5 / 52
Episode1
ヤクザの弟子入り
しおりを挟む
『才能の領域にあるものだ』と考えつつ、俺は目頭を押さえた。
まさか、弟子を取るような事態になるとは思わず……しかも、相手がヤクザの跡取りなんて。
「最悪だ……」
「本人を目の前にして言うことじゃないね~。まあ、お世辞を言われるよりマシだけど」
『僕は素直な人、わりと好きだよ』と言い、氷室悟史はうんと目を細めた。
どこかこの状況を楽しんでいるように見える彼の前で、俺はスマホを取り出す。
と同時に、とある人物から電話が掛かってきた。
まるで、こちらの様子を窺っていたかのようなタイミングだ。
「チッ……!あいつ、また観ていたな」
『覗き魔め』と毒づきながら応答ボタンを押し、俺は耳にスマホを当てる。
「おい、こら!リン!これは一体、どういうことだ!?」
開口一番に怒鳴り散らすと、通話相手は楽しげに笑った。
『相変わらず、セイは怒りっぽいね』
俺のことをあだ名で呼び、親しげに話し掛けてくるこいつこそ────風来家の次期当主である風来凛斗だった。
面倒事を尽く丸投げしてくる奴、とも言う。
『そんなんだから、彼女が出来ないんじゃない?』
「余計なお世話だ!てか、事情を説明しろ!」
『説明も何も、氷室組の若頭が言った通りだけど?』
「はっ!?視えるキッカケとなった祓い屋は、俺の他にも居るだろ!風来家の人間が何度かお祓いをしに来ていたことは、知ってんだぞ!」
ネタは上がってんだ!と言わんばかりに、俺は強気に出た。
が、リンは相変わらず飄々としている。
『うん。でも、決定打を放ったのは確実にセイでしょ?』
「だからって、俺に全ての責任をおっ被せるなよ!大体、依頼によって生じたトラブルは全部そっちで解決する契約だろ!」
一応すぐそこに当事者が居るのだが、俺は気にせず捲し立てた。
すると、リンは心底不思議そうに『えぇ?』と零す。
『確かにそういう取り決めはしたけどさ、これって果たしてトラブルと言えるのかな?』
「はぁ?何を言って……」
『だって、相手は────受講料として、月に二十万支払うって言っているんだよ?』
「にじゅ、二十万……!?」
思わず復唱してしまう俺に対し、リンはクスッと笑う。
『うん。しかも、講義日数に拘わらず一律で。要するに講義のなかった月でも、二十万を支払うってこと』
「なっ……!?」
これでもかというほど目を見開き、俺は氷室悟史の方を向いた。
『本気か!?』と視線だけで問う俺に、彼は迷わず首を縦に振る。
「ちなみに講義を受けた際はその内容や時間によって、別途料金を支払うよ」
「べ、別途って……!いくら何でも、多すぎだろ……!?」
「そんなことはないよ。相手の貴重な時間を割いてもらうんだから、これくらい払って当たり前」
金銭を支払うのが礼儀とさえ思っている氷室悟史に、俺はギョッとした。
────と、ここで会話を聞いていたリンが割り込んでくる。
『まあ、そういう訳でセイにとっても悪くない話だと思うんだよね。少なくとも、“今月の家賃が払えないー”って僕に泣きついてくる事態はしばらく防げるよ』
「……な、泣きついてはねぇーよ」
『ははっ。まあ、そういうことにしておこう。とにかく、氷室組の若頭の面倒は頼むよ』
「……」
美味い話であることは理解したが、ここで素直に了承するのもなんか癪でつい黙りこくる。
すると、リンはやれやれとでも言うように溜め息を零した。
『分かった。そんなに嫌なら、こっちで引き受けるよ。その代わり、二十万+αは僕の懐に入……』
「誰もやらねぇとは言ってないだろ!」
二十万+αを取られると思い、俺は慌てて言い返した。
『こっちに優先権があるんだ!』と主張すると、リンは小さく笑う。
『ふ~ん?じゃあ、やるんだね?』
「おうよ!────あっ……」
つい目先の欲に囚われて、頷いてしまい……俺はハッとする。
『クソッ……!またリンに嵌められた!』と肩を落とし、悶々とした。
いや、だってしょうがないだろ……!
このご時世、祓い屋稼業で食っていけるのはほんの一握りなんだから!
どこにも所属していないフリーの祓い屋なんて、特に廃業の危機なんだよ!
