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第二章
アイリスの懇願②
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「エーデル公爵家にとって今が大事な時期なのは、重々承知している。そんなときにセシリアが抜けるなんて、かなりの痛手だろう。でも、アイリス嬢はもう何も知らない子供じゃないし、一人でやって行けるんじゃないかな?」
『今後も必要とあらば、サポートするし』と語りつつ、ヴィンセントはこちらの理解を求めようとする。
でも、すんなり受け入れられることではなく……私もアイリスも黙ったままだった。
すると、ヴィンセントはちょっと言いにくそうにこう言う。
「それにね、こちらとしてもさすがにもう待てないんだ。そろそろ結婚に向けて動き出さないと、色々不都合が生じるからね」
『両親にも催促されているし』と言い、ヴィンセントは小さく肩を落とした。
多分、彼もエーデル公爵家とクライン公爵家の間で板挟みになって辛いんだと思う。
ヴィンセントがここまで明確に『時間切れ』を主張してきたということは、もう本当に限界なのだろう。
もし、まだ輿入れを先延ばしに出来るならそうしている筈だから。
『むしろ、よく耐えてくれた方よね』と思い、私は反論の言葉を呑み込む。
当初の予定を滅茶苦茶にしてワガママを聞いてもらった手前、もう無茶は言えなくて。
『使用人やアイリスには申し訳ないけど、ここは受け入れるしか……』と考え、私は顔を上げた。
その瞬間────隣に座っていたアイリスが、私の手を掴む。
「ぃ、行かないで……」
か細く、小さな声で……絞り出すように懇願し、アイリスは小刻みに震えた。
「お姉様まで居なくなったら、私……」
目にいっぱいの涙を溜め、アイリスはこちらを見つめる。
と同時に、酷く不安そうな素振りを見せた。
「私の家族はもうお姉様しか居ないの……お願い……ここに居て……」
イヤイヤと駄々っ子の如く首を横に振り、アイリスは掴んだ手を握り締める。
それはもう痛いほどに。
「私を……一人にしないで」
ハラハラと涙を零し、アイリスは少しばかり顔を歪めた。
いつになく小さく見える彼女を前に、私は大きく瞳を揺らす。
ここまで弱っているアイリスを目の当たりにするのは、初めてだったので。
『今後も必要とあらば、サポートするし』と語りつつ、ヴィンセントはこちらの理解を求めようとする。
でも、すんなり受け入れられることではなく……私もアイリスも黙ったままだった。
すると、ヴィンセントはちょっと言いにくそうにこう言う。
「それにね、こちらとしてもさすがにもう待てないんだ。そろそろ結婚に向けて動き出さないと、色々不都合が生じるからね」
『両親にも催促されているし』と言い、ヴィンセントは小さく肩を落とした。
多分、彼もエーデル公爵家とクライン公爵家の間で板挟みになって辛いんだと思う。
ヴィンセントがここまで明確に『時間切れ』を主張してきたということは、もう本当に限界なのだろう。
もし、まだ輿入れを先延ばしに出来るならそうしている筈だから。
『むしろ、よく耐えてくれた方よね』と思い、私は反論の言葉を呑み込む。
当初の予定を滅茶苦茶にしてワガママを聞いてもらった手前、もう無茶は言えなくて。
『使用人やアイリスには申し訳ないけど、ここは受け入れるしか……』と考え、私は顔を上げた。
その瞬間────隣に座っていたアイリスが、私の手を掴む。
「ぃ、行かないで……」
か細く、小さな声で……絞り出すように懇願し、アイリスは小刻みに震えた。
「お姉様まで居なくなったら、私……」
目にいっぱいの涙を溜め、アイリスはこちらを見つめる。
と同時に、酷く不安そうな素振りを見せた。
「私の家族はもうお姉様しか居ないの……お願い……ここに居て……」
イヤイヤと駄々っ子の如く首を横に振り、アイリスは掴んだ手を握り締める。
それはもう痛いほどに。
「私を……一人にしないで」
ハラハラと涙を零し、アイリスは少しばかり顔を歪めた。
いつになく小さく見える彼女を前に、私は大きく瞳を揺らす。
ここまで弱っているアイリスを目の当たりにするのは、初めてだったので。
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