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第二章
神殿の調査《アルマン side》③
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もし、実験が上手く行けば生き残っている方は死んだ方の成れの果て……教皇聖下達の言う成功作を使わないといけなくなる。
自分の家族を文字通り道具として使う、というのはきっとかなり堪える筈だ。
『クライン公爵家やエーデル公爵家の血統魔法とは、訳が違う』と考え、私は口元に力を入れる。
さすがにちょっと同情してしまって。
『子供の精神で、そんなの耐えられるだろうか』と憂う私を他所に、研究者の男性は力説を続けた。
「量産することが可能になれば、性能のいい成功作だっていずれ出来るでしょう!ですから、あともう少しだけ時間をください!」
『お願いします!』と言って、研究者の男性は深々と頭を下げる。
どうにかしてクビを免れようとする彼に対し、教皇聖下は眉一つ動かさなかった。
が、
「よかろう。特別に猶予を与えてやる」
と、相手の懇願を聞き入れる。
さすがに今、彼を手放すのは惜しいと考えたようだ。
「だから、必ず結果を出せ。私に貢献しろ」
『次はないと思え』と通告し、教皇聖下は身を翻す。
と同時に、ゆるりと口角を上げた。
「血統魔法の生成方法を確立出来れば、私もいずれ……」
普通の人では聞き取れないほど小さい声でそう呟き、教皇聖下は一瞬だけほくそ笑んだ。
そのまま付き添いの神官達を引き連れて立ち去る彼を前に、研究者の男性は安堵の息を吐く。
が、気を抜いたのはほんの数秒で直ぐさま気持ちを切り替えた。
かと思えば、後ろを振り返る。
「早く成果を上げなければ……!」
早足にベッドの方へ戻り、研究者の男性は半ば投げ捨てるようにして息絶えた子供を下ろした。
そして、直ぐに次の子供をベッドに固定し、実験を再開する。
またもや阿鼻叫喚の地獄絵図となる地下室を前に、私は強く手を握り締めた。
研究者の様子からして、実験はより一層過激になっていくことだろう。
だから、証拠はかなり集めやすくなるが……あまり嬉しくないな。
でも、この子達の死を無駄にしないためにも仕事に集中しなければ。
今すぐ研究者の男性を嬲り殺したい気持ちを抑え、私はひたすら影に徹することを誓った。
自分の家族を文字通り道具として使う、というのはきっとかなり堪える筈だ。
『クライン公爵家やエーデル公爵家の血統魔法とは、訳が違う』と考え、私は口元に力を入れる。
さすがにちょっと同情してしまって。
『子供の精神で、そんなの耐えられるだろうか』と憂う私を他所に、研究者の男性は力説を続けた。
「量産することが可能になれば、性能のいい成功作だっていずれ出来るでしょう!ですから、あともう少しだけ時間をください!」
『お願いします!』と言って、研究者の男性は深々と頭を下げる。
どうにかしてクビを免れようとする彼に対し、教皇聖下は眉一つ動かさなかった。
が、
「よかろう。特別に猶予を与えてやる」
と、相手の懇願を聞き入れる。
さすがに今、彼を手放すのは惜しいと考えたようだ。
「だから、必ず結果を出せ。私に貢献しろ」
『次はないと思え』と通告し、教皇聖下は身を翻す。
と同時に、ゆるりと口角を上げた。
「血統魔法の生成方法を確立出来れば、私もいずれ……」
普通の人では聞き取れないほど小さい声でそう呟き、教皇聖下は一瞬だけほくそ笑んだ。
そのまま付き添いの神官達を引き連れて立ち去る彼を前に、研究者の男性は安堵の息を吐く。
が、気を抜いたのはほんの数秒で直ぐさま気持ちを切り替えた。
かと思えば、後ろを振り返る。
「早く成果を上げなければ……!」
早足にベッドの方へ戻り、研究者の男性は半ば投げ捨てるようにして息絶えた子供を下ろした。
そして、直ぐに次の子供をベッドに固定し、実験を再開する。
またもや阿鼻叫喚の地獄絵図となる地下室を前に、私は強く手を握り締めた。
研究者の様子からして、実験はより一層過激になっていくことだろう。
だから、証拠はかなり集めやすくなるが……あまり嬉しくないな。
でも、この子達の死を無駄にしないためにも仕事に集中しなければ。
今すぐ研究者の男性を嬲り殺したい気持ちを抑え、私はひたすら影に徹することを誓った。
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