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第一次真珠海作戦(後)
Side-ケイ: Sin〜罪の名を〜
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そうして———ケイは、ヴェンデッタは間に合った。
今この時を以て、彼らは戦線に復帰したのである。……そのケイは、というと。
********
……間に合った、のだろうか。
人界軍の機体と思しきものを襲う、有機的なサイドツー。
それを撃退しても良かったのだろうか、と。
そもそもこれは、一体何が起きているのかということすら、僕にとってはよく分からなかった。
…………それでも、今の僕には———。
『こちら真珠海作戦総司令部より、ヴェンデッタのパイロットに告ぐ! 機体登録の為に機体名を教えてほしい! それは———ヴェンデッタではないのだろう?!』
機体名、か…………
ヴェンデッタでもいいと思ったが、そうだ、敢えて名付けるとするのならば。
「機体名は、ヴェンデッタ———シン。ヴェンデッタ・シン。それがこの機体の名前です」
かつて、僕とヴェンデッタが起こしたファーストヘヴンズバースト。
その罪を背負って、その罪を償うための、僕の機体。僕のサイドツー、僕の相棒。
だからこそ、シン。罪の名を冠する、銀燭の幻想機動天使。
「命令があるのなら、お願いします。今の僕は、何をすればいいのか分からないです」
『…………ベーゼンドルファーの排除。今はただ、それだけを頼む』
「———じゃあ、行こうか、ヴェンデッタ。……ケイ、ヴェンデッタ。残り8個の制御はお願い」
空中に浮遊する、12個ものビット兵器。
その制御を司っているのは、僕と、ヴェンデッタと———僕の中にいる、ケイ・チェインズ本人だった。
『自分の身体を乗っ取ったヤツにこき使われるなんてね、絶対に予想できなかったよ』
これを使っている時にだけ、僕の中のケイの声が聞こえるんだ。
「でも、君だって行きたいんだろ———リコの元へ!」
『ああ———うまく、やってみせるさ』
———が。機体を発進させようとした瞬間、あまりにも大きな爆音が響き渡った。
「……一体、何だ……?!」
人界軍の新たな兵器———ヴェンデッタより数倍も巨大なその兵器に照射されていたのは、あのΞ標的の神力光線だった。
「やらせるわけには、いかない…………ヴェンデッタ、僕に力を貸してくれ! あの機体を守る力を、僕に———!」
瞬間、ヴェンデッタから虹色の光が溢れ出す。
それは空にも円状となって広がり、ヘヴンズバースト…………のようなものを発生させる。
『ヘヴンズバースト?!…………じゃない、これは……?』
そう、これが僕たちの新たな力、ヴェンデッタ・シンの虹の力。
『ベーゼンドルファーの起こしたヘヴンズバーストが無効化されていき、神力光線も歪曲している…………まさか、この現象は———エクストラ・バースト!!!!』
ヴェンデッタの起こした虹色の領域———それは、既に地上に乱立していた塩の柱をも打ち消し、元の人間へと戻してゆく。
同時に、数十本も照射されていた神力光線をも、その領域の前には無様に歪曲し、無効化されゆくしかなかった。
「…………ああ、そうだね。救ってみせるんだ、みんなを———僕を祝福してくれた、この世界を!」
僕を祝福し、僕に全てを与えてくれた、ガスさんやリコたちのいるこの世界を。
この素晴らしい世界を、救う為に———そのために、この機体は自ら罪を背負い、その名を冠す———!
「たとえそれが、誰かにとっての罪だとしても…………それがそうなら、それは僕とヴェンデッタが背負う!
だから、だから———世界を救うなんて、そんな馬鹿げた僕のわがままを…………通させてくれ!
笑顔で、そして胸を張って生きるって、そう決めたんだから…………!!!!」
そう、笑顔で。僕らしく。
「…………それで、キミは…………キミは誰なんだ、一体」
対峙するは、ヴェンデッタと謎の有機的な機体。
———が、その正体を僕は、すぐに知ることになる。
『ケイ…………ケイ・チェインズ…………!!!!』
「そうか、君は———ブラン、君か」
僕を殺したくて、殺したくて殺したくて殺したくて仕方がなかったんだろう。
ならば今はいくらでも、相手になってやる…………!!!!
「———何だって? 苦しんでる……ブランが?」
ヴェンデッタが教えてくれた。今のブランは、あの機体は苦しんでいる。
自分で自分に課した呪いのせいで、今もまだ苦しんでいる、と。
…………かつての僕と、同じじゃないか。
「分かったよ、ヴェンデッタ。…………救おう、ブランを!」
12個のビットに先行させ、その後にヴェンデッタのみで突進をかける。
「はっ!」
腕を振り、ビットに命令した瞬間———12本もの魔力光線が、その機体の四肢を貫き、完全に切断してみせた。
そう、ほんの一瞬。
『な…………ニぃ…………?!』
「これが、ヴェンデッタ・シンだ!」
新しくなったヴェンデッタは伊達じゃない…………例え何の武装を持っていなくとも、このビットだけで十分に戦える!
