『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第四章

第189話『第四十一階層』

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 ────例のごとくボスフロアで小休憩を挟んだ私達は、第四十一階層まで降りていた。

 第四十一階層の魔物モンスターは、アクリス。
ヘラジカのような姿をした魔物モンスターで、草木を操ることが出来る。
草食なので人を食べることはないが、気性が荒くよく人を襲っているらしい。
────というのが、公式に記載されていたアクリスの情報だ。

「もぉー!この草、しつこーい!切っても切っても直ぐに再生するから、キリがないんだけどー!」

 斧を振り回しながらプンスカ怒るシムナさんは、伸びてきたツルを細かく切り刻む。
が、ツルは全く死ななくて……バラバラになった破片を集めて退散して行った。

「もうやだ!もう無理!もうげんかーい!草刈りは飽きたよー!大体、何でこの階層だけ植物が生えているのー!?もさもさしてて、嫌だよー!」

 斧を一旦地面に置きガシガシと頭を搔き廻す彼に、私は苦笑を浮かべる。
『肉を切り裂くのが趣味のシムナさんからすれば、苦痛でしかないよね……』と思いながら。

「シムナさん、ミラさんの護衛は私に任せてアクリスを倒してきてください」

「えっ?そんなの出来る訳ないじゃーん!僕が居なくなったら、誰があの植物を処理するわけー!?」

「それは私の方でやります。剣の心得くらいはありますから」

「はぁ!?そんなのダメー!絶対ダメー!」

 胸の前で両手をクロスさせたシムナさんは、大きな✕マークを作る。
頑として首を縦に振ろうとしない彼に、私は溜め息を零した。

「ですが、大元を断たない限りこの植物攻撃が止まることはありません」

「なら、他の奴らにアクリス討伐を頼めばいいでしょー!」

「他の方では、難しいから言っているんです。襲い来る複数の植物を正確に躱しながら、アクリスに近づけるのはシムナさんも含める極小数のメンバーだけです。そして、その極小数のメンバーの中でアクリスを一網打尽に出来るのはシムナさんだけなんですよ」

「……」

 何でもかんでも自分基準で考えてしまうシムナさんに分かりやすく説明すると、彼は難しい顔をして黙り込む。
その表情から察するに、言い返す言葉がなくなって沈黙している訳ではないらしい。
まるで、何かを迷うように……躊躇うように視線をさまよわせ、一つ息を吐いた。
かと思えば、斧を拾い上げる

「ねぇ、ラミエル」

「は、はい。何でしょう?シムナさん」

「一つ聞きたいんだけど、あのシカを倒すことが出来れば何でもいいんだよね?」

「えーっと……周りに被害が及ばない方法なら、何でも構いませんよ」

 いきなり、何でこんな事を聞いてくるんだろう?
何か秘策でもあるんだろうか?

 シムナさんらしくない行動にドギマギしていると、彼はふと顔を上げた。

「ん。分かった。周りに被害が及ばないようにするね」

 そう言うが早いか、シムナさんは手に持った斧を投げる。
『あ、危ない……!』と一瞬焦るものの、斧は誰に当たることもなく白い光に包まれ、消えた。
恐らく、アイテムボックスに収納されたのだろう。
『えっ?何で?』と目を剥く中、シムナさんは斧の代わりに────

「それじゃあ、始めよっかー!僕の大嫌いな銃撃戦をー!」

 ────狙撃銃を取り出した。
かと思えば、ダンダンと続けざまに二発弾丸を撃ち込む。
全く同じ方向に打ったからか、二発の弾丸は縦に並んでおり……まず、先頭の弾が伸びてきたツルを撃ち払う。
そして、全ての植物障害を突破したところで力を温存していた後ろの弾が前へ飛び出した。
と同時に、アクリスの脳天をぶち抜く。

「なるほど。前の弾が露払い役で、後ろの弾がトドメを刺す役って訳ですか」

「そういうことー。本当は弾の無駄遣いなんてしたくなかったんだけど、一発だけだとどうしてもシカのところまで辿り着けないからさー」

「撃つ前にそれを見抜くだなんて……シムナさんは本当に凄いですね。私だったら、気づかず撃ってますよ」

 惚れ惚れしてしまうほど鋭い観察眼と狙撃の腕に、私は素直に感心した。
目の前にある小さな背中を見つめ、僅かに頬を緩める。

 大嫌いな銃撃戦を選んだ理由が、私やミラさんを守るためというのも好感が持てるし。
最近のシムナさんは本当に優しくて、気遣い上手で、いい子だなぁ。

「なんか、子供の成長を喜ぶ親の気持ちが分かった気がします」

「えっ?まさかとは思うけど、その『子供』って僕のことー?」

「はい!」

 グッと手を握り締め元気よく返事すると、シムナさんは肩を落とす。

「僕って、いつもどんな風に見られているのー?少なくとも、男としては見られてないよねー?なんか、めっちゃショックなんだけどー」

 『はぁ……』と深い溜め息を零しながら、シムナさんは次々と銃弾を撃つ。
どんなに落ち込んでいても、仕事はきちんとこなしてくれるらしい。

「好きな子に男として見られてないとか、最悪じゃーん。スタートラインにすら立ってなかった、ってことでしょー?」

 不満げに口先を尖らせ、シムナさんはふとこちらを見る。

「てかさー、ぶっちゃけラミエルは僕のことどう思っ……」

「────んっ……んん?」

 シムナさんの声を遮るようにして、声を上げたのは────今の今までずっと眠っていたミラさんだった。
地面に寝転がっていた彼女はゆっくりと目を開き、おもむろに起き上がる。
まだ寝起きで意識がボーッとしているのか、焦点の定まらない目でじっとこちらを見つめていた。

「み、ミラさん、大丈夫ですか?私が誰か分かりますか?」

「……」

「おーい!ちゃんと起きているー?もしかして、目を開けながら寝ている感じー?」

「い、いや、ちゃんと起きている……ただ、現状を上手く呑み込めなくて……」

 そっと額に手を当て、ミラさんは小さくかぶりを振った。
混乱している様子の彼女を前に、私は背筋を伸ばす。

「では、覚えている最後の記憶を教えてもらっていいですか?」

「お、覚えている……?え、えーっと……確か第三十七階層の魔物モンスターから、ラミエルを庇って……それで皆酷い表情かおをしていて……ごめんなさい。ここから先の記憶はないみたい」

「いえ、大丈夫です。それだけ覚えていれば、充分ですから」

 申し訳なさそうに俯くミラさんにニッコリと微笑み、私は腰を折る。
目線を合わせた方が安心するかな?と思って。

「では、ミラさんが気絶した後の出来事を順番に話していきますね。分からないことがあれば、その都度聞いてください」

 そう前置きしてから、私は治療のことなどを話し始めた。
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