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第四章
第148話『ファルコ』
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「多数決の結果、ラミエルの意見を支持する者が多かったため、我々の今後の方針は全ダンジョンの攻略となる」
声高らかにそう宣言し、ヘスティアさんは腰に手を当てた。
「では、続いて────全ダンジョン攻略クエストのことについて、話し合う。一口に全ダンジョン攻略クエストと言っても東西南北四つのダンジョンがある上、それぞれ出てくる魔物や攻略状況も違う。なので、ここでは何処のダンジョンを、いつから、どの程度の戦力で攻略に挑むのか決める。まずはどのダンジョンから、攻略するか決めていこう。意見のある者は居るか?」
ヘスティアさんの問い掛けに、同盟メンバーは固く口を閉ざす。
自分や仲間の命にも関わってくる議題のため、下手なことは言えないのだろう。
むしろ、ここで積極的に発言出来る人なんて居る訳……。
「────ちんたらちんたら一個ずつ攻略するより、全てのダンジョンを一斉に攻略した方がいいんじゃないか?そっちの方が効率いいし」
「キャー!カイン様、頭良い~!さすがですぅ!ミラちゃん、感激しましたぁ!」
「ちょ、カイン!ミラ!」
「全ダンジョン一斉攻略なんて、出来る訳ないだろ!ダンジョン一つ攻略するのだって、大変なのに!」
「はぁ~?何でお前らにそんなこと言われないといけねぇーんだよ?」
「そうですよぉ!マヤとアキラは黙ってて~!カイン様の素晴らしいお話が聞こえないじゃなぁい!」
相変わらずのバカップルっぷりを発揮するカインとミラさんに、私達は頭を振った。
『もうダメだ、この人達』とでも言うように。
「全ダンジョン一斉攻略か。まあ、なかなか面白い意見だな。だが、人員の確保と物資の調達が出来なければ実現不可能な難しいアイディアでもある」
「生産系ギルドの代表として言わせてもらうと、全ダンジョン一斉攻略に必要な物資を調達出来るまで少なくとも半年は掛かるのです~。とてもじゃありませんが、今すぐ用意は出来ないのですよ~」
『半年』というなかなかリアルな数字を提示したアスタルテさんに、他の生産系ギルドの代表者たちは大きく頷く。
『素材集めだって、大変なのに』と零す彼らを前に、リーダーは腕を組んだ。
「効率を重視するなら、一斉攻略より一つずつ攻略して行った方がいいだろ。戦闘組がダンジョン攻略を行っている間に、次のダンジョン攻略用の物資調達をしてもらう。これなら、物資調達のため半年も待機することはない」
ここぞとばかりに一斉攻略の粗を突き、リーダーは遠回しにカインの短慮を指摘した。
すると、カインは反射的に噛み付く。
「なっ!?俺の意見を否定する気か!?大体、物資調達の間はそれぞれレベル上げや訓練に打ち込めばいい話だろ!?」
「半年程度じゃ、そこまで変わらない。まあ、しないよりかはマシだが」
「なら……!」
「そもそも、一斉攻略をする理由も意味もない。無駄に戦力が分散される上、効率も悪く、失敗した時の損失も大きい。お前がそこまでして、一斉攻略を勧める理由はなんだ?」
おぉ……リーダーってば、結構ズバズバ言うなぁ。
まあ、全部正論だけど。
『一斉攻略はどう考えても、リスクが大きすぎるよね』と肩を竦める私の前で、ヘスティアさんは口を開く。
「一応君の意見も心に留めておくが、あまり期待しないでほしい。正直、その意見が最善とは思えないからな」
「なっ……!?」
議長のヘスティアさんにまでやんわり意見を否定されてしまい、カインは顔を真っ赤にする。
怒りで身を震わせる彼を他所に、ヘスティアさんはふと周囲を見回した。
「それで、他に意見はないか?」