「ヴェンデッタ、頼む! 僕に———ブランを救わせてくれっ!」
再度広がる虹の円環。ヴェンデッタはベーゼンドルファーへと突進し、そのまま衝突する勢いで距離が詰められる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!!!」
衝突、そして———突破。
機体の中、現実という枠組みを超え———僕は、ベーゼンドルファーの中へと入ってみせた。
今この時を以て、彼らは戦線に復帰したのである。……そのケイは、というと。
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……間に合った、のだろうか。
人界軍の機体と思しきものを襲う、有機的なサイドツー。
それを撃退しても良かったのだろうか、と。
そもそもこれは、一体何が起きているのかということすら、僕にとってはよく分からなかった。
…………それでも、今の僕には———。
『こちら真珠海作戦総司令部より、ヴェンデッタのパイロットに告ぐ! 機体登録の為に機体名を教えてほしい! それは———ヴェンデッタではないのだろう?!』
機体名、か…………
ヴェンデッタでもいいと思ったが、そうだ、敢えて名付けるとするのならば。
「機体名は、ヴェンデッタ———シン。ヴェンデッタ・シン。それがこの機体の名前です」
かつて、僕とヴェンデッタが起こしたファーストヘヴンズバースト。
その罪を背負って、その罪を償うための、僕の機体。僕のサイドツー、僕の相棒。
だからこそ、シン。罪の名を冠する、銀燭の幻想機動天使。
「命令があるのなら、お願いします。今の僕は、何をすればいいのか分からないです」
『…………ベーゼンドルファーの排除。今はただ、それだけを頼む』
「———じゃあ、行こうか、ヴェンデッタ。……ケイ、ヴェンデッタ。残り8個の制御はお願い」
空中に浮遊する、12個ものビット兵器。
その制御を司っているのは、僕と、ヴェンデッタと———僕の中にいる、ケイ・チェインズ本人だった。
『自分の身体を乗っ取ったヤツにこき使われるなんてね、絶対に予想できなかったよ』
これを使っている時にだけ、僕の中のケイの声が聞こえるんだ。
「でも、君だって行きたいんだろ———リコの元へ!」
『ああ———うまく、やってみせるさ』
———が。機体を発進させようとした瞬間、あまりにも大きな爆音が響き渡った。
「……一体、何だ……?!」
人界軍の新たな兵器———ヴェンデッタより数倍も巨大なその兵器に照射されていたのは、あのΞ標的の神力光線だった。
「やらせるわけには、いかない…………ヴェンデッタ、僕に力を貸してくれ! あの機体を守る力を、僕に———!」
瞬間、ヴェンデッタから虹色の光が溢れ出す。
それは空にも円状となって広がり、ヘヴンズバースト…………のようなものを発生させる。
『ヘヴンズバースト?!…………じゃない、これは……?』
そう、これが僕たちの新たな力、ヴェンデッタ・シンの虹の力。
『ベーゼンドルファーの起こしたヘヴンズバーストが無効化されていき、神力光線も歪曲している…………まさか、この現象は———エクストラ・バースト!!!!』
ヴェンデッタの起こした虹色の領域———それは、既に地上に乱立していた塩の柱をも打ち消し、元の人間へと戻してゆく。
同時に、数十本も照射されていた神力光線をも、その領域の前には無様に歪曲し、無効化されゆくしかなかった。
「…………ああ、そうだね。救ってみせるんだ、みんなを———僕を祝福してくれた、この世界を!」
僕を祝福し、僕に全てを与えてくれた、ガスさんやリコたちのいるこの世界を。
この素晴らしい世界を、救う為に———そのために、この機体は自ら罪を背負い、その名を冠す———!
「たとえそれが、誰かにとっての罪だとしても…………それがそうなら、それは僕とヴェンデッタが背負う!
だから、だから———世界を救うなんて、そんな馬鹿げた僕のわがままを…………通させてくれ!
笑顔で、そして胸を張って生きるって、そう決めたんだから…………!!!!」
そう、笑顔で。僕らしく。
「…………それで、キミは…………キミは誰なんだ、一体」
対峙するは、ヴェンデッタと謎の有機的な機体。
———が、その正体を僕は、すぐに知ることになる。
『ケイ…………ケイ・チェインズ…………!!!!』
「そうか、君は———ブラン、君か」
僕を殺したくて、殺したくて殺したくて殺したくて仕方がなかったんだろう。
ならば今はいくらでも、相手になってやる…………!!!!
「———何だって? 苦しんでる……ブランが?」
ヴェンデッタが教えてくれた。今のブランは、あの機体は苦しんでいる。
自分で自分に課した呪いのせいで、今もまだ苦しんでいる、と。
…………かつての僕と、同じじゃないか。
「分かったよ、ヴェンデッタ。…………救おう、ブランを!」
12個のビットに先行させ、その後にヴェンデッタのみで突進をかける。
「はっ!」
腕を振り、ビットに命令した瞬間———12本もの魔力光線が、その機体の四肢を貫き、完全に切断してみせた。
そう、ほんの一瞬。
『な…………ニぃ…………?!』
「これが、ヴェンデッタ・シンだ!」
新しくなったヴェンデッタは伊達じゃない…………例え何の武装を持っていなくとも、このビットだけで十分に戦える!
「ヴェンデッタ、頼む! 僕に———ブランを救わせてくれっ!」
再度広がる虹の円環。ヴェンデッタはベーゼンドルファーへと突進し、そのまま衝突する勢いで距離が詰められる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!!!」
衝突、そして———突破。
機体の中、現実という枠組みを超え———僕は、ベーゼンドルファーの中へと入ってみせた。
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