無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど

文字の大きさ
75 / 100
第二章

第75話『守るものの大きさ』

しおりを挟む
 目的であるパンドラの箱奪還は叶わなかったが、俺達は何とか全員無事に魔王城へ帰ることが出来た。戦死0人なんて、史上初らしい。皆、死者0人の快挙を誇らしく思っている。
 夜更けと共に帰還を果たした俺とベルゼ達は報告のため、謁見の間を訪れていた。尚、俺達以外のメンバーは体を休めるため、城の大広間にて休んでいる。食事や服の支給があるらしく、今日はみんな城に泊まっていくらしい。
 アスモやベルゼの治癒魔法のおかげで皆、怪我は治ったが、体の疲れまでは取れないからな。家に帰る気力すら残っていないだろう。ゆっくり休んでくれれば良いが····。

「では、早速───────────報告を聞こうか、諸君」

 そう言って、音もなく現れたのは我らが魔王 ルシファー。バサッとマントを翻し、玉座に腰掛けるルシファーはニコリとも笑っちゃいなかった。普段の穏やかな表情が嘘のように凛とした面持ちで俺達を見つめている。
 ルシファー····怒ってるのか?

「はっ!ご報告申し上げます。パンドラの箱奪還作戦は失敗致しました」

「·····詳細を」

「はっ!結界解除までは順調に作戦を進めることが出来ましたが、明朝みょうちょう到着予定だった勇者パーティーの襲来により、パンドラの箱を破壊されてしまいました」

「ほう····?その勇者はどうした?」

「はっ!誠に遺憾ながら、こちらが攻撃を仕掛ける前に転移魔法でさっさと撤退して行きました。深追いは危険と見なし、追撃はしておりません」

 ルシファーはベルゼの報告に軽く頷くと、背もたれに寄り掛かり、足を組む。柘榴の瞳は俺達ではなく、天井を見つめていた。
 空虚を眺めるルシファーの赤眼からは何の感情も窺えない。
 ルシファーは今回の作戦が失敗したことをどう思っているんだろう?やっぱり、残念に思っているんだろうか?いや、残念に思ってない筈がないよな。もしかしたら、パンドラの箱はヘラの恩恵を封印出来る唯一の依代だったのかもしれないし····。
 この世界を救う手段がついに依代破壊に限られてしまった。
しかも、朝日という勇者が居る状態で·····聖剣の詳細も分からぬまま·····。
 ルシファーは暫く何も言わずに黙り込むと、俺達に目を向けずに口だけ開いた。

「もうい。下がれ。今日はゆっくり疲れを癒すといい」

「「はっ!」」

 ベルゼとアスモはスッと立ち上がると、そのまま部屋を出ていく。マモンは何か言いたげな表情でルシファーを見つめるが、結局何も言わぬまま溜め息をついてベルゼ達の後に続いた。
 扉が閉まる音が鳴り響く中、ここに残った俺は銀髪赤眼の美丈夫を見上げる。物憂げな表情を浮かべるルシファーはこの場に残った俺を咎めようとはしなかった。
 なんか、ルシファーの様子が可笑しいな·····?

「なあ、ルシ····」

「─────────オトハくん、我が民を守ってくれてありがとう」

「へっ·····?」

 『ルシファー』と奴の名を呼ぶ前に銀髪の美丈夫は言葉を重ねる。空虚を眺めていたレッドアンバーの瞳は今、俺を映し出していた。
 ルシファーの言う、我が民ってウリエルの事だよな?朝日達に人質にされたウリエルを助けてくれてありがとうってことだよな?
でも、ベルゼは報告のとき一言もウリエルの事なんて·····人質のことだって言っていなかった筈だ。言ったのは勇者の襲来に遭ったことだけ。それ以外は何も言っていない。
 なのに何で知って·····!?
 驚きを隠せずにいる俺にルシファーはクスリと笑みを漏らす。

「忘れたか?私は水の水面を使って遠く離れた場所をリアルタイムで映し出すことが出来る」

「あっ····!!じゃあ·····!!」

「ああ。ずっと見ていたさ、君達が必死に戦う姿を····」

 どこか苦しそうな表情で言葉を紡ぐルシファーは精神的に参っているように見える。
 遠くから俺達を見守る事しか出来ない己の無力さに、自己嫌悪に陥っているのかもしれない。

