無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど

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第二章

第61話『全面戦争だ』

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 人とは通常何年も何十年もかけて成長し、強くなっていく生き物だ。だが、それは“通常”であればの話。神の加護や化け物の力を借りれば、人は短期間で強くなる。
 そう────────俺みたいにな!

『何度も死にかけましたがね』

 うるせぇ!!それは言わないお約束だろーが!!
ビアンカの的確なツッコミに逆ギレしつつ、俺はここ1ヶ月の記憶を呼び起こしていた。
確かに俺は何度も死にかけた。その度にベルゼやアスモ、マモンなんかが助けてくれたが、何度死ぬかと思ったことか····。しかも、死にかけた原因がほとんどベルゼやマモンのせいだしな。
ベルゼに脳天かち割られそうになったり、マモンの魔力調整ミスで魔力弾で心臓撃ち抜かれそうになったり····。ミスもなく、ちゃんと俺の指導をしてくれたのはルシファーとアスモくらいだ。ベルゼとマモンには是非ともルシファーとアスモを見習ってもらいたい····って、今はそんなこと言っている場合ではないが。
 俺は物々しい雰囲気を放つルシファーと魔王軍幹部メンバーを見やり、『ふぅ···』と息を吐き出した。俺の実力が幹部メンバーに通じ始めた、このタイミングでルシファーは幹部メンバーと俺を会議室へ招集した。互いに忙しい身である俺たちを招集した意味はただ一つ─────────。

「─────────人族に動きがあった」

 やっぱりか。俺達を緊急招集する事案なんて限られている。人族関連のことだろうと思ってたぜ。
 ルシファーはテーブルの上に置かれた水の入った桶に指先を触れさせた。その振動で水面が揺れ、波紋が広がっていく。波紋の広がりに呼応するようかのに透明な水面にある映像が映し出された。
 これは·····箱?
金と紫で彩られた箱が映し出された部屋の中央にあり、それを守るように兵士が配置されている。かなり厳重な警備体制が敷かれているらしい。
 この箱が何だって言うんだ?
この箱の正体や意味を分かっていないのは俺だけのようで、他のメンバーは難しい顔つきで映像を眺めていた。

「もう分かっている者も居ると思うが、これは─────────パンドラの箱だ」

 なっ····!?パンドラの箱!?これがか!?
 驚きのあまり、目を大きく見開く俺にルシファーはゆっくりと頷いた。俺の考えを肯定するかのように····はっきり頷いたんだ。
 これがもしもパンドラの箱なら、この厳重な警備体制にも納得が行く。が、ここで疑問が一つ浮上する。
─────────何故、人族はパンドラの箱を大切に保管しているのか。
 ヘラの呪いをかつて封印したと言う箱を何故人族は壊さずに手元に置いているのか。それが最大の謎だ。勇者のみが扱うことの出来る全てを切り裂く聖剣でも使って、粉々に壊せば良いのに····なのに奴らはその箱を大切に保管している。それは何故か。
その答えは───────封印と依代にある。
 封印には必ず依代が必要だ。これは誰もが知る常識である。聖女は全てを封印する杖と力を持っているが、封印する力だけ持っていても意味は無い。封印する場所や物がなければ封印は出来ないのだ。そして、当然封印する対象物が強ければ強いほど、より強力な依代が必要になる。
 ここまで言えば、もう分かるだろう?
ヘラの恩恵をも封印したパンドラの箱ならば、魔族の王ルシファーを封印することも可能だ。そう考えた人族はあえてパンドラの箱を壊さず、保管している。俺の読みを裏付けるように厳重な警備体制を敷いて、な···。

「人族は今まで私を封印するためにパンドラの箱を大切に保管していたが、オトハくんが魔族陣営に加わったことで状況が変わった。恐らく以前取り逃した勇者パーティーが王族連中にオトハくんのことを話したのだろう」

 俺が魔族陣営に加わったことが人族側にバレたのは理解したが····何でそこでパンドラの箱が出てくるんだ?明らかに可笑しいだろう?
 コテンと首を傾げる俺の前でルシファーは補足説明を口にした。