化学の発展によりどんどん居場所を奪われていく祓い屋という仕事に、俺は嘆息する。
正直、普通にサラリーマンとして働いた方が稼げるものの……頭脳も容姿も運動も平均並みの俺にとって、誇れる能力はこれくらいしかないのだ。
自分で言うのもなんだけど、祓い屋の腕はかなりいいからな。
そこら辺のやつより、全然使えると思う。
まあ、だからこそリンに面倒事を押し付けられる訳だが。
『万年金欠の身としては助かるっちゃ助かるけど』と思いつつ、通話を切る。
と同時に、氷室悟史へ向き直った。
「話は聞いていた通りだ。お前の弟子入りを許可する」
釈然としない気持ちをぶつけるように、俺はちょっと偉そうな態度を取る。
が、氷室悟史はあまり気にしていないようだった。
「助かるよ。ところで、君のことはなんて呼べばいい?師匠?先生?それとも、セイとか?」
「普通に壱成でいい」
「じゃあ、それで。あっ、僕のことも悟史でいいから」
「了解」
コクリと頷いて了承し、俺はおもむろに手を差し出す。
「そんじゃ、まあ……改めて、よろしくってことで」
「こちらこそ」
ニッコリ笑って握手を交わす悟史は、『仲良くしようね』と意気込んだ。
まさか、弟子を取るような事態になるとは思わず……しかも、相手がヤクザの跡取りなんて。
「最悪だ……」
「本人を目の前にして言うことじゃないね~。まあ、お世辞を言われるよりマシだけど」
『僕は素直な人、わりと好きだよ』と言い、氷室悟史はうんと目を細めた。
どこかこの状況を楽しんでいるように見える彼の前で、俺はスマホを取り出す。
と同時に、とある人物から電話が掛かってきた。
まるで、こちらの様子を窺っていたかのようなタイミングだ。
「チッ……!あいつ、また観ていたな」
『覗き魔め』と毒づきながら応答ボタンを押し、俺は耳にスマホを当てる。
「おい、こら!リン!これは一体、どういうことだ!?」
開口一番に怒鳴り散らすと、通話相手は楽しげに笑った。
『相変わらず、セイは怒りっぽいね』
俺のことをあだ名で呼び、親しげに話し掛けてくるこいつこそ────風来家の次期当主である風来凛斗だった。
面倒事を尽く丸投げしてくる奴、とも言う。
『そんなんだから、彼女が出来ないんじゃない?』
「余計なお世話だ!てか、事情を説明しろ!」
『説明も何も、氷室組の若頭が言った通りだけど?』
「はっ!?視えるキッカケとなった祓い屋は、俺の他にも居るだろ!風来家の人間が何度かお祓いをしに来ていたことは、知ってんだぞ!」
ネタは上がってんだ!と言わんばかりに、俺は強気に出た。
が、リンは相変わらず飄々としている。
『うん。でも、決定打を放ったのは確実にセイでしょ?』
「だからって、俺に全ての責任をおっ被せるなよ!大体、依頼によって生じたトラブルは全部そっちで解決する契約だろ!」
一応すぐそこに当事者が居るのだが、俺は気にせず捲し立てた。
すると、リンは心底不思議そうに『えぇ?』と零す。
『確かにそういう取り決めはしたけどさ、これって果たしてトラブルと言えるのかな?』
「はぁ?何を言って……」
『だって、相手は────受講料として、月に二十万支払うって言っているんだよ?』
「にじゅ、二十万……!?」
思わず復唱してしまう俺に対し、リンはクスッと笑う。
『うん。しかも、講義日数に拘わらず一律で。要するに講義のなかった月でも、二十万を支払うってこと』
「なっ……!?」
これでもかというほど目を見開き、俺は氷室悟史の方を向いた。
『本気か!?』と視線だけで問う俺に、彼は迷わず首を縦に振る。
「ちなみに講義を受けた際はその内容や時間によって、別途料金を支払うよ」
「べ、別途って……!いくら何でも、多すぎだろ……!?」
「そんなことはないよ。相手の貴重な時間を割いてもらうんだから、これくらい払って当たり前」
金銭を支払うのが礼儀とさえ思っている氷室悟史に、俺はギョッとした。
────と、ここで会話を聞いていたリンが割り込んでくる。
『まあ、そういう訳でセイにとっても悪くない話だと思うんだよね。少なくとも、“今月の家賃が払えないー”って僕に泣きついてくる事態はしばらく防げるよ』
「……な、泣きついてはねぇーよ」
『ははっ。まあ、そういうことにしておこう。とにかく、氷室組の若頭の面倒は頼むよ』
「……」
美味い話であることは理解したが、ここで素直に了承するのもなんか癪でつい黙りこくる。
すると、リンはやれやれとでも言うように溜め息を零した。
『分かった。そんなに嫌なら、こっちで引き受けるよ。その代わり、二十万+αは僕の懐に入……』
「誰もやらねぇとは言ってないだろ!」
二十万+αを取られると思い、俺は慌てて言い返した。
『こっちに優先権があるんだ!』と主張すると、リンは小さく笑う。
『ふ~ん?じゃあ、やるんだね?』
「おうよ!────あっ……」
つい目先の欲に囚われて、頷いてしまい……俺はハッとする。
『クソッ……!またリンに嵌められた!』と肩を落とし、悶々とした。
いや、だってしょうがないだろ……!
このご時世、祓い屋稼業で食っていけるのはほんの一握りなんだから!
どこにも所属していないフリーの祓い屋なんて、特に廃業の危機なんだよ!
化学の発展によりどんどん居場所を奪われていく祓い屋という仕事に、俺は嘆息する。
正直、普通にサラリーマンとして働いた方が稼げるものの……頭脳も容姿も運動も平均並みの俺にとって、誇れる能力はこれくらいしかないのだ。
自分で言うのもなんだけど、祓い屋の腕はかなりいいからな。
そこら辺のやつより、全然使えると思う。
まあ、だからこそリンに面倒事を押し付けられる訳だが。
『万年金欠の身としては助かるっちゃ助かるけど』と思いつつ、通話を切る。
と同時に、氷室悟史へ向き直った。
「話は聞いていた通りだ。お前の弟子入りを許可する」
釈然としない気持ちをぶつけるように、俺はちょっと偉そうな態度を取る。
が、氷室悟史はあまり気にしていないようだった。
「助かるよ。ところで、君のことはなんて呼べばいい?師匠?先生?それとも、セイとか?」
「普通に壱成でいい」
「じゃあ、それで。あっ、僕のことも悟史でいいから」
「了解」
コクリと頷いて了承し、俺はおもむろに手を差し出す。
「そんじゃ、まあ……改めて、よろしくってことで」
「こちらこそ」
ニッコリ笑って握手を交わす悟史は、『仲良くしようね』と意気込んだ。
28
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる