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新・二千兵戦争
反転/黒幕
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血を舐めた瞬間。頭がどうしようもない高揚感に包まれる。
あの時の感覚。
あの時の快楽。
———全て、思い出した。
「背……水の……陣……手ノ項……!」
目の前にある「エサ」に今すぐにでも飛びつこうとする。
魔力が流し込まれる。
刀を握りしめ、腕がはち切れそうなくらいに力を強める。
そして、1周。
円を描くように、刀を振る。
周りを取り囲むエサは、皆腰から崩れ落ちていく。
……まあ、腰の下を斬り裂いたのだから、当然のように皆、腰より上半身から落ちていく。
斬った。
久しぶりに。
人を。
「ソウダ、コロせ。モット。オマエのココロのママにコロせ」
頭の中にもう1人の自分が語りかけてくる。
うるさい、ウルサイ、ウルさイ。
頭が頭蓋骨からひび割れ、骨ごと肌がバックリ割れるかの様な激痛が走る。
でも、頭の中はどうしようもないほど快楽に満ちていた。
スッと刀を入れた後、骨と骨の間を縫い、丁度関節部分を切り裂いた際の快感。飛び散る血と紅の空模様。
まさに芸術とも呼べるものであった。
赤く染まった地面。全てが、俺とコイツの好物だった。
それでも、エサの数にキリはない。
何度でも、何回でも、斬って、斬って、斬り殺して、斬り刻んで、斬り裂ける。
絶好の、人斬り日和だった。
1振り毎にズシャッと鳴る斬撃音と共に、血を吹き出しながら落ちていく上半身。
たまに飛びかかってくるエサだって空中で解体するし、エサだかりの間を縫って近づいてくるエサも問題なく斬り伏せる。
全て、全て、全て斬り殺し、蹂躙していく。
殺戮。虐殺。それが、今の俺にとっては楽しくて仕方なかった。
目の前のエサを1個1個両断する。あちらにとっては俺に対する復讐のつもりでやってるんだろうが、全くもって雑魚ばかりであった。
痛みも快感だった。歯を食いしばってなお、耐え難い快感が身を襲う。
目に移る動くもの、全てがエサに見える。
———ふと、目が吸い付いた———女以外は。
———反転。
何を、しているんだろう。
斬り殺してきた手が止まる。足が勝手に後退する。
俺は、俺は、何してるんだ?
サナを見た時、ただの一瞬だけ正気に戻った。
だが、目の前の惨状を目にして、一気に恐怖が自身を襲う。
なぜ?
どうして?
なんで人を斬るのが楽しいと思ってしまうんだ?
どうして、約束したはずなのに、また殺してしまうんだ?
その時、またあの声がする。
「キにスルな。コロせ。コロせ。キりコロせ。ジブンのやリたいヨウにシろ」
……ダメだ。
ダメに決まってるだろ、そんなの……!
改めて、自分の取った行動を振り返る。
そうだ、俺は———誰も殺さないって、約束したはずなんだ……!
絶対に、誰も殺さないって……!
ヤメロ、ヤメロ、やめロ……!
必死に衝動を抑える。
自然と涙が溢れ出す。
今なお、敵を殺さんと震える刀を握りしめた拳を、もう1つの拳で握りしめ押さえつける。
もう1度、サナの顔を見る。
「やめて、白っ!!」
必死に叫ぶサナの声。
そうだ、そうじゃないか。
聞いてなかっただけで、サナはずっと俺に呼びかけてくれていたんだ……!
ようやく、周りのコエも聞こえるようになってきた。
「嫌だ嫌だ嫌だ……やっぱり俺死にたくない!」
「こっ……殺すんだろ?!……早く……早く誰か行けよ……!」
「嫌……嫌ぁっ! 私……あんなになっちゃうの……?」
一時戦況は停滞し、冷静になった敵は積み重ねられてきた死体を見て、ただただ恐怖し戦慄する。
やっぱり……やめよう。
こんな事、やめるべきだ。
俺が言える話なんかじゃないけど。自分から始めておいて、それは虫が良すぎるってもんだけど。
……それでも、ここで血に染まらない、話し合いへの道を提示すべきだ……!
