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本編
出産
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────それから、五時間ほどかけて、私は元気な男の子を産んだ。
初産にしてはかなり順調だったようで、助産師の方が後片付けをしながら褒めてくれた。
体への負担も少なかったようで、一週間ほど安静にしていれば問題ないと言う。
生まれたばかりの赤ちゃんと共に別室へ運ばれた私は達成感と充実感に満ち溢れている訳だが……ニコラスはそうでもないようで、終始心配そうにこちらを見つめていた。
「ジュリア、本当に大丈夫かい?お腹が痛かったりしない?」
「大丈夫よ。どこも痛くないわ」
「本当に……?僕を置いて、死んだりしないよね……?」
「助産師にもかかりつけの医師にも『問題ない』って言われたんだから、大丈夫よ。ニコラスは心配しすぎ」
「でも……」
私の痛がる姿がよっぽど衝撃だったのか、ニコラスは不安を拭えずにいた。
いつも冷静で、何事も完璧にこなす“氷の貴公子”がここまで不安を露わにするのは珍しい。
私は隣に設置されたベビーベッドに目を向けると、おくるみに包まれた我が子の寝顔を眺めた。
確かに出産は大変だったし、正直物凄く痛かった。
あれが本当に安産なの?って疑うくらいには……でも────ニコラスとの子供を授からなければ良かったと思ったことは一度もない。
むしろ、無事に生まれてきてくれて、ありがとうと感謝を言いたいくらいだ。
だから────ニコラスに『子供なんて、作らなければ良かった』なんて思って欲しくない。
「ねぇ、ニコラス────この子の名前、考えてくれた?」
我が子へ手を伸ばした私は、そのふっくらとした頬を優しく撫でる。
すると、擽ったそうに赤子が身じろぎした。
「名前……?そんなの今はどうでも……」
「良くないわ。名前は親から子供に与えられる初めての愛情だから……だから、どうでも良くなんかない」
赤子のことを二の次に考えるニコラスに、そうキッパリと言い切る。
珍しく強気な態度の私に、銀髪碧眼の美青年は驚きながらも、とりあえず頷いた。
そして、顎に手を当てて考え込む。
「名前、ね────バハルなんて、どうかな?」
「バハルって、確か……海って意味よね?」
「ああ。海のように広く深い心で多くの人々を包み込めるような人になって欲しいって意味なんだけど……どうかな?」
どこか照れ臭そうに頬を掻くニコラスの姿に、私は思わず吹き出してしまう。
産後の体に悪いと分かっていながらも、笑うことをやめられなかった。
「うふふっ……!いいわね!それにしましょう!素敵な名前をつけて貰えて良かったわね、バハル!」
愛しい我が子の名前を呼び、まだツルツルの頭を撫でる。
すると、バハルがパッと目を覚ました。
ニコラスと同じサファイアの瞳と目が合う。
顔立ちもニコラスによく似ているし、将来はきっと物凄いイケメンに成長するでしょうね。女関係には苦労しそうだわ。
まだ気が早いと思いながらも、ついつい将来のことを考えてしまう。
愛する夫と同じ目を持つ我が子に、私は微笑みかけた。
「愛しているわ、バハル。どうか元気に育ってね」
私は愛する我が子にそう言い聞かせると、バハルの額にチュッと軽いキスを落とした。
その様子を、ニコラスが羨ましそうに見つめていたのは余談である。
初産にしてはかなり順調だったようで、助産師の方が後片付けをしながら褒めてくれた。
体への負担も少なかったようで、一週間ほど安静にしていれば問題ないと言う。
生まれたばかりの赤ちゃんと共に別室へ運ばれた私は達成感と充実感に満ち溢れている訳だが……ニコラスはそうでもないようで、終始心配そうにこちらを見つめていた。
「ジュリア、本当に大丈夫かい?お腹が痛かったりしない?」
「大丈夫よ。どこも痛くないわ」
「本当に……?僕を置いて、死んだりしないよね……?」
「助産師にもかかりつけの医師にも『問題ない』って言われたんだから、大丈夫よ。ニコラスは心配しすぎ」
「でも……」
私の痛がる姿がよっぽど衝撃だったのか、ニコラスは不安を拭えずにいた。
いつも冷静で、何事も完璧にこなす“氷の貴公子”がここまで不安を露わにするのは珍しい。
私は隣に設置されたベビーベッドに目を向けると、おくるみに包まれた我が子の寝顔を眺めた。
確かに出産は大変だったし、正直物凄く痛かった。
あれが本当に安産なの?って疑うくらいには……でも────ニコラスとの子供を授からなければ良かったと思ったことは一度もない。
むしろ、無事に生まれてきてくれて、ありがとうと感謝を言いたいくらいだ。
だから────ニコラスに『子供なんて、作らなければ良かった』なんて思って欲しくない。
「ねぇ、ニコラス────この子の名前、考えてくれた?」
我が子へ手を伸ばした私は、そのふっくらとした頬を優しく撫でる。
すると、擽ったそうに赤子が身じろぎした。
「名前……?そんなの今はどうでも……」
「良くないわ。名前は親から子供に与えられる初めての愛情だから……だから、どうでも良くなんかない」
赤子のことを二の次に考えるニコラスに、そうキッパリと言い切る。
珍しく強気な態度の私に、銀髪碧眼の美青年は驚きながらも、とりあえず頷いた。
そして、顎に手を当てて考え込む。
「名前、ね────バハルなんて、どうかな?」
「バハルって、確か……海って意味よね?」
「ああ。海のように広く深い心で多くの人々を包み込めるような人になって欲しいって意味なんだけど……どうかな?」
どこか照れ臭そうに頬を掻くニコラスの姿に、私は思わず吹き出してしまう。
産後の体に悪いと分かっていながらも、笑うことをやめられなかった。
「うふふっ……!いいわね!それにしましょう!素敵な名前をつけて貰えて良かったわね、バハル!」
愛しい我が子の名前を呼び、まだツルツルの頭を撫でる。
すると、バハルがパッと目を覚ました。
ニコラスと同じサファイアの瞳と目が合う。
顔立ちもニコラスによく似ているし、将来はきっと物凄いイケメンに成長するでしょうね。女関係には苦労しそうだわ。
まだ気が早いと思いながらも、ついつい将来のことを考えてしまう。
愛する夫と同じ目を持つ我が子に、私は微笑みかけた。
「愛しているわ、バハル。どうか元気に育ってね」
私は愛する我が子にそう言い聞かせると、バハルの額にチュッと軽いキスを落とした。
その様子を、ニコラスが羨ましそうに見つめていたのは余談である。
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