本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

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魔力の問題

「見事に生活リズム、崩れたなぁ」

 『キースさんに知られたら、更に過保護になりそう』と思いながら、私は朝食(時間的には、夕食)を平らげる。
パンくずのついた皿を前に、私は

「【光よ、この皿の汚れを清めたまえ】」

 光魔法の呪文を唱えた。
その途端、皿は白い光に包まれて浄化される。

 これなら後片付けも楽だし、魔法の特訓だって出来る。
まさに一石二鳥。

 すっかり綺麗になった皿を手に持ち、私はキッチンへ足を運んだ。

「────あっ、フライパン……」

 ハムを焼くために使った調理器具が目に入り、私は立ち尽くす。
まだ洗い物が残っていた事実に、少しショックを受けながら。

「忘れていた……」

 ガックリと肩を落とし、私はちょっと遠い目をした。

 さっき魔法を使ったばかりなので、浄化は使えない……だって────私の魔力、質は凄くいいけど、量がとっても少ないから。
そのため、六~八時間に一回くらいしか行使出来ない。

 『クールタイム長すぎだよね』とボヤき、私はふと自室のある方向を見る。

「セオドアさんの置いて行ったマナポーションを飲めば解決するけど、さすがにこんなことで使ったら怒られるよね」

 あくまで非常用のアイテムであることを加味し、私は小さく息を吐いた。

「このまま放置する訳にもいかないし、自分の手で洗うか」

 視線を前に戻して、私はシンクの方へ近づく。
とりあえず浄化済みの皿を棚に戻し、油ギトギトのフライパンを持ち上げた。
『どうせ洗うなら、皿の方が良かったな』と嘆きつつ、しっかり綺麗にしてフライパンも収納する。

「ふぅ……どっと疲れた」

 異世界こちらにはちゃんとした食器用洗剤なんてないので、フライパンを洗うだけでも一苦労だ。

 ジョ〇やキュキュッ〇が、恋しい……タブレットで製法を調べて、作ろうかな?
いや、やめておこう。
不器用な私が作ったら、悲惨なことになりそうだもん。
もし、改善するとしたら魔法……というか、魔力の方だね。

 キッチンから出て自室に行き、私はタブレットを開く。

「手っ取り早く魔力を増やす方法って、あるかな」

 『そしたら、魔法を連発出来るようになって楽なんだけど』と考え、私はあれこれ検索を掛けた。
その結果────いくつか、方法を発見。
とはいえ、どれもリスクのあるもので……躊躇してしまう。
ただ一つだけ……常人からすれば痛い代償でも、私なら全く問題ない方法があった。
『これなら』と意気込んで試してみると、見事に成功。
魔法の連発も、ちゃんと出来た。

「今なら────神獣召喚だって、出来るかもしれない」

 まあ、神獣召喚そのものは前から出来たみたいなんだけど。
でも、私の魔力量じゃ数分程度しか召喚出来ない上、極限まで絞り取られるためやらない方がいいとアドバイスされたんだよね。セオドアさんに。

 『完全に魔力がすっからかんになると、体調を崩すらしいし』と考えながら、私は机の引き出しから紙とペンを引っ張り出す。
それらを使って神獣召喚に必要な魔法陣を描き、背筋を伸ばした。

「【神獣ヴァイスよ、ここに来たれ】」

 手を翳してそう唱えれば────魔法陣から、白い光が吹き出す。
と同時に、手のひらサイズのドラゴンが飛び出してきた。

「これが神獣ヴァイス?思ったより、小さいな」

 空中に浮く真っ白なトカゲを眺め、私は少し頭を捻る。
その刹那、神獣ヴァイスが大型犬くらいの大きさになった。
まるで、『敢えて小さくなっているんだ』とでも言うように。

「あぁ、自由自在にサイズを変えられるんだね」

 『ライトノベルだと、お約束の設定だ』と納得し、私は顎に手を当てる。

「他の神獣達はどうなんだろう?」

 サイズ調整出来るのかどんな姿をしているのか興味が湧き、私はまた別の魔法陣を描いた。
そして、どんどん新たな神獣を呼び出していき────やがて、部屋は真っ白アニマルでいっぱいになる。

「おお~!壮観」

 椅子に腰掛けて神獣達を見やり、私は満足気な表情を浮かべた。
『写真、撮りたいなぁ』とぼんやり考える中、急に景色が変わる。
いや、遮られると言った方が正しいか。

「────ちょっと!どうして、こんなに神獣を呼び出しているんですか!」

 そう言って、私の両肩を掴んでくるのは────まさかのリーリエ様だった。
パニックになっているのか腰まである金髪や背中の翼が乱れていても気にしない彼女は、身を乗り出す。

「これじゃあ、こちらの手が足りなくなります!」

 『仕事が回りません!』と叫び、リーリエ様は私の肩を揺さぶった。
金の瞳に怒りと困惑を滲ませる彼女の前で、私は両手を上げる。

「も、申し訳ありません。リーリエ様を困らせるつもりは、なかったんです。ただ、ちょっと神獣を見てみたくて」

「はい!?それだけの理由で!?というか、そもそもどうやってこれだけの数を召喚したんですか!?普通に考えて、魔力が足りないでしょう!」

 『やろうと思って出来ることじゃない』と主張し、リーリエ様はズイッと顔を近づけてきた。
探るような……訝しむような視線を向けてくる彼女を前に、私は口を開く。

「えっと────実は邪法を用いて、寿命・・を魔力に変換しているんです」

「!?」

「普通なら即死案件ですが、私は不老のおかげでほぼ寿命無限。つまり、この邪法を使っても死にません」

 『これで、実質無限の魔力を手に入れました』と明かすと、リーリエ様は呆気に取られたように目を剥いた。

「そ、そうですか……」

 余程驚いたのか先程までの勢いがなくなり、リーリエ様は私の肩から手を離す。
そのまま一歩後ろに下がり、額に手を当てて嘆息した。
かと思えば、コホンッと一回咳払いする。

「一先ず、今後は召喚する神獣を一体までにしてください」

「はい」

 迷わず首を縦に振り、私は全ての神獣の召喚を解除した。
彼らの姿を見られて、もう満足しているため。
『特に用事もないし』と思っていると、リーリエ様が視線を上げる。

「では、私もそろそろ戻ります。降臨が長引くと、世界に悪影響を与えてしまうので。ミレイのおかげでせっかく安定したのに、乱してしまうのは本意じゃありません」

「分かりました」

 『ご迷惑をお掛けしました』と改めて謝罪する私に対し、リーリエ様は小さく頷く。
もういいですよ、と言うように。

「ミレイ、貴方の進む道が幸福で満ちていることを祈っています」

 そう言うが早いか、リーリエ様はパッと弾けるようにして姿を消した。
一気に人が居なくなったせいかいつもより広く感じる空間を前に、私は立ち上がる。

 寂しい……なんて、久しく抱いてなかった感情だな。

 おもむろに窓辺へ近づき、私は一人静かに空を眺めた。
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