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第一章
第39話『意外な才能』
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「なあ、おじさん。物々交換しないか?」
「あー?物々交換?んなのやんねぇーよ。他所でやれ、他所で」
ウリエルを連れて、ステーキ屋へ歩み寄った俺は店の店主と交渉しようとするが、見事一蹴されてしまった。『しっしっ!』と猫を追い払うように手を振り、俺らを煙たがる。話も聞かずに追い払うあたり、俺達を冷やかしか何かかと思っているらしい。
まあ、硬貨が田舎にも流通している時代に物々交換に応じる奴は居ないよな。信用のある友人やご近所さんならまだしも、俺とおじさんは初対面だ。信用もくそもない。
だが、こっちには────────コカトリスの羽という切り札がある。
俺は予めマジックバッグから取り出しておいた七色の羽を見せつけるように顔の前に掲げた。
「そうかそうか。それは残念だなぁ···?“コカトリスの羽”を物々交換として出そうと思ったのに····いやぁ、残念だ。他の店を当ることにしよう」
「!?」
今の今まで俺に見向きもしなかった店主のおじさんは『コカトリスの羽』と聞くなり、バッとこちらに視線を向けた。俺が手にする七色の羽を凝視し、大きく目を見開く。
おっ?なかなか良い食いつきだ。んじゃ、ここらでいっちょ····。
「おーい!お前らー!この中にコカトリスの羽を買い取ってくれる奴は居ないかー!?物々交換でも良いぞー?今なら、格安で売り払ってやる。早いもん勝····」
「わぁぁああ!分かった!分かったから!物々交換しよう!だから、他のやつに売らないでくれ!」
周りの奴らにもコカトリスの羽を買い取るチャンスはあるのだと示すことで、店主を嗾けることに成功した。『早くしないと!』と焦られるのがポイントである。日本人が『数量限定』とか『セール』に弱いそれと同じだ。誰だって美味しい話は逃したくない。独占したいと思うのが普通。
俺は物々交換に応じると宣言した店主にニヤッと怪しく笑い、人差し指と親指の間に挟んだコカトリスの羽をプラプラと揺らした。
「そうか。物々交換に応じてくれるか···。じゃあ、今持っている肉を全て渡してくれ。生でも構わない。その対価としてコカトリスの羽を支払おう。どうだ?良い話だろ?」
「全部か·····」
「ああ。即決出来ないなら、他の奴に·····」
「!····分かった!肉は全部くれてやる!だから、それを寄越せ!」
寄越せって、お前なぁ····。もう少し言葉を選べよ。仮にもこれは取り引きなんだから。
コカトリスの羽欲しさに今にも飛び掛ってきそうな店主に肉を全て袋か布に包むよう指示を出した。さすがにそのまま持って歩く趣味はない。マジックバッグに入れるにしたって、汁や脂が零れないように包装して貰わないと困る。
俺の心が変わる前にと店主は大急ぎで生肉や焼いた肉を紙や布、袋なんかに包み出した。
そんな急がなくても、俺の本命はこのステーキだから心変わりすることはないのに···。急ぐのは構わないが、丁寧に包んでくれよ。
『音羽に交渉の才能があったとは····意外です。単純なコミニケーション能力は平均以下ですのに····』
単純なコミニケーション能力が低いことは否定しないが、それ言う必要ないだろ···。ったく····まあ、褒め言葉として受け取っておく。
ビアンカの失礼極まりない発言を受け流し、隣で嬉しそうに繋いだ手をブンブン前後に揺さぶるウリエルを見下ろした。赤ワイン色のローブに身を包んだ少女の顔は見えないが、喜んでいるのだけは分かる。感情が言動に出やすいウリエルは分かりやすくて助かるな。
「ほれ、これが今ある肉全てだ。だから、早く羽を···」
「はぁ····分かったから、ちょっと落ち着け。ほら」
両手を皿にした状態で羽を強請る店主に俺は七色に耀く美しい羽を手渡す。すると、店主は嬉しそうにそれを受け取った。少女のようにその場でジャンプし出す店主は乙女そのものである。
むさくるしい男がジャンプしながら喜ぶのって····いや、何も言わないでおこう。
俺は綺麗に包装された生肉をマジックバッグに押し込み、既に焼けている肉をウリエルに差し出した。
「ありがとう!オトハ!」
「どういたしまして」
嬉々として、ステーキを受け取ったウリエルは嬉しそうに口元を綻ばせた。目元はフードに覆われて見えないが、きっと嬉しそうに目元を和らげていることだろう。感情豊かな少女の無邪気な笑みを脳内に思い浮かべ、生肉を収容したマジックバッグを背負い直した。
よし···!ウリエルの食料確保も出来たし、さっさと市場を抜けるか!
ウリエルと手を繋ぎ直した俺はそう意気込み、意気揚々と歩き出す─────────と同時にドカンッ!という耳を劈くような爆発音が鼓膜を叩いた。
なっ····!?なんだ!?
突然の爆発音にビクリと肩を揺らし、歩みを止める。辺りを見回すと少し離れた場所から火の手が上がっていた。ざわめく群衆と黒い煙を上げて燃え盛る炎を交互に見やり、最後にウリエルを見下ろす。紫檀色の長髪幼女は爆発音や群衆のざわめきなど一切気にせず、もぐもぐと夢中でステーキを貪っていた。
随分と落ち着いているな····。もう少し驚いても良いんだぞ?
俺も含める周りの大人が動揺しているにも関わらず、子供のウリエルはマイペースにステーキを食している。わんわん泣かれるより、ずっとマシだがこれはこれでなんと言うか····ちょっと複雑な気分だ。
『ウリエルはしょっちゅう噴火を起こす火山の近くで生まれ育ちましたからね。この程度の爆発音では動揺しませんよ』
あぁ、なるほど····。常に噴火を起こす火山の近くで育ったから、こんなにも冷静····というか、マイペースに過ごしているのか。納得すると同時にドラゴン族の真剣の図太さというか、火山の近くで暮らす度胸に改めて感心する。
『ドラゴンは熱に強い耐性を持っていますからね。マグマの中を泳げるくらいには熱に強いですよ。まあ、逆に氷山などの冷たい地域は苦手みたいですけど』
マグマの中を泳ぐって····駄目だ。完全に異次元だ。脳みそがついていけない····。
火事だ!爆発だ!と騒ぐ群衆の中をすり抜け、俺はドラゴン族の異次元さに頭を振った。
さすがは異世界。ファンタジー要素ましましだな。
『そうですね。音羽の元いた世界では考えられない事だと思います。それより、早く移動しましょう。爆発の騒ぎに巻き込まれる可能性があります』
それもそうだな。非日常を目の当たりにした人間はどんな行動を起こすか分からない。例えばここで『毒ガスが蔓延している!遠くへ逃げろ!』と誰かが言えば皆はその情報の真偽を確かめる前に我先にと飛び出して行くことだろう。少し考えれば火事や爆発に毒ガスが無関係であることが分かるが、混乱すれば人は冷静さを失う。明らかなデマ情報であっても、人は考える前に行動に出る。だから、この場が混沌を極める前に抜け出した方が良い。騒ぎに巻き込まれて、ウリエルに何かあったら困るからな。
俺はもぐもぐと美味しそうにステーキを食らうウリエルの手を引いて、そそくさとこの場をあとにした。
※更新について※
12時→確実
20時→たまに
に変更致します。ご了承ください。
「あー?物々交換?んなのやんねぇーよ。他所でやれ、他所で」
ウリエルを連れて、ステーキ屋へ歩み寄った俺は店の店主と交渉しようとするが、見事一蹴されてしまった。『しっしっ!』と猫を追い払うように手を振り、俺らを煙たがる。話も聞かずに追い払うあたり、俺達を冷やかしか何かかと思っているらしい。
まあ、硬貨が田舎にも流通している時代に物々交換に応じる奴は居ないよな。信用のある友人やご近所さんならまだしも、俺とおじさんは初対面だ。信用もくそもない。
だが、こっちには────────コカトリスの羽という切り札がある。
俺は予めマジックバッグから取り出しておいた七色の羽を見せつけるように顔の前に掲げた。
「そうかそうか。それは残念だなぁ···?“コカトリスの羽”を物々交換として出そうと思ったのに····いやぁ、残念だ。他の店を当ることにしよう」
「!?」
今の今まで俺に見向きもしなかった店主のおじさんは『コカトリスの羽』と聞くなり、バッとこちらに視線を向けた。俺が手にする七色の羽を凝視し、大きく目を見開く。
おっ?なかなか良い食いつきだ。んじゃ、ここらでいっちょ····。
「おーい!お前らー!この中にコカトリスの羽を買い取ってくれる奴は居ないかー!?物々交換でも良いぞー?今なら、格安で売り払ってやる。早いもん勝····」
「わぁぁああ!分かった!分かったから!物々交換しよう!だから、他のやつに売らないでくれ!」
周りの奴らにもコカトリスの羽を買い取るチャンスはあるのだと示すことで、店主を嗾けることに成功した。『早くしないと!』と焦られるのがポイントである。日本人が『数量限定』とか『セール』に弱いそれと同じだ。誰だって美味しい話は逃したくない。独占したいと思うのが普通。
俺は物々交換に応じると宣言した店主にニヤッと怪しく笑い、人差し指と親指の間に挟んだコカトリスの羽をプラプラと揺らした。
「そうか。物々交換に応じてくれるか···。じゃあ、今持っている肉を全て渡してくれ。生でも構わない。その対価としてコカトリスの羽を支払おう。どうだ?良い話だろ?」
「全部か·····」
「ああ。即決出来ないなら、他の奴に·····」
「!····分かった!肉は全部くれてやる!だから、それを寄越せ!」
寄越せって、お前なぁ····。もう少し言葉を選べよ。仮にもこれは取り引きなんだから。
