54 / 75
第四章
異変
しおりを挟む
一体何がどうなってやがる....!?
俺───サラマンダーは一時的に精霊国へ帰国していた。
理由はただ一つ....俺の治める地域──火山地帯で過ごしていた精霊が一人行方不明になったから。
一晩帰らなかったくらいで何騒いでんだと思ったが、拐われたのがジェフなら話は別。
ジェフは気性が荒い者が多い炎の精霊の中で唯一落ち着いた性格をしている精霊だ。ついでに人見知りで怖がり。
そんな奴が一晩帰ってこないなんて絶対におかしい。他の奴ならともかくジェフは絶対にあり得ない。何かあったに決まってる。
大慌てで帰国した俺は火山地帯へと急いだ。
「サラマンダー!」
火山の頂上へ辿り着くと俺が居ない間の代理を任せていたエフリートが焦った様子でこちらに駆け寄ってきた。
その額には尋常じゃないほどの脂汗が浮き出ている。
いつもはわりと冷静なこいつがこんなに取り乱すなんて.....。
「大変だ!ジェフが人間に拐われた可能性が出てきた!」
「なんだと!?」
人間に拐われた?
それは明らかに可笑しいだろ。
だって、精霊国に人間は入れない。
ジェフと接触なんて....。
「リーンの話によると、ジェフはディアナのために小さなブーケを作ってあげたいからと花を摘みに精霊国の結界付近に赴いたらしい...もしかしたら、そのときに拐われたのかもしれない....ジェフは一つの事に夢中になると周りが見えなくなるから、それで....」
それで誤って結界から出てしまったかもしれないと....。
そして、人間達に拐われた....。
あり得なくはない話だな。
ジェフは花が大好きなディアナのためにいつも精霊国付近にしか咲いていない花をプレゼントしていたから....。
この前俺が野暮用で一時帰国したときなんて花冠と押し花をディアナに届けてほしいと頼まれたしな。
ディアナの喜ぶ顔を想像しながら楽しそうにプレゼントを拵えるジェフは本当に幸せそうだった。
「でも、何でいきなり精霊を誘拐なんて...」
確かにな。
精霊を誘拐したところで待っているのは報復のみ。
精霊からの報復は神からの天罰よりもずっと残酷で残虐だ。
情けなど俺達の辞書にはないからな。
「とりあえず、捜索隊を組んで精霊国の結界周辺を隈無く探せ。残り香の使用も許可する」
「分かった。全力で捜索にあたる」
「ああ、頼んだ」
俺はエフリートに指示を出し、ドラゴンに化けると空高く舞い上がる。
俺もジェフの捜索に加わりたいところではあるが、ディアナのところに戻らなくちゃいけないからな。
ジェフの捜索はエフリートに一任し、俺はディアナの待つスターリ国へと急いだ。
俺───サラマンダーは一時的に精霊国へ帰国していた。
理由はただ一つ....俺の治める地域──火山地帯で過ごしていた精霊が一人行方不明になったから。
一晩帰らなかったくらいで何騒いでんだと思ったが、拐われたのがジェフなら話は別。
ジェフは気性が荒い者が多い炎の精霊の中で唯一落ち着いた性格をしている精霊だ。ついでに人見知りで怖がり。
そんな奴が一晩帰ってこないなんて絶対におかしい。他の奴ならともかくジェフは絶対にあり得ない。何かあったに決まってる。
大慌てで帰国した俺は火山地帯へと急いだ。
「サラマンダー!」
火山の頂上へ辿り着くと俺が居ない間の代理を任せていたエフリートが焦った様子でこちらに駆け寄ってきた。
その額には尋常じゃないほどの脂汗が浮き出ている。
いつもはわりと冷静なこいつがこんなに取り乱すなんて.....。
「大変だ!ジェフが人間に拐われた可能性が出てきた!」
「なんだと!?」
人間に拐われた?
それは明らかに可笑しいだろ。
だって、精霊国に人間は入れない。
ジェフと接触なんて....。
「リーンの話によると、ジェフはディアナのために小さなブーケを作ってあげたいからと花を摘みに精霊国の結界付近に赴いたらしい...もしかしたら、そのときに拐われたのかもしれない....ジェフは一つの事に夢中になると周りが見えなくなるから、それで....」
それで誤って結界から出てしまったかもしれないと....。
そして、人間達に拐われた....。
あり得なくはない話だな。
ジェフは花が大好きなディアナのためにいつも精霊国付近にしか咲いていない花をプレゼントしていたから....。
この前俺が野暮用で一時帰国したときなんて花冠と押し花をディアナに届けてほしいと頼まれたしな。
ディアナの喜ぶ顔を想像しながら楽しそうにプレゼントを拵えるジェフは本当に幸せそうだった。
「でも、何でいきなり精霊を誘拐なんて...」
確かにな。
精霊を誘拐したところで待っているのは報復のみ。
精霊からの報復は神からの天罰よりもずっと残酷で残虐だ。
情けなど俺達の辞書にはないからな。
「とりあえず、捜索隊を組んで精霊国の結界周辺を隈無く探せ。残り香の使用も許可する」
「分かった。全力で捜索にあたる」
「ああ、頼んだ」
俺はエフリートに指示を出し、ドラゴンに化けると空高く舞い上がる。
俺もジェフの捜索に加わりたいところではあるが、ディアナのところに戻らなくちゃいけないからな。
ジェフの捜索はエフリートに一任し、俺はディアナの待つスターリ国へと急いだ。
2
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる