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還元作戦/越神伴奏ベーゼンドルファー
呪詛の祝福-ムジカセーゲン-
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『ヴェンデッタ1号機、アークレイスフィアへの四肢接着完了。同期が始まります』
魔力反応点が浮き出始める。おそらく魔力の反転現象に伴う周辺魔力の活性化によるものだろう。神力も同様にああなっているのだろうか。
『アークレイスフィア、表面形状に異常発生! ヴェンデッタ2号機を包む結晶物体が、消失していきます!』
慌てて見下ろした地上には、その青い結晶に埋まったヴェンデッタ2号機に、まるで出迎えるようにして覆い被さる、ヴェンデッタ1号機が見えた。
その2機は、互いにスラスターを使わずとも上昇、浮遊していく。
まるで見えない上昇気流にでも乗せられたかのように、互いにヘヴンズバーストの際のように浮き上がってゆく。
……が、おかしい。
地面の虹が消えるような様子もなく、ましてやその『翼』が消えるわけでもなく。
アレでは、ただヴェンデッタ2号機が取り出されただけのような印象を受ける。
『ヴェンデッタ……命令を受け付けません。同期を拒否されています』
……おかしい。何かがおかしい。
ヴェンデッタ同士は共鳴し合うはずだ。元は1つの肉体、1つのアークレイ。
その2つが共鳴し合わないはずはない。現に、ヘヴンズバーストの際にヴェンデッタ1号機は、2号機のアークレイの膨張に伴い、その頭脳体を同じように膨張させていたはずなのだ。
ソレは実際にそのヴェンデッタに乗っていた私だからこそよく分かる話であり、同時にこの状況における違和感を感じ取ることにも直結していた。
『ヴェンデッタ、信号の拒絶を実行し続けています!』
『2号機に直接~~……』
『そんなことはありえないはずだ、直接監視部隊に確認に行かせるのも1つの~~……』
いつまで経っても変わらない現状。違和感のみを感じ続ける現状に、変化の兆しが差す。
『ヴェンデッタ……2号機、再起動……! そんな、パイロットもいない、AACICリンクすら行っていないと言うのに、あの自律起動は一体……?!』
『……そうか、アレが———報告書にあった、ヴェンデッタ2号機の自律起動か……!』
……なぜか。
なぜだかまずい気がする。
明らかに困惑した状況。手詰まり、何もできることはない。
だが、次のために打てる一手と言えば……アレがある。
いつ私が出ることになるのかも分からない、コレは早めに実行しておくべきだ……!!
『西、10時の方向! 100キロ先、10時の方向に、未確認生命体の出現を確認! 魔力的、光学的にも確認可能です!』
『な……なんだと、監視部隊、兵器使用自由!……何を始める気だ、未確認生命体……!』
ならば、私のやるべきことはただ1つ。
例えこの機体が、起動だけでも負担のかかるものだとしても問題ない。
「SIDE-2システム、スタートアップ……プレイ・ザ・メロディー、インペリアルッ!」
視界が艦内の格納室に置き換わる。今現在、この機体が見ている光景、ソレがコレだ。
「AACIC新型OS、起動設定……思考言語、変更、日字使用可能形態に変更、AACIC新型OS、リンクスタート!」
背中に8本もの管が刺される。この全てが、この機体を動かすための旋律の1つ1つであり、互いにまとまりのない音のようなモノをまとめるためのインタフェースなのだ。
「うっ……ぶ、気持ち……悪い……コレが、この機体の……呪いか……!」
頭に流れ込むイメージ。血。死。命令。神。肉。鋼。憎悪。最後に機体のイメージ。
そのイメージがとめどなく脳を侵す。そこに美しく調律された音楽はなく、ひどく歪な世界のみが広がっていた。
『未確認生命体、こちらに向かって直進してきます! ルート予測……だめです、ヴェンデッタ1号機に一直線です!』
『未確認生命体を『標的A´』と認定! 絶対にヴェンデッタ1号機に触れさせるな!……ヘヴンズバーストが再来する、それだけはあってはならないっ!』
「ん……ぶっ、うう……ふふ……っ」
混濁する。幾千幾万幾億の意識と体と、そして血肉が混じり合った混沌の中、僅かな自分をかき集めて、まるで寒さに怯える子供のように震えてその時を過ごす。
『アレだ!……新型機体を出せ!……レイ、近衛騎士レイ! 調律は終わっているか!』
「……先程……終わらせ…………ました、いつでも……出れます……!」
『聞いたな、格納庫4番! 神曲伴奏ベーゼンドルファー、射出!』
『ベーゼンドルファー、射出っ!』
勢いよく床が空き、外から多量の風がなだれ込んだ瞬間、機体は宙を舞った。
魔力反応点が浮き出始める。おそらく魔力の反転現象に伴う周辺魔力の活性化によるものだろう。神力も同様にああなっているのだろうか。
『アークレイスフィア、表面形状に異常発生! ヴェンデッタ2号機を包む結晶物体が、消失していきます!』
慌てて見下ろした地上には、その青い結晶に埋まったヴェンデッタ2号機に、まるで出迎えるようにして覆い被さる、ヴェンデッタ1号機が見えた。
その2機は、互いにスラスターを使わずとも上昇、浮遊していく。
まるで見えない上昇気流にでも乗せられたかのように、互いにヘヴンズバーストの際のように浮き上がってゆく。
……が、おかしい。
地面の虹が消えるような様子もなく、ましてやその『翼』が消えるわけでもなく。
アレでは、ただヴェンデッタ2号機が取り出されただけのような印象を受ける。
『ヴェンデッタ……命令を受け付けません。同期を拒否されています』
……おかしい。何かがおかしい。
ヴェンデッタ同士は共鳴し合うはずだ。元は1つの肉体、1つのアークレイ。
その2つが共鳴し合わないはずはない。現に、ヘヴンズバーストの際にヴェンデッタ1号機は、2号機のアークレイの膨張に伴い、その頭脳体を同じように膨張させていたはずなのだ。
ソレは実際にそのヴェンデッタに乗っていた私だからこそよく分かる話であり、同時にこの状況における違和感を感じ取ることにも直結していた。
『ヴェンデッタ、信号の拒絶を実行し続けています!』
『2号機に直接~~……』
『そんなことはありえないはずだ、直接監視部隊に確認に行かせるのも1つの~~……』
いつまで経っても変わらない現状。違和感のみを感じ続ける現状に、変化の兆しが差す。
『ヴェンデッタ……2号機、再起動……! そんな、パイロットもいない、AACICリンクすら行っていないと言うのに、あの自律起動は一体……?!』
『……そうか、アレが———報告書にあった、ヴェンデッタ2号機の自律起動か……!』
……なぜか。
なぜだかまずい気がする。
明らかに困惑した状況。手詰まり、何もできることはない。
だが、次のために打てる一手と言えば……アレがある。
いつ私が出ることになるのかも分からない、コレは早めに実行しておくべきだ……!!
『西、10時の方向! 100キロ先、10時の方向に、未確認生命体の出現を確認! 魔力的、光学的にも確認可能です!』
『な……なんだと、監視部隊、兵器使用自由!……何を始める気だ、未確認生命体……!』
ならば、私のやるべきことはただ1つ。
例えこの機体が、起動だけでも負担のかかるものだとしても問題ない。
「SIDE-2システム、スタートアップ……プレイ・ザ・メロディー、インペリアルッ!」
視界が艦内の格納室に置き換わる。今現在、この機体が見ている光景、ソレがコレだ。
「AACIC新型OS、起動設定……思考言語、変更、日字使用可能形態に変更、AACIC新型OS、リンクスタート!」
背中に8本もの管が刺される。この全てが、この機体を動かすための旋律の1つ1つであり、互いにまとまりのない音のようなモノをまとめるためのインタフェースなのだ。
「うっ……ぶ、気持ち……悪い……コレが、この機体の……呪いか……!」
頭に流れ込むイメージ。血。死。命令。神。肉。鋼。憎悪。最後に機体のイメージ。
そのイメージがとめどなく脳を侵す。そこに美しく調律された音楽はなく、ひどく歪な世界のみが広がっていた。
『未確認生命体、こちらに向かって直進してきます! ルート予測……だめです、ヴェンデッタ1号機に一直線です!』
『未確認生命体を『標的A´』と認定! 絶対にヴェンデッタ1号機に触れさせるな!……ヘヴンズバーストが再来する、それだけはあってはならないっ!』
「ん……ぶっ、うう……ふふ……っ」
混濁する。幾千幾万幾億の意識と体と、そして血肉が混じり合った混沌の中、僅かな自分をかき集めて、まるで寒さに怯える子供のように震えてその時を過ごす。
『アレだ!……新型機体を出せ!……レイ、近衛騎士レイ! 調律は終わっているか!』
「……先程……終わらせ…………ました、いつでも……出れます……!」
『聞いたな、格納庫4番! 神曲伴奏ベーゼンドルファー、射出!』
『ベーゼンドルファー、射出っ!』
勢いよく床が空き、外から多量の風がなだれ込んだ瞬間、機体は宙を舞った。
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