目頭を押さえながら意見を仰ぐヘスティアさんに、一人の男性が手を挙げる。
二の腕から手首にかけて生えた、鳥の羽を揺らしながら。
「ワイは一番攻略が進んでいるイーストダンジョンから、順番に攻略した方が良いと思うで~。自分で言うのもなんやけど、ワイら『牙』はイーストダンジョン最高到達点に達したギルドやし、ある程度サポートやアドバイスも出来ると思うんや。さすがに指揮官になりたいとまでは、言わんけどな」
「ふむ……なるほど。確かにファルコ率いる『牙』が一緒なら、イーストダンジョンを先に攻略するのもいいかもしれないな」
「熟練のプレイヤーであるファルコさんが居れば、安心なのです~」
「いやぁ、そう言われると照れるな~」
カインの時と違い、多くの者の支持を集めるこの人は────獣人戦士が多く在籍する『牙』のギルドマスター ファルコ。
黄色のメッシュが入った茶髪に、キリッとしたオレンジ色の瞳を持つ彼は“鷹”の獣人戦士として知られている。
そして獣人戦士とは、動物の特徴を活かして戦う職業のこと。
主な能力は二つ。
まずは獣人化。
これは人型を保ったまま、体の一部を動物に変化させるというもの。
そうすることで、動物の特徴や利点を使うことが出来るのだ。
例えば、筋力アップとか嗅覚上昇とか……動物によって出来ることは異なるが、上手く使えばかなり役立つ。
次に獣化。
これは完全に動物へ姿を変えることである。
無論、こっちの方が動物本来の力を引き出せるため、獣人戦士の殆どは奥の手として使っていた。
ファルコさんの獣化は見たことないけど、相当凄いらしい。
『天空の覇者』という異名を与えられるくらいには。
「ファルコの意見には一理あるな。イーストダンジョンなら、ここからも近いし。人員や役職はさておき、イーストダンジョンを先に攻略するという意見には賛成だ。他の者はどう思う?」
ヘスティアさんの呼び掛けに、同盟メンバーは首を縦に振った。
賛成だ、とでも言うように。
────こうして、私達はイーストダンジョン攻略を最初の目標として掲げることになった。
声高らかにそう宣言し、ヘスティアさんは腰に手を当てた。
「では、続いて────全ダンジョン攻略クエストのことについて、話し合う。一口に全ダンジョン攻略クエストと言っても東西南北四つのダンジョンがある上、それぞれ出てくる魔物や攻略状況も違う。なので、ここでは何処のダンジョンを、いつから、どの程度の戦力で攻略に挑むのか決める。まずはどのダンジョンから、攻略するか決めていこう。意見のある者は居るか?」
ヘスティアさんの問い掛けに、同盟メンバーは固く口を閉ざす。
自分や仲間の命にも関わってくる議題のため、下手なことは言えないのだろう。
むしろ、ここで積極的に発言出来る人なんて居る訳……。
「────ちんたらちんたら一個ずつ攻略するより、全てのダンジョンを一斉に攻略した方がいいんじゃないか?そっちの方が効率いいし」
「キャー!カイン様、頭良い~!さすがですぅ!ミラちゃん、感激しましたぁ!」
「ちょ、カイン!ミラ!」
「全ダンジョン一斉攻略なんて、出来る訳ないだろ!ダンジョン一つ攻略するのだって、大変なのに!」
「はぁ~?何でお前らにそんなこと言われないといけねぇーんだよ?」
「そうですよぉ!マヤとアキラは黙ってて~!カイン様の素晴らしいお話が聞こえないじゃなぁい!」
相変わらずのバカップルっぷりを発揮するカインとミラさんに、私達は頭を振った。
『もうダメだ、この人達』とでも言うように。
「全ダンジョン一斉攻略か。まあ、なかなか面白い意見だな。だが、人員の確保と物資の調達が出来なければ実現不可能な難しいアイディアでもある」
「生産系ギルドの代表として言わせてもらうと、全ダンジョン一斉攻略に必要な物資を調達出来るまで少なくとも半年は掛かるのです~。とてもじゃありませんが、今すぐ用意は出来ないのですよ~」