コカトリスの羽欲しさに今にも飛び掛ってきそうな店主に肉を全て袋か布に包むよう指示を出した。さすがにそのまま持って歩く趣味はない。マジックバッグに入れるにしたって、汁や脂が零れないように包装して貰わないと困る。
俺の心が変わる前にと店主は大急ぎで生肉や焼いた肉を紙や布、袋なんかに包み出した。
そんな急がなくても、俺の本命はこのステーキだから心変わりすることはないのに···。急ぐのは構わないが、丁寧に包んでくれよ。
『音羽に交渉の才能があったとは····意外です。単純なコミニケーション能力は平均以下ですのに····』
単純なコミニケーション能力が低いことは否定しないが、それ言う必要ないだろ···。ったく····まあ、褒め言葉として受け取っておく。
ビアンカの失礼極まりない発言を受け流し、隣で嬉しそうに繋いだ手をブンブン前後に揺さぶるウリエルを見下ろした。赤ワイン色のローブに身を包んだ少女の顔は見えないが、喜んでいるのだけは分かる。感情が言動に出やすいウリエルは分かりやすくて助かるな。
「ほれ、これが今ある肉全てだ。だから、早く羽を···」
「はぁ····分かったから、ちょっと落ち着け。ほら」
両手を皿にした状態で羽を強請る店主に俺は七色に耀く美しい羽を手渡す。すると、店主は嬉しそうにそれを受け取った。少女のようにその場でジャンプし出す店主は乙女そのものである。
むさくるしい男がジャンプしながら喜ぶのって····いや、何も言わないでおこう。
俺は綺麗に包装された生肉をマジックバッグに押し込み、既に焼けている肉をウリエルに差し出した。
「ありがとう!オトハ!」
「どういたしまして」
嬉々として、ステーキを受け取ったウリエルは嬉しそうに口元を綻ばせた。目元はフードに覆われて見えないが、きっと嬉しそうに目元を和らげていることだろう。感情豊かな少女の無邪気な笑みを脳内に思い浮かべ、生肉を収容したマジックバッグを背負い直した。
よし···!ウリエルの食料確保も出来たし、さっさと市場を抜けるか!
ウリエルと手を繋ぎ直した俺はそう意気込み、意気揚々と歩き出す─────────と同時にドカンッ!という耳を劈くような爆発音が鼓膜を叩いた。
なっ····!?なんだ!?
突然の爆発音にビクリと肩を揺らし、歩みを止める。辺りを見回すと少し離れた場所から火の手が上がっていた。ざわめく群衆と黒い煙を上げて燃え盛る炎を交互に見やり、最後にウリエルを見下ろす。紫檀色の長髪幼女は爆発音や群衆のざわめきなど一切気にせず、もぐもぐと夢中でステーキを貪っていた。
随分と落ち着いているな····。もう少し驚いても良いんだぞ?
俺も含める周りの大人が動揺しているにも関わらず、子供のウリエルはマイペースにステーキを食している。わんわん泣かれるより、ずっとマシだがこれはこれでなんと言うか····ちょっと複雑な気分だ。
『ウリエルはしょっちゅう噴火を起こす火山の近くで生まれ育ちましたからね。この程度の爆発音では動揺しませんよ』
あぁ、なるほど····。常に噴火を起こす火山の近くで育ったから、こんなにも冷静····というか、マイペースに過ごしているのか。納得すると同時にドラゴン族の真剣の図太さというか、火山の近くで暮らす度胸に改めて感心する。
『ドラゴンは熱に強い耐性を持っていますからね。マグマの中を泳げるくらいには熱に強いですよ。まあ、逆に氷山などの冷たい地域は苦手みたいですけど』
マグマの中を泳ぐって····駄目だ。完全に異次元だ。脳みそがついていけない····。
火事だ!爆発だ!と騒ぐ群衆の中をすり抜け、俺はドラゴン族の異次元さに頭を振った。
さすがは異世界。ファンタジー要素ましましだな。
『そうですね。音羽の元いた世界では考えられない事だと思います。それより、早く移動しましょう。爆発の騒ぎに巻き込まれる可能性があります』
それもそうだな。非日常を目の当たりにした人間はどんな行動を起こすか分からない。例えばここで『毒ガスが蔓延している!遠くへ逃げろ!』と誰かが言えば皆はその情報の真偽を確かめる前に我先にと飛び出して行くことだろう。少し考えれば火事や爆発に毒ガスが無関係であることが分かるが、混乱すれば人は冷静さを失う。明らかなデマ情報であっても、人は考える前に行動に出る。だから、この場が混沌を極める前に抜け出した方が良い。騒ぎに巻き込まれて、ウリエルに何かあったら困るからな。
俺はもぐもぐと美味しそうにステーキを食らうウリエルの手を引いて、そそくさとこの場をあとにした。
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話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
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