Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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為すべき事

名付けってセンスないと難しいよね

◇◆◇◆◇◆◇◆

 朝。
 いつもと変わらない、何の変哲もないただの朝……少し訂正。ほんの少しだけ変わってる。

 新しい仲間ができた事だ。
 いつもは朝8時前後に起きる事を心がけているから、今日も8時近くに起きれたんだ。

 ……ただし、起き上がった場所はベッドではなく床の上。

 肝心のベッドでは、上で気持ちよさそうに寝ている美少女が、その美貌からは到底出そうにないほどのいびきを響かせている。


『……いいじゃない! 白は床で寝て! 男は床で寝るもんでしょ?!』

 ……そうだ、昨日の夜はそう言われたんだったな。




 起きたばかりで呂律が回らない口でサナを起こす。
「お~い、おきれ~、おきれよ~」

 どっかの神殿の神官みたいになってしまった。
 ……が。
「ふぇっ……」

 効き目はあったらしく、俺の声を聞いた瞬間にいびきは止み、次の瞬間その目が開く。

「ぇ……あ……うっ」

 サナはベッドの上で両手を上に上げ体を伸ばす。

 いい感じにしまったお腹が、その姿を見せる。朝一番にこんなのを見せられるこっちの身にもなってくれ。



 朝食は昨日のキングステーキの残りだ。

「朝からこんな重いの食えっこないよ……」

 横から苦情が来てるがそんなものは気にしない。
 ただ黙って朝食を食べ、ただ黙って支度を済ます。


「そら、行くぞ」
「掲示板を見に行くの?」
「そうだ」

「ねえ、どうしてそんな冷たいわけ?」

 素朴な疑問。だが当然の疑問だろう。昨日まで戦場でブイブイ言わせてた男が朝になった途端急に大人しく、冷たくなったのだから。

「どうして……って、朝だからに決まってるだろ。まだ意識が定まってなくて、頭ん中がボーっとしてるからだ」

 会話が途切れた後はひたすら無言だった。
 宿から出た時も無言、歩いている時間も無言。



 こんな雰囲気にした自分が言うのもなんだが、とても気まずい状況だ。

 そんなこんなで、いつの間にか掲示板へ到着。今日の昼頃からある任務を受注し、パーティ編成の為にジョブセンターへと向かった。



 ジョブセンターに入った途端、向けられたのは冷たい視線だった。なぜなら、この俺はつい昨日まで国規模で追われていた犯罪人だったから。どうもこの噂はここ数日間で急激に広まっていたらしい。


 だがしかしそんな視線を無視し、あのお姉さんに話しかける。
「おはようございます、この前お世話になった白です」



「ああっ! 白さん、この前は本当に申し訳ございません! 適正役職を言い忘れてて……それにしても、犯罪者と誤解されたのは災難でしたね、心中お察しします」


「ああいや、いいんです、あれはまあ……事故みたいなものですし。……俺はこのまま剣士としてやっていくので、パーティ編成を……したいんですけど……」

「隣の方、1名とでよろしいでしょうか? ではまず、お名前をお聞かせください」

「サナ・グレイフォーバスです! 役職はウィザードをやっています!」

 サナは溌剌なまま答える。
「サナさん……ですね、勇者リストには入っていないようですので、まずは勇者登録をお願いします。こちらの紙にお名前を」

 そのままサナは名前を書き、ついにジョブシステムの診断結果が出てきた。

 ……まぁ、魔力量とかAランクなんだろうな~とか予想しつつ、サナの茶色のカード(名前はジョブカードとか言うらしい)を覗いてみる。



 サナ・グレイフォーバス
 適正属性:氷属性、炎属性、幻術(幻想顕現魔術)
 魔力量:A
 潜在能力:A



 ……抜群の結果だった。どんだけ魔術の才能あるんだよ、とか思ってたら、お姉さんが、
「すごい! ここまでの人は久しぶりに見ました! そこまでの人はあまり見かけないくらい凄い結果です!」

 ……と、この前とは真逆の意味で、ほぼ同じ事を口走った。


 対してサナは、
「やったーー! 白、見て見てコレ! 凄いでしょ、私凄いでしょ!!」

 と、茶色のカードを俺の眼前に、見えなくなるくらいまで押し付けてくる。
 サナはめちゃくちゃご機嫌だ。


「なあ、お前1度は俺の……あの地獄のようなカード見ただろ? そんな凄い結果をまじまじと見せつけられると自分が恥ずかしくなってくるからやめてくれないか……」

「あっ……ごめんね……私が凄すぎたせいで……」

 ちょっと待った。こいつ何が問題か分かってないぞ。
 それともワザと言ってんのか?!

「とっ、とりあえず、パーティ編成しましょう!! この話はまた後にして、ね? お姉さん!!」


 最後の部分だけ強調して言ってやった。

「で、ですね! お二人方の勇者登録も済んだ事ですし!」

 そう言うとお姉さんは先程よりも少し大きな紙を差し出し、

「それじゃあ、この上にパーティ名、その下にお二人方のお名前をお願いします」

 と案内してくれた。
 ……ん?…………ちょっと待ってくれ、



「「パーティ名って何だ?」」




「あの~パーティ名って、決めなくてもいいんですよね……?」
「ああ、別にない場合は決めなくてもよろしいで……」

 お姉さんの話を拒むようにして、

「白! パーティ名決めようっ!!!!」

 まさかのサナが念押ししてきやがった。
 ……こういうのってセンスが試されるから嫌なんだよな……



「ちょっと待て。パーティ名って言うけど、何か案とかあるのか?? ちなみに俺は案なんてないからな?」

「そっちに案が無いなら、私が勝手に決めてもいいって事ね!」

「ちょっと、勝手に決めていいとは……」

 俺の静止を完全に無視し、サナは紙にその名前を書いて俺に見せる。


「はい!! パーティ名、『ワンダー・ショウタイム』! どう、いいでしょ、素敵でしょ?」

 ……ああ、素敵だ。とっても素敵だ。
 周りで座りながら談笑している皆さんも静かになるくらいには素敵だ。

「ノーコメントでお願いします」

 ノーコメントとは言いつつ、俺にとっての1番のコメントだった。



「なるほど! 言葉が出ないくらいよかったって訳ね!」

 そしてどうしてそのような結論に至るのかとても知りたい。



「……えっと、パーティ名と名前書いたらもういいんですよね?」

 涙目になりながら尋ねる。

「え、ええ、よろしいですよ、後の事はこちらでしますので……そ、それにしても素敵なパーティ名ですね!」

 なぜそこでフォローを入れるんだ。
「……おい、もう行くぞ、俺はこれ以上この場にいたくない」

 一刻も早くこの場から、この雰囲気から離れたくてそう呟く。そのままサナの腕を引き、一目散にドアへと向かった。

 ドアから外に出た後、サナにもう2度と名前なんて決めさせないからなと言い聞かせる。
 ……当の本人がなぜ説教されているのか分かってなさげだったから、正直言って不安だが。
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