婚約者の妹が結婚式に乗り込んで来たのですが〜どうやら、私の婚約者は妹と浮気していたようです〜

あーもんど

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第二章

残り二人

 ケイト王妃陛下の亡骸を丁寧に床に置き、私は玉座の間を後にした。
長い廊下を進みながら、リナさんとカーティス様の魔力を感知する。
幸か不幸か、二人の魔力は全く同じ方向にあった。

 リナさんとカーティス様は、懲りずにまた二人で会っているのかしら?
だとしたら、さすがに呆れるわね。せめて、形だけでも反省すれば、良かったのに……。

 『何故こうも愚かなのか』と考えながら、私は歩みを進める。
そして、廊下の曲がり角を曲がると────見覚えのある男性を発見した。
身なりのいい男性は床に座り込んで、スースーと寝息を立てている。
魔法でぐっすり眠る彼を前に、私は複雑な心境に陥った。

 作り物のように整った顔立ちに、腰まである青い髪────間違いない、カラミタ王国の第一王子であるカーソン・キャンベルだわ。
玉座の間に居ないと思ったら、こんなところに居たのね。兵士の統制を行うために、あちこち走り回っていたのかしら?

 目元に出来た隈と乱れた青髪を見つめながら、私は『かなり苦労したのね』と呟く。
自分のことしか考えていないカイル陛下と違い、カーソン王子は最善を尽くしたようだ。王国の未来のために……。
床に散らばる資料を拾い上げ、私はなんとも言えない気持ちになった。

「どうして、いつも善人ばかりが損をするのかしらね……」

 努力の証とも言える資料にサッと目を通し、私はやるせない気持ちになる。
数十枚にも及ぶ資料の束には、『交渉』『終戦』『平和的解決』という文字が散乱していた。

 私も出来ることなら、話し合いで終わらせたかったわ……でも、もう引き返すことなど出来ない。狂った歯車を元に戻す方法はないの。

 『ごめんなさい……』と懺悔しながら、私はカーソン王子の首元へ手を伸ばした。
一度魔法を解いて対話するべきか迷い、困ったように眉尻を下げる。

 カーソン王子は騒動の当事者じゃない上、まだ子供……王族と言えど、殺される恐怖をわざわざ味わわせる必要は無いだろう。

 『何も知らずに死ぬのが最善だ』と判断した私は、雷魔法を展開する。
そして、首元から大量の電流を流すと────心臓に強い負荷を掛けた。
感電の影響でビクッと跳ねた彼の体は横に倒れ、寝息も聞こえなくなる。
私は床に膝を着いて、カーソン王子の手首に触れると、念のため脈を確認した。

「……間違いなく、あの世へ旅立ったようね」

 カーソン王子の死亡を確認した私は、そっと手を離す。
ギュッと胸元を握り締めた私は、『どうか安らかにお眠り下さい』とお祈りを捧げた。
そして、手に持ったままの資料を彼の傍に置き、ゆっくりと立ち上がる。
最後にカーソン王子の死に顔を拝んでから、私は再び歩き出した。

 長い廊下を突き進む私は─────やがて、ある部屋の前で足を止める。
この扉の向こうから、リナさんとカーティス様の魔力を強く感じた。
『二人とも、この部屋にいる』と確信した私は、ノックもなしに扉を開けた。
すると、そこには─────ソファに並んで座るリナさんとカーティス様の姿が……。
寄り添い合って眠る二人の姿は、どう見ても恋人同士にしか見えない……。

「はぁ……本当に逢い引きをしていたなんて、驚きだわ……」

 私はソファの前まで来ると、さっきと同じ要領でパチンッと指を鳴らした。
すると、さっきまで気持ち良さそうに眠っていた二人がゆっくりと目を開ける。
ブルーサファイアの瞳とパパラチアサファイアの瞳は、まだ少しぼんやりしていた。

 まだ眠そうね。二度寝されても面倒だし、早速声を掛けましょうか。

「お二人共、おはようございます。兄妹揃ってお昼寝なんて、仲がよろしいんですね?」

「「!?」」

 皮肉めいた言葉を投げかけると、二人はカッ!と目を見開いた。
驚いたようにこちらを凝視する姿は、カイル陛下にそっくりである。

「な、何でニーナがここに……!?」

「あら、もう婚約者じゃないんですから、呼び捨てはやめて下さいませ」

「なっ……!?そ、そんなことよりも僕の質問に答えてくれ!」

「そんなこと、ですか……まあ、別に構いませんが……実は私、今回の戦の総指揮権を握っていますの。だから、指揮官として敵地に赴いただけですわ」

「指揮官……」

 カーティス様は『本当なのか?』と訝しむものの、胸元に飾られたブローチを見るなり黙り込む。
さすがの彼でも、このブローチが何を意味するのか、知っているらしい。

 このブローチは、総指揮官にのみ与えられるもの。
破談になったとはいえ、エスポワール王国に嫁ぐ身だったカーティス様なら、知っていてもおかしくはない。

「さて、カーティス様の疑問を解消したところで、本題へ入りましょうか。リナ王女、カーティス様─────今、ここで死んでください」

 そう言って、私は剣の柄に手をかけた。
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