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第0機動小隊、結成!
動乱
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◆◆◆◆◆◆◆◆
自分の部屋。
既にブザーは鳴り終わったため、話し声も環境音もほとんど聞こえない静寂の時間が続く。
『心情を整理しろ』
確かに教官はそう言ったけど、そう簡単に整理できるようなものではなかった。『詮索はするな』とも言われたし、拭えない不自然が残り続けるだけだった。
そもそもなぜブザーは鳴った? 一体何が起こった、僕たちはこれから何をするんだ?
……少なくとも、これからの予定通り、教官の予想通りに事が進まなかったのは確かだろう。……教官の慌てようから見ても、それはすぐに分かった。
リコはここに来るんだろうか。……あんな空気になった後だから、とても気まずくて来ることはなさそうなんだけど……
「分かったよ」
「ぎょぺーーーっ?!」
またもやヘンな声が出てしまった。
気付いたらドアの前にいたのは、何故だか妙に落ち着いたリコの姿。
「っふふ、分かった、分かっちゃった、機密の会話聞いちゃったの!!」
「———は?」
「だーかーら、これから何が起こるのか、そしてあのブザーはなんなのか、って話。さっきライ教官が話してた、機密の話を盗み聞いてきたの!」
「何やってんの?!…………ああいや、でも確かに知りたい。教えれるなら、なんであんなものが鳴ったのか教えてほしい」
「来たのよ、敵が。
サイドツーでもない、魔族でもない。オリュンポスの、正体すら不明な雑兵が、現在この王都に向かって侵攻してきてる」
「ってことは———僕たち、まさか……」
「もちろん、実戦。ほとんど訓練なんてしてないのに、まさか実戦に駆り出されることになるなんてね……」
サイドツーでもない。
魔族でもない。
正体すら不明な、オリュンポスの———カミの仕向けた雑兵。
……でも、言われてもイマイチ実感が湧かないもんだ。
非常事態と言われても、今までの人生じゃそんなことなかった———魔王によって王都が侵攻された際にだって、僕はシェルターにこもってばかりだった。
前線でどれだけ勇者が戦っていたって、僕は安全な王都で人界王の護衛をしているだけにすぎなかったがために、『今自分は生死の境にいる』という実感なんて湧かなかったのに。
だけど、今度はその『非常事態』に、対応する戦士———それが僕たちで、それが第0機動小隊なんだ。
行きたくない、死ぬかもしれないから。……でも、そんなのみんな知ってる。そんなのみんな、死にたくないって一生懸命祈ってるに決まってる。
「敵の総数は、10万」
「———え?」
「戦い方も生態も何もかもが不明な敵が、10万もこっちに向かって侵攻してきてる、だってさ」
「って事は……やっぱり、僕たちも……」
「そう言ってたのよ、第0機動小隊及び、懲罰大隊を先行させる……って。一番死ぬ確率が高いのはもちろん私たち。……じきに呼び出しだって来ると思———」
『第0機動小隊、第0機動小隊各員に告ぐ! 至急、ブリーフィングルーム1に集合せよ、繰り返す、至急ブリーフィングルーム1に集合せよ!!』
施設の中に大きく響いたのはライ教官の声。……しかしその声には、どこか焦りが見られるような饒舌さが含まれていた。
「……だってさ。多分出撃だろうね、私たち」
「行くしか———ないのか」
『死にたくない』、その言葉が、離れないスライムの粘膜のようにねっとりと脳裏に残る。
今日、あるいは明日———この戦いが終わるまでに、自分が死ぬかもしれない、と思うと、自然と身がすくむ。
「…………でも、戦うしかないと言うのなら……」
誰にも聞こえはしない声で、ひっそりと吐き残した。
自分の部屋。
既にブザーは鳴り終わったため、話し声も環境音もほとんど聞こえない静寂の時間が続く。
『心情を整理しろ』
確かに教官はそう言ったけど、そう簡単に整理できるようなものではなかった。『詮索はするな』とも言われたし、拭えない不自然が残り続けるだけだった。
そもそもなぜブザーは鳴った? 一体何が起こった、僕たちはこれから何をするんだ?
……少なくとも、これからの予定通り、教官の予想通りに事が進まなかったのは確かだろう。……教官の慌てようから見ても、それはすぐに分かった。
リコはここに来るんだろうか。……あんな空気になった後だから、とても気まずくて来ることはなさそうなんだけど……
「分かったよ」
「ぎょぺーーーっ?!」
またもやヘンな声が出てしまった。
気付いたらドアの前にいたのは、何故だか妙に落ち着いたリコの姿。
「っふふ、分かった、分かっちゃった、機密の会話聞いちゃったの!!」
「———は?」
「だーかーら、これから何が起こるのか、そしてあのブザーはなんなのか、って話。さっきライ教官が話してた、機密の話を盗み聞いてきたの!」
「何やってんの?!…………ああいや、でも確かに知りたい。教えれるなら、なんであんなものが鳴ったのか教えてほしい」
「来たのよ、敵が。
サイドツーでもない、魔族でもない。オリュンポスの、正体すら不明な雑兵が、現在この王都に向かって侵攻してきてる」
「ってことは———僕たち、まさか……」
「もちろん、実戦。ほとんど訓練なんてしてないのに、まさか実戦に駆り出されることになるなんてね……」
サイドツーでもない。
魔族でもない。
正体すら不明な、オリュンポスの———カミの仕向けた雑兵。
……でも、言われてもイマイチ実感が湧かないもんだ。
非常事態と言われても、今までの人生じゃそんなことなかった———魔王によって王都が侵攻された際にだって、僕はシェルターにこもってばかりだった。
前線でどれだけ勇者が戦っていたって、僕は安全な王都で人界王の護衛をしているだけにすぎなかったがために、『今自分は生死の境にいる』という実感なんて湧かなかったのに。
だけど、今度はその『非常事態』に、対応する戦士———それが僕たちで、それが第0機動小隊なんだ。
行きたくない、死ぬかもしれないから。……でも、そんなのみんな知ってる。そんなのみんな、死にたくないって一生懸命祈ってるに決まってる。
「敵の総数は、10万」
「———え?」
「戦い方も生態も何もかもが不明な敵が、10万もこっちに向かって侵攻してきてる、だってさ」
「って事は……やっぱり、僕たちも……」
「そう言ってたのよ、第0機動小隊及び、懲罰大隊を先行させる……って。一番死ぬ確率が高いのはもちろん私たち。……じきに呼び出しだって来ると思———」
『第0機動小隊、第0機動小隊各員に告ぐ! 至急、ブリーフィングルーム1に集合せよ、繰り返す、至急ブリーフィングルーム1に集合せよ!!』
施設の中に大きく響いたのはライ教官の声。……しかしその声には、どこか焦りが見られるような饒舌さが含まれていた。
「……だってさ。多分出撃だろうね、私たち」
「行くしか———ないのか」
『死にたくない』、その言葉が、離れないスライムの粘膜のようにねっとりと脳裏に残る。
今日、あるいは明日———この戦いが終わるまでに、自分が死ぬかもしれない、と思うと、自然と身がすくむ。
「…………でも、戦うしかないと言うのなら……」
誰にも聞こえはしない声で、ひっそりと吐き残した。
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