「……………………もう、やめないか?」
敵は皆首を傾げる。
「もう、こんな事、やめに———、」
言いかけた瞬間。
耳をつんざく悲鳴が響き渡った。
目線を上げると。
縛り付けられた二の腕を刀で貫かれているサナと。
その横に立って、どうだ、と言わんばかりの姿勢とにやけ顔で立っている赤い服の男。
1度冷静になった思考が再び沸騰し始める。
「何、…………何やってんだあっ!」
すかさず身体強化魔術で跳び上がり、サナが縛り付けられている台に向かって着地姿勢をとる。
その時見えたのが。サナの縛り付けられた台を取り囲むようにして居座っている、赤い服の連中。
刀を構え、着地と同時に男に斬りかかる。
男は刀で俺の攻撃をガードする。
「そいつは……そいつは関係ないだろ……! なぜそいつを、サナを……傷つけた!!」
最初の目的を思い出す。
「へへっ……コイツはお前の大切な女なんだろう? だから傷つける。何か……悪いか? お前だって、さんざん奪ってきたくせして何を……言ってんだよ?」
「だからって……奪わせてなるもんかあっ!」
一層力を込め、男の刀を押し返す。
一瞬だけ背後に目線をやる。
「護って———みせるんだあぁぁあっ!」
刹那。既に俺は、台の下から刀で突き刺そうとしてくる敵の目を潰していた。
刀を振り抜き、前を向いた瞬間、目線の先から刀が飛び込んでくる。
すかさず頭を横に振り直撃を回避した後、男の胸を思いっきり突き刺した。
「し……ろ……」
「……大丈夫か、他にケガは?」
「……他はないわよ……大丈夫……」
「そうか、なら……」
男は息絶えた。それを確認した後、男から刀を抜き、大声で今の感情を吐き出した。
「なあ、もうやめにしないか、こんな事。お前たちだって死にたくはないはずだ。俺だって殺したくはない、虫がいいってのは分かってる! でも、こんな事続ける理由なんてないと思うんだ!」
ありったけの気持ちを言葉にして叫ぶ。
少し間が空いた後、1人の青年が叫ぶ。
「そうだよな、それがいい! いくら親や兄弟が殺されたからって、何も殺し合いをする必要はなかったんだ、俺は乗るぞ! 例えコイツがどれだけ信用できなかろうと———」
言いかけたところで。
青年の首がすっ飛んだ。
首には、おそらく何者かに斬られた断面。
俺は人だかりより上の台にいるってのに、男を斬った何者かの姿も、太刀筋も、何1つ見えなかった……!
「何を、ふざけた事を言っている?」
先程まで男がいた位置から響き渡る女の声。
「やめる? 殺し合いをする必要はない? そんな訳ないだろう? 私たちは何のためにここに集まった?
誰の為にこんな事をしている、皆の者よ、もう1度よく考えろ。私たちが今すべき事は、父の仇、母の仇、兄弟の仇を討つ、ただそれだけの事だろう??」
……どうやら、黒幕のおでましらしい。
———しかし、このドス黒い殺気。
もはや瘴気と化している周りの魔力。
コイツらは、魔王軍の息のかかった者たちだ……!
あの時の感覚。
あの時の快楽。
———全て、思い出した。
「背……水の……陣……手ノ項……!」
目の前にある「エサ」に今すぐにでも飛びつこうとする。
魔力が流し込まれる。
刀を握りしめ、腕がはち切れそうなくらいに力を強める。
そして、1周。
円を描くように、刀を振る。
周りを取り囲むエサは、皆腰から崩れ落ちていく。
……まあ、腰の下を斬り裂いたのだから、当然のように皆、腰より上半身から落ちていく。
斬った。
久しぶりに。
人を。
「ソウダ、コロせ。モット。オマエのココロのママにコロせ」
頭の中にもう1人の自分が語りかけてくる。
うるさい、ウルサイ、ウルさイ。
頭が頭蓋骨からひび割れ、骨ごと肌がバックリ割れるかの様な激痛が走る。
でも、頭の中はどうしようもないほど快楽に満ちていた。
スッと刀を入れた後、骨と骨の間を縫い、丁度関節部分を切り裂いた際の快感。飛び散る血と紅の空模様。
まさに芸術とも呼べるものであった。
赤く染まった地面。全てが、俺とコイツの好物だった。
それでも、エサの数にキリはない。
何度でも、何回でも、斬って、斬って、斬り殺して、斬り刻んで、斬り裂ける。
絶好の、人斬り日和だった。
1振り毎にズシャッと鳴る斬撃音と共に、血を吹き出しながら落ちていく上半身。
たまに飛びかかってくるエサだって空中で解体するし、エサだかりの間を縫って近づいてくるエサも問題なく斬り伏せる。
全て、全て、全て斬り殺し、蹂躙していく。
殺戮。虐殺。それが、今の俺にとっては楽しくて仕方なかった。
目の前のエサを1個1個両断する。あちらにとっては俺に対する復讐のつもりでやってるんだろうが、全くもって雑魚ばかりであった。
痛みも快感だった。歯を食いしばってなお、耐え難い快感が身を襲う。
目に移る動くもの、全てがエサに見える。
———ふと、目が吸い付いた———女以外は。
———反転。
何を、しているんだろう。
斬り殺してきた手が止まる。足が勝手に後退する。
俺は、俺は、何してるんだ?