「奴らはオトハくんの職業能力を聖女と同じものだと推測している。『無職』は聖女の男バージョンの職業名だと思い込んでいるんだ」

「へっ····?」

 無職の職業能力を聖女と同じものだと思っている?無職は聖女の男バージョン?
普通、聖女の男バージョンと言えば聖者だろ?なのに何で····はっ!そうか!
そもそも、この世界に『聖女』という言葉は無かったんだ。だから、彼らは聖女の男バージョンが聖者であることを知らない。そう考えれば、色々と辻褄が合う。聖女とは俺が元いた世界から来た単語で、元々この世界には無かったものだったんだ。
 それで、俺を聖女の男バージョンだと思っていると···。まあ、あながち間違っちゃいないが····その推理は色々と穴だらけだぞ。人族の王族連中は頭が弱いのか?
 王族連中の頭の悪さに呆れ返る俺にルシファーは苦笑いを浮かべる。

「まあ、そんな感じで君は聖女の男バージョンだと思われているんだ。そんな君が魔族陣営に加わったとなれば、ヘラの恩恵が君の力で封印されるかもしれない。だから、奴らは勇者を使ってパンドラの箱を壊そうと決心したんだ」

「なるほどな。それで、朝日····じゃなくて、勇者は今そのパンドラの箱がある場所へと向かっていると?」

「そうなるな。だから、我々はパンドラの箱を破壊される前にパンドラの箱を奪還する必要がある。手数が多いに越したことはない。手段が聖剣だけに絞られる事態は避けなければならない。よって、君達には今日の夜から人族領に向かってもらう。勇者が到着する前にパンドラの箱を奪還するのだ!魔王軍の半分を連れて行け!人族と全面戦争だ!」

「はっ!」

「魔王様の仰せのままに」

「ひっさびさに楽しくなってきたねー!」

 全面戦争だと宣言したルシファーの声は力強く、その横顔は凛々しかった。幹部メンバーはルシファーの宣言に沸き立つ。久々の戦に皆、愉快げに口を緩めていた。獲物を狙う獣のように舌舐めずりする彼らは美しいのにどこまでも怖い。心臓に響くような恐怖が俺の全身に走った。
 こ、こいつら····活き活きしすぎて、逆にこぇーよ。
いや、今はそれよりも───────ルシファーに聞かなきゃいけないことがある。

「なあ、ルシファー。それって、俺も行った方がいいのか?」

 わざわざ俺を呼び出したんだ、俺もその戦に行くに決まっている。だが、その理由が知りたかった。俺は呪いを打ち払うことが出来る唯一の希望。そんな俺をパンドラの箱奪還戦に加えるなんて····ルシファーらしくない。その戦いで俺が死ねば終わりだと、こいつは誰よりもよく分かっている筈だ。なのに何故···?
 ルシファーは俺の質問の意図を理解し、少し悲しげに眉尻を下げた。

「本当は行かせたくなかったのだが····パンドラの箱を守る結界がな···」

「結界?」

 そう言えば、パンドラの箱の周りに薄い膜みたいなのが見えたような····?

「パンドラの箱の周辺には聖女が施した結界がある。絶対防壁と呼ばれる結界だ。その結界は強力で····私でも壊せない。その結界を消す方法は二つ。同じ力を持つ聖女が解除陣を組んで消すか、勇者が聖剣で壊すかだ。だから、どうしてもオトハくんの力が必要なんだ」

 なるほど···。その情報が確かなら、俺の転職ジョブチェンジが無ければパンドラの箱の奪還は不可能だ。朝日が結界を壊したタイミングで奇襲を仕掛ける手もあるが、それはあまりにも危険過ぎる。おまけに成功する確率も低い。
ならば、俺という切り札を使って確実に奪いに行った方が良いだろう。
 俺はルシファーの考えに納得し、小さく頷いた。
そういう事なら、俺も戦に出よう。全てはこの世界···いや、ウリエルのために。

「先程も言ったが、出発は今夜だ。転移魔法で向かってもらう。私はその転移魔法の準備があるので、これで失礼する。諸君、今のうちに心の準備をしておくように。では、解散!」

 急いでいるのか、半ば捲し立てるようにそう言い捨てると、ルシファーは転移魔法でこの場を後にした。
相変わらず忙しいやつだな、ルシファーって。
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