリスはそっと継母の手を握った。
クシャリと顔を歪める彼女を前に、私は堪らず走り出す。
だって、私なら────今、誰かに抱き締めてほしいと思う筈だから。
実際に十年前、母を亡くしたときはそうだった。
そして、使用人やヴィンセントが必死に私を支えてくれた。
だから、今度は私が────誰かの心を救う番だ。

「アイリス」

 『貴方は一人じゃないのよ』と示すように、私は彼女の横へ腰を下ろす。
と同時に、アイリスの肩を優しく抱き寄せた。

「何があったのかは分からないけど、これだけは言わせて────ちゃんと傍に居るから。お継母様の分まで、私がアイリスを守るわ」

 『私達は血の繋がった姉妹なんだから』と主張すると、アイリスは

「う、ん……うん……ありが、と……」

 と何度も頷き、嗚咽を漏らした。
一人じゃないことが分かって安心したのか、久々に声を上げて泣く。
時折、『おか、さま……』と呟きながら。

 アイリス、今はたくさん泣いてたくさん弱音を吐き出していいのよ。
それは傷ついた心を癒すために、必要なことだから。
ヴィンセントは昔、母を亡くして泣いてばかりの私に『前へ進むための準備をしているんだから、何も恥じることはない』って言っていたわ。

 懐かしい記憶を手繰り寄せ、私はアイリスの頭を撫でる。
かつてのヴィンセントのように────泣き止むまで、いつまでも。
『どうか、早く心の傷が癒えますように』と祈りつつ、私はアイリスの嘆きにひたすら耳を傾けた。


✄-------------------‐-------------------‐------✄‬


いつも、『私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました』をお読みいただき、ありがとうございます。
作者のあーもんどです。


本作はこれにて、第一章完結となります。
第二章の執筆に伴い、しばらく更新をお休みします。

再開時期は未定です。
恐らく数ヶ月単位で間が空いてしまいますが、更新再開をお待ちいただけますと幸いです┏○ペコッ
(どんなに早くても、四月下旬頃かな?という予想です)


また、この場をお借りして言わせてください。
いつも感想・お気に入り登録・エールなど、ありがとうございます!
大変励みになります!


今後とも、『私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました』をよろしくお願いいたします┏○ペコッ
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