サナを見た時、ただの一瞬だけ正気に戻った。
だが、目の前の惨状を目にして、一気に恐怖が自身を襲う。
なぜ?
どうして?
なんで人を斬るのが楽しいと思ってしまうんだ?
どうして、約束したはずなのに、また殺してしまうんだ?
その時、またあの声がする。
「キにスルな。コロせ。コロせ。キりコロせ。ジブンのやリたいヨウにシろ」
……ダメだ。
ダメに決まってるだろ、そんなの……!
改めて、自分の取った行動を振り返る。
そうだ、俺は———誰も殺さないって、約束したはずなんだ……!
絶対に、誰も殺さないって……!
ヤメロ、ヤメロ、やめロ……!
必死に衝動を抑える。
自然と涙が溢れ出す。
今なお、敵を殺さんと震える刀を握りしめた拳を、もう1つの拳で握りしめ押さえつける。
もう1度、サナの顔を見る。
「やめて、白っ!!」
必死に叫ぶサナの声。
そうだ、そうじゃないか。
聞いてなかっただけで、サナはずっと俺に呼びかけてくれていたんだ……!
ようやく、周りのコエも聞こえるようになってきた。
「嫌だ嫌だ嫌だ……やっぱり俺死にたくない!」
「こっ……殺すんだろ?!……早く……早く誰か行けよ……!」
「嫌……嫌ぁっ! 私……あんなになっちゃうの……?」
一時戦況は停滞し、冷静になった敵は積み重ねられてきた死体を見て、ただただ恐怖し戦慄する。
やっぱり……やめよう。
こんな事、やめるべきだ。
俺が言える話なんかじゃないけど。自分から始めておいて、それは虫が良すぎるってもんだけど。
……それでも、ここで血に染まらない、話し合いへの道を提示すべきだ……!
「……………………もう、やめないか?」
敵は皆首を傾げる。
「もう、こんな事、やめに———、」
言いかけた瞬間。
耳をつんざく悲鳴が響き渡った。
目線を上げると。
縛り付けられた二の腕を刀で貫かれているサナと。
その横に立って、どうだ、と言わんばかりの姿勢とにやけ顔で立っている赤い服の男。
1度冷静になった思考が再び沸騰し始める。
「何、…………何やってんだあっ!」
すかさず身体強化魔術で跳び上がり、サナが縛り付けられている台に向かって着地姿勢をとる。
その時見えたのが。サナの縛り付けられた台を取り囲むようにして居座っている、赤い服の連中。
刀を構え、着地と同時に男に斬りかかる。
男は刀で俺の攻撃をガードする。
「そいつは……そいつは関係ないだろ……! なぜそいつを、サナを……傷つけた!!」
最初の目的を思い出す。
「へへっ……コイツはお前の大切な女なんだろう? だから傷つける。何か……悪いか? お前だって、さんざん奪ってきたくせして何を……言ってんだよ?」
「だからって……奪わせてなるもんかあっ!」
一層力を込め、男の刀を押し返す。
一瞬だけ背後に目線をやる。
「護って———みせるんだあぁぁあっ!」
刹那。既に俺は、台の下から刀で突き刺そうとしてくる敵の目を潰していた。
刀を振り抜き、前を向いた瞬間、目線の先から刀が飛び込んでくる。
すかさず頭を横に振り直撃を回避した後、男の胸を思いっきり突き刺した。
「し……ろ……」
「……大丈夫か、他にケガは?」
「……他はないわよ……大丈夫……」
「そうか、なら……」
男は息絶えた。それを確認した後、男から刀を抜き、大声で今の感情を吐き出した。
「なあ、もうやめにしないか、こんな事。お前たちだって死にたくはないはずだ。俺だって殺したくはない、虫がいいってのは分かってる! でも、こんな事続ける理由なんてないと思うんだ!」
ありったけの気持ちを言葉にして叫ぶ。
少し間が空いた後、1人の青年が叫ぶ。
「そうだよな、それがいい! いくら親や兄弟が殺されたからって、何も殺し合いをする必要はなかったんだ、俺は乗るぞ! 例えコイツがどれだけ信用できなかろうと———」
言いかけたところで。
青年の首がすっ飛んだ。
首には、おそらく何者かに斬られた断面。
俺は人だかりより上の台にいるってのに、男を斬った何者かの姿も、太刀筋も、何1つ見えなかった……!
「何を、ふざけた事を言っている?」
先程まで男がいた位置から響き渡る女の声。
「やめる? 殺し合いをする必要はない? そんな訳ないだろう? 私たちは何のためにここに集まった?
誰の為にこんな事をしている、皆の者よ、もう1度よく考えろ。私たちが今すべき事は、父の仇、母の仇、兄弟の仇を討つ、ただそれだけの事だろう??」
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