『半年』というなかなかリアルな数字を提示したアスタルテさんに、他の生産系ギルドの代表者たちは大きく頷く。
『素材集めだって、大変なのに』と零す彼らを前に、リーダーは腕を組んだ。
「効率を重視するなら、一斉攻略より一つずつ攻略して行った方がいいだろ。戦闘組がダンジョン攻略を行っている間に、次のダンジョン攻略用の物資調達をしてもらう。これなら、物資調達のため半年も待機することはない」
ここぞとばかりに一斉攻略の粗を突き、リーダーは遠回しにカインの短慮を指摘した。
すると、カインは反射的に噛み付く。
「なっ!?俺の意見を否定する気か!?大体、物資調達の間はそれぞれレベル上げや訓練に打ち込めばいい話だろ!?」
「半年程度じゃ、そこまで変わらない。まあ、しないよりかはマシだが」
「なら……!」
「そもそも、一斉攻略をする理由も意味もない。無駄に戦力が分散される上、効率も悪く、失敗した時の損失も大きい。お前がそこまでして、一斉攻略を勧める理由はなんだ?」
おぉ……リーダーってば、結構ズバズバ言うなぁ。
まあ、全部正論だけど。
『一斉攻略はどう考えても、リスクが大きすぎるよね』と肩を竦める私の前で、ヘスティアさんは口を開く。
「一応君の意見も心に留めておくが、あまり期待しないでほしい。正直、その意見が最善とは思えないからな」
「なっ……!?」
議長のヘスティアさんにまでやんわり意見を否定されてしまい、カインは顔を真っ赤にする。
怒りで身を震わせる彼を他所に、ヘスティアさんはふと周囲を見回した。
「それで、他に意見はないか?」
目頭を押さえながら意見を仰ぐヘスティアさんに、一人の男性が手を挙げる。
二の腕から手首にかけて生えた、鳥の羽を揺らしながら。
「ワイは一番攻略が進んでいるイーストダンジョンから、順番に攻略した方が良いと思うで~。自分で言うのもなんやけど、ワイら『牙』はイーストダンジョン最高到達点に達したギルドやし、ある程度サポートやアドバイスも出来ると思うんや。さすがに指揮官になりたいとまでは、言わんけどな」
「ふむ……なるほど。確かにファルコ率いる『牙』が一緒なら、イーストダンジョンを先に攻略するのもいいかもしれないな」
「熟練のプレイヤーであるファルコさんが居れば、安心なのです~」
「いやぁ、そう言われると照れるな~」
カインの時と違い、多くの者の支持を集めるこの人は────獣人戦士が多く在籍する『牙』のギルドマスター ファルコ。
黄色のメッシュが入った茶髪に、キリッとしたオレンジ色の瞳を持つ彼は“鷹”の獣人戦士として知られている。
そして獣人戦士とは、動物の特徴を活かして戦う職業のこと。
主な能力は二つ。
まずは獣人化。
これは人型を保ったまま、体の一部を動物に変化させるというもの。
そうすることで、動物の特徴や利点を使うことが出来るのだ。
例えば、筋力アップとか嗅覚上昇とか……動物によって出来ることは異なるが、上手く使えばかなり役立つ。
次に獣化。
これは完全に動物へ姿を変えることである。
無論、こっちの方が動物本来の力を引き出せるため、獣人戦士の殆どは奥の手として使っていた。
ファルコさんの獣化は見たことないけど、相当凄いらしい。
『天空の覇者』という異名を与えられるくらいには。
「ファルコの意見には一理あるな。イーストダンジョンなら、ここからも近いし。人員や役職はさておき、イーストダンジョンを先に攻略するという意見には賛成だ。他の者はどう思う?」
ヘスティアさんの呼び掛けに、同盟メンバーは首を縦に振った。
賛成だ、とでも言うように。
────こうして、私達はイーストダンジョン攻略を最初の目標として掲げることになった。
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