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第一次真珠海作戦(後)

救い出してみせるから。

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「…………ブラン、聞こえる?……僕だよ、君がずっと探してた、ケイだ」

 暗闇の中。自分の声以外、何も響く音はないこの空間の中、必死にブランに呼びかけ続ける。

『来る、な』

「……どうして?……君は、僕を殴りたいんじゃなかったの?」

『来るな、来るな来るな来るな!…………来てほしく、ないんだ……!!』

「———ごめん、でもそれは無理だ。僕は救いたいんだ、君を。たとえどんな形になろうとも、僕は救い出してみせると決めたんだ」


『もう…………俺に救われる価値はない……もう俺は戻れないんだ、もう俺は、俺は———!』


「人を、殺した?」

『っ———!』



「…………戻れるよ、戻っても、いいんだよ。死者に、君を縛る権利なんて……ないんだから」

『戻っていいわけ……ないだろ、俺は殺したんだ! あれだけお前を人殺しと責めて、責めて……殴って、それでも俺は、お前のように救いを差し伸べる人を、目の前で失った!

 おまけに今度は、自分の行いで人の命を奪った!…………俺が、この俺が、殺したんだよ!』


「君は……とことん、前の僕に似てるね」
『…………?』

「僕もそうだった。僕がいなくなった理由、それは、僕自身の罪を償うためだったから」

『……でも、俺もお前と同じだ。もう既に償えないところまで来てしまった。……もう、俺なんて救わなくたっていい、救われていいはずがない!

 だから———殺してくれ。この俺を、今ここで殺してくれ、殺してくれよ、なあ!』

「それは無理だ。……僕は、君を殺すことはできない。何よりそれは、絶対にしたくない」

『だったら、そのお前のせいでまた、人が傷付く。……やるのは俺だ、だけどお前も同罪になる……それで、それで本当にいいのか、お前は!』

「そんなことだってさせない。僕は君を連れて帰る、絶対に」

『無理だ。無理なんだよ、それを…………は許してくれないんだ……!!』

 そうブランが口にした瞬間、奥の方から強すぎる風が僕をのけ反らせる。

「……っ、でも、それでも僕は———、」

 言いかけたところで、僕の意識は戻ってしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


「たはっ!……っ、はぁ、はぁ、はあ…………っ! ダメ、だったか……!」

 ヴェンデッタ内部。僕の意識はここまで戻ってきた。

 そうだ、僕は今、ブランの心の中に入っていたんだ。……あれだけの時間を過ごしたというのに、現実の中ではたった数秒しか経っていない。

 ……でも、アレは夢なんかじゃなかった。
 僕はもう一度話せたんだ、ブランと。


『おい……コーラス7…………聞こえる、か?』

 声? 通信……だけど、聞いたことはなさそうな男の声だった。

『俺はコーラス12……サイドツー・カスタムゼクスのパイロット、秀徳ってヤツだ』

 コーラス……つまり、第0機動小隊の仲間……か。

 ……ただ、僕は。

「…………誰ですか?」
 
 話したことも、声を聞いたこともないっ!

『辛辣っ?!……まあ、今はそんなことどうでもいい。とりあえず、ブランのヤツをどうするか、それだけを俺は今考えている』
「奇遇だね、僕も同じだ」

『だったら———協力してくれないか?……ブランを、あの場から引きずり出す』

「言われなくとも、僕はそうするつもりだったよ」

 黄色の色を纏ったサイドツー……サイドツー・カスタムゼクスと、横並びになる僕のヴェンデッタ。

 そしてその2機の視界の向こうにあるのは———氷魔術によって四肢を再生しつつあるベーゼンドルファーであった。


『行くぞ、コーラス———、ケイっ!』
「分かったっ!」
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