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還元作戦/越神伴奏ベーゼンドルファー

還元作戦

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 還元作戦。
 塩と虹の地獄と化した地上を、元の姿に戻す為の作戦。作戦総司令は現・人界王たる『黒』と名乗る青年。

 作戦の概要はこう。まず、ヘヴンズバースト中心地にヴェンデッタ1号機を投下する。

 ヴェンデッタ1号機が、ヘヴンズバースト時に自らの魔力機関から生成したアークレイコアを、『翼』の根本にある旧ヴェンデッタ2号機アークレイコアと同期させ、再び反転現象を起こして虹の大地を『浄化』する。

 ただそれだけなのだが、そのためになぜや第0機動小隊の者がこの作戦に投入されるのか。

 それは、かつてヴェンデッタ2号機と同化してヘヴンズバーストを引き起こした紺色の液体状のスライム———の如き形状を持った謎の生命体『標的A』の存在が確認されたからだ。

 再度ソレが現れて、ヴェンデッタ2号機との同化現象を阻止するために、そのために投入された戦力が私たちなのだ。

 ……そして、そのための新機体。そのための、私の機体なのだ。

◆◇◆◇◆◇◆◇

『前ヘヴンズバースト発生中心地、到達。これより本艦は、ヴェンデッタ1号機の投入を行う。

 第0機動小隊、近衛騎士部隊各員は、発生中心地付近のに不審なものがないかを確認せよ』


 ああして話している———先程も、作戦発動の合図を送ったのもこの男性の声だが、この声の主は『黒』という青年だ。

 年齢、出身地———その全てが不詳にも関わらず、生前の王がその後釜を託した人物。
 故にその黒が、今は人界軍および人間界の実質的な指導者、つまりは『人界王』となっていると言うわけだ。

 
『ヴェンデッタ、投入開始!……同時に、周辺状況の観察も開始しろ!……魔力探知式レーダーの異常は、いかなる些細なものであっても報告するんだ!』

 前ヘヴンズバースト中心地———私たちが今乗っている艦を超える大きさを誇る、そこから生えている翼を横目に、元々私の機体だったヴェンデッタ1号機は降下してゆく。

 スラスターを、一定の出力で吹かしながら。そのどこまでも揺れることのない機械的な動作は、よりソレが遠隔操作されたモノだと言う事実を助長させるばかり。

 ……が、変化はなし。ヴェンデッタ1号機がどこまで降りて行こうと、魔力探知式のレーダーに示されたものは何もなかった。


『こちらオペレーター。2秒後、ヴェンデッタ1号機がアークレイスフィアに接地します』

 アークレイスフィア。
 ヘヴンズバーストの跡地に、地面に埋め込まれるように突如として出現した青い球体。

 その中には、間違いなくヴェンデッタ2号機と思しきシルエットが浮かんでいた。

 未だヴェンデッタ2号機は未帰還だが、ヴェンデッタ2号機に乗っていたパイロットのケイ・チェインズと同伴者のリコ・プランクは、あの球体の側に放置された状態で発見されたと言う。

 人界軍の研究者、ブドゥー博士によると、どうもあの青い球体は、ヴェンデッタの素体———アークレイのコアとも言えるものが結晶球体化した姿らしい。

 だからこそあのコアと、ヴェンデッタ1号機のコアを同期させ、に引き戻す。

 すると、反転現象の残るこの地が再び反転———つまりは裏返しの裏返し、元の姿に戻ると言う推察構想『エンジェルビースト構想』から成った作戦が、元の姿に還元する作戦こと『還元作戦』なのだ。
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