「ずっと見ていた····ベルゼが死霊使いネクロマンサーに操られたベルフェゴールの体を焼き払うところも、勇者パーティーがウリエルを人質に捕らえるところも、パンドラの箱を破壊されたところも····全部見ていたんだ、私は····」

 今回の戦いは運良く死者が出なかったが、損失が無かった訳では無い。パンドラの箱を破壊されたことが一番の損失だが、それ以上に戦士達の心と体を傷つけた。特に同胞の体を焼き払ったベルゼは精神的にかなりキツいだろう。
 それらを見守る事しか出来ないルシファーもまた相当辛い筈····。世界最強の生命体でありながら、前線に出ることが出来ない彼は己の運命を何度呪ったか分からない。
 もしかして、ルシファーがあのとき泣いていたのは····己の無力さを嘆いたからか?それとも·····死体で帰ってくるかもしれない俺達を心配したからか?

「なあ、オトハくん····」

「····なんだ?」

「私は最低の王だ。君がパンドラの箱より、ウリエルの命を取ったとき····私は君に猛烈な怒りを感じた。何故パンドラの箱を取らなかったのか、と····本気で怒ったんだ····。目先の命よりも多くの命を救うべきだと····私は思ってしまった」

「ルシファー·····」

 『私は最低だ!!』と叫ぶルシファーは顔を手で覆い隠した。まるで、そう思ってしまった自分を隠すように手で顔を覆う。俺に対して怒りを感じてしまった自分を恥じるルシファーに俺は緩く首を振った。
 違う。違うぞ、ルシファー·····。お前は正しい。

「ルシファーが俺に怒りを感じたのは当然のことだ。お前は魔族の王で、この世界を救うため立ち上がった主導者。たった一人の少女の命を救うため、世界を救う手段を一つ潰した俺に怒りを抱くのは当然のことだよ。むしろ、怒らない方が可笑しい」

 ルシファーは間違っちゃいない。魔族の王として正しい反応だ。俺なんかより、ずっと守らなくちゃいけないものが多いルシファー·····。守るものが多ければ、より多くの者が助かる方に気持ちが傾く筈。ウリエルしか守るものがない俺とルシファーでは価値観の差があり過ぎる。だから、ルシファーが俺に怒りを抱くのも仕方のない事だった。

「俺とお前じゃ守るものの大きさが違う。俺が守りたいのはウリエルただ一人に対して、お前はどうだ?たった一人だけか?」

「っ·····!!違うっ!!私は同胞達を····魔族みんなを守りたい!」

「ああ。そうだな·····お前はそういう奴だ」

 優し過ぎるお前はとても欲張りだ。あれもこれもって守るものが多過ぎる。
でも──────────お前には心強い仲間が居る。
お前の守りたいもの全部がお前の仲間であり、力だ。
 だから、己を恥じるな。隠すな。後悔するな。
前を向け───────────お前が前を向かなければ皆、迷子になるぞ。

「お前は最低な王なんかじゃない。俺に怒りを抱いたのも極正常な反応だ。ま、俺は後悔なんかしちゃいないがな。例え、時が戻って過去に遡っても俺は何度でもウリエルの手を取る。パンドラの箱を捨てる。自分の気持ちが赴くままに行動する。例え、お前に恨まれてもな」

「フッ·····オトハくん、君はやはり強いな」

 ルシファーは俺の滅茶苦茶な言い分をフッと鼻で笑い、僅かに目元を和らげる。柘榴の瞳はただ穏やかに笑っていた。
 そうだ。お前はそうやって笑っていれば良い。お前から笑顔が消えれば民達が不安がる。
 胸のつっかえが取れたように清々しい笑みを浮かべるルシファーはスッと玉座から立ち上がった。

「それと────────────君に英雄は似合わない」

「それは俺も同感だな」

 肩を竦める俺にルシファーは僅かに目を細める。
 根暗陰キャな俺に英雄なんて似合わねぇ。闇魔術師とかがお似合いだぜ。

「部屋まで送ろう」

 そう言うと、ルシファーは俺の返事も聞かぬまま歩き出した。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜

里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」  魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。  実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。  追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。  魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。  途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。  一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。 ※ヒロインの登場は遅めです。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...