『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第四章

第179話『第三十一階層』

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 その後ボスフロアで少し休憩を挟み、私達攻略メンバーは第三十一階層に来ていた。
のだが……極一名ほど、死んだような顔で突っ立っている人が。

「あのクソ女、顔やばくなーい?めっちゃブサイクなんだけどー!」

「シムナさん、もう少し言葉を選んでください。本人に聞こえたら、どうするんですか」

「えー?別にいいじゃーん。聞かれて困るような内容じゃないしー」

 いや、そうだけど……聞いた本人は傷ついちゃうでしょ!
と言っても、きっと理解してくれないよね……とほほ。

「ていうか、あのクソ女に気を使う必要なくなーい?だって、ラミエルを殺そうとした奴なんだよー?悪口くらい、甘んじて受け入れろって感じー!殺されないだけ有り難く思って欲しいよねー」

「……」

「ん?ラミエルー?どうかしたー?お腹でも痛いー?」

 心配そうにこちらの顔を覗き込んで来るシムナさんは、自分の言ったことの理不尽さに気づいていないらしい。

「……シムナさん、それ本気で言ってます?」

「ん?それって、どれのことー?もしかして、あのクソ女に対する言い分のことー?」

「はい、ミラさんに対する理不尽な言い分・・・・・・・のことです」

「えっ?理不尽?そんな訳ないじゃーん!それ相応の罰って言っ……」

 悪びれる様子もなくいけしゃあしゃあと反論するシムナさんに、私は大きく息を吐く。
と同時に、彼の頬をビンタした。

「罰を決めるのは、シムナさんじゃありません。貴方にはミラさんを責める権利すらない」

「ら、ラミエル……?」

 動揺を隠し切れないシムナさんは叩かれた頬を押さえ、躊躇いがちにこちらを見つめ返す。
が、私はそんなのお構い無しに話を続けた。

「シムナさんが私を心配してくれた事も、ミラさんに怒りを覚えている事も知っています。そして、私のことを大切に思ってくれるシムナさんにはいつも感謝しています」

 そう、私は知っている……分かっている。
シムナさんが私のことを大切に思うあまり、暴走してしまっていることを。
でも……だからこそ、私が彼の間違った考えを正さなきゃいけなかった。

「ですが、私のことを大切に思っているからと言って、理不尽にミラさんを責めていい理由にはなりません。ミラさんを責めていいのは、被害者である私やファルコだけです。それ以外の人がミラさんを理不尽に責めるのは────ただのいじめと同じです!」

「い、じめ……?」

「はい。さっき、シムナさんが取った行動はいじめと大差ありません」

 キッパリとそう宣言すれば、シムナさんは何故か張り詰めた表情で黙り込んでしまった。
『いじめ』という単語に思うところが、あるらしい。

 ……少し言い過ぎちゃったかな?
でも、シムナさんにはこれくらい言っておかないと、通じないし……。

 『ここで引く訳には……』と悶々とする私の前で、シムナさんは少し俯く。

「……ない」

「え?」

「────僕は悪くない!!」

 何故かここで逆上したシムナさんは私を睨みつけて、そう言い放った。
子供みたいな言い分を前に、私は一瞬フリーズする。

「え、あの……?」

「僕はいじめなんて、やってないから!!」

「えっと、まずは落ち着いて話を……」

「『いじめ』って言葉を撤回するまで、僕は一言も喋らないし、ラミエルのことも守ってあげないから!ふんっ!」

 子供みたいな反抗を見せるシムナさんは、フイッと顔を反らす。
何故『いじめ』という単語に、ここまで反応したのかは分からないが、きっと彼なりの理由とプライドがあるのだろう。

 イーストダンジョンの攻略中に仲間割れは良くないけど……まあ、仕方ない。元はと言えば私のせいだしね。
それに何より────シムナさんが大きく成長するにはこうやって、ぶつかり合うことも大切だ。

 私はシムナさんの必死の抵抗を甘んじて受け入れ、飛び掛ってきた第三十一階層の魔物モンスター────ガーゴイルを軽く蹴散らす。
普段はシムナさんが処理してくれる危険を、自分の手で排除するのはなかなか大変だった。
まあ、ガーゴイルを杖でタコ殴りにする私より、シムナさんの方が大変そうだが……精神的な意味で。
怪我するんじゃないか?と気が気じゃない様子の彼に、私は苦笑を漏らす。
発言と行動が全く一致していないよ、と思いながら。
一先ずガーゴイルに毒針でトドメを刺し、私は身を起こす。
と同時に、シムナさんがこちらを見た。

「て、撤回するなら今のうちだからね!今回は運良く倒せたみたいだけど、次もこうとは限らないし、早く撤回すれば!?」

 『一言も喋らない』という制約はどうでもよくなったのか、シムナさんは発言を撤回するよう訴え掛けてくる。
やはり、私一人で戦わせるのは不安でしょうがないらしい。

 本当に分かりやすい人だな……そんなに心配なら、『守ってあげない』方の制約も解けば良かったのに。
もしくは周りに気づかれないよう、私の戦闘をサポートするとか……まあ、そこまで気が回らなかったんだろうけど。
なんにせよ────

「────撤回はしません。私は何も間違ったことは言ってませんから」

「っ……!!」

 ごめんなさい、シムナさん。今回ばかりは私も引く訳にはいかないの。
だって、ここで折れればシムナさんの成長する機会を奪ってしまうから。そんな勿体ないこと、出来ない。

 グニャリと顔を歪めるシムナさんを前に、私は『絶対に折れない』と改めて決心した。
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