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再会と再開
幹部襲来 Ⅲ
*◆*◆*◆*◆
……前回より4ヶ月前。
イデアが魔王城に訪ねるより4ヶ月前の話である。
「黒~、木材買ってきたぞ~」
俺は、まあ、途中で襲ってきた兄さんを……ボコボコにしてまで木材を買ってきた。
「よし白、それじゃあ屋根の修理頼むぞ」
「釘」なる鉄を「ハンマー」なる物で木の板で打ち込む。
こういう経験は初めてなので新鮮だった。
「黒ーっ! これでいいんだよなーーっ!」
「ああ、よくやった! それじゃあ降りてこい、夕食だ!」
「なあ黒、やっぱり俺、旅に出る事にしたよ」
「どうした急に。何かあったのか?」
「さっき、木材を買いに行った時、兄さんと出会ったんだ」
「……まさかイデアか?! こんなところで会う事になるなんてな……」
「正直兄さんが俺をつけまわしてるのかとも思ったさ。……んで、兄さんと一戦交えたんだ。……背水の陣すら使わずにボコボコに叩きのめしたが、その後帰りながらこう思うようになったんだよ。
……全力で戦える相手がほしい、命と命のやりとり、命をかけた戦いをできるようなヤツと出会いたいって……! 心の底から、戦いたくてウズウズしてるんだよ……!」
戦いたい。しのぎを削り、命を尽くして戦いたい。今の俺にはそんな感情しかなかった。
「戦う事こそ生きる意味」などと言い、戦う事を自分自身に対して、脅迫じみた義務として押し付けていたあの頃とは、違う感情だった。
———いつからだろうか、『痛みがなければ生きられない』と、そう思い始めたのは。
それにしてもボコボコにした、は言い過ぎだろうか。
「5ヶ月前には戦わないとか言っていたくせに、いっぱしの口を聞くようになったもんじゃないか」
「……ああ、だから、ここに居座るのは今日で終わりにするよ」
「……んふ、まあお前の人生だしな、好きにしろと言ったのは俺だ。それに俺の負担も減るしな。
さ、明日からはまた歩く事になるぞ。もう夜9時。また旅に出るなら今日はもう寝た方がいいんじゃないか?」
「……そうだな、明日に備えて心の準備もしなきゃならないしな」
「サナとも……会う事になるだろうしな」
「……それじゃあ、おやすみ。このまま寝るよ」
ベッドに潜り、目を瞑り意識をシャットアウトする。
例の「白の世界」に入ったまま半覚醒の意識を保つ。
……いや、これって前みたいに寝れないのか?
◆◆◆◆◆◆◆◆
……だなんて思いながら半覚醒のまま仮眠のような睡眠をとっていたら、いつの間にか朝になっていた。
「……あ」
元から意識は半覚醒だったのでスパッと起きれた。
……そもそも、あまり睡眠をした、という自覚が持ててない、が。疲れ果てていた頭は完璧に休めていた。
「黒は起きてないけど、もう行くか。俺は———」
俺は、俺は、やっぱり待ちきれないんだ。
刀を携え、荷物を取り、靴を履き、ドアを開け外に出る。
……ん?
刀が……欠けている……?
まさか、度重なる打ち合いで欠けた……?
「概念封印、解除」
木の部分が剥がれ落ちる。
「やっぱりだ」
刀身。その白銀に煌めく真剣すら、一部が欠けていた。
……おっと、これは。またまたやるべき事が増えてしまったみたいだ。
いくら神核が、概念が付与されているとは言え、元はただの刀。こうなる事はとうの昔に分かりきっていた。
そっと木のドアを閉め、
「さよなら」
と呟き、ツリーハウスを後にする。
……ありがとう、俺を1年間、見守っててくれて。
……今日サナと会う為の心の準備を、昨日したばかりだってのに。
東に歩き始めた後、どのくらいの日々が経っただろうか。
◆◆◆◆◆◆◆◆
ただ……俺が歩いている間、日が沈んだ回数は約120回。
……つまり、つまりだ。
単純計算だが、俺は……
4ヶ月間歩いていた!!!!
その間、出会った人の数、2568人!
経由した村の数、14!
王都への道を聞いた回数、138!
———王都は、影も形もない。
何度聞こうと、何度方角を合わせようと、次の村に着くときには既に王都への方角は違う方角へと向いていた。
どこに進み続けているのかも分からないまま。
もう、半ば放心状態になりながらただひたすら東に歩き続ける。
「……え?」
あまりの衝撃に思わず声が出る。
朦朧とし始めた意識を保ち必死に東に歩いていたが、木と木の間を抜けた先。見えた景色は。
「……は?」
見えた景色は、海であった。
一面に広がる赤。波1つ起こさぬ凪の体現。その中央には———大きな孤島が。
……そう、海は赤色だ。1000年前の終末戦争で、赤く染まったとか何とか。
「……ああ……俺、ついに死んだんだな」
……東、東と、東に行けば王都に着くと思っていた。
……だが、王都は意外にも小さかったんだろう。
なんせ何度方角を聞こうったって、全くもって王都が見つからないのだから。
どうやって、この状況を脱出しろってんだ。
目の前の崖の下には一面の赤い水。
4ヶ月ずっと陽の光に当てられていたせいで、いっそ海に飛び込んでやろうかとも思ってしまった。
「……ん?」
よく見ると、左の崖沿いの道には木製の古びた看板が。
看板に彫られた文字を見る。
「なになに……5km先……カンメ村……?……カンメ村……?! 村……!」
やった……、ようやく村だあ、食糧だ!
前の村から離れ約6日。ここに至るまでに雑草と湧き水を所かまわず摂取し続けた矢先の、この光景。
なんで俺は、前の村で食糧を買ってこなかったんだ、などと今更ながら後悔しながら村に向かって走り出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇
え゛゛、村?
5km先、と書いてあったが、体感500mくらいだっただろう。
村、などと謳っておきながら、家中に蜘蛛の巣が張り付けられており、出歩く人もおらず、果ては井戸も水がなくなっている。
……ああ、これが限界集落ってやつか。
———もしも、もしも今願いが叶うなら、
俺に……食糧をくれ。
「俺に、食糧をくれーーーーっ!!」
「なんじゃ、うるさいのう」
と。家から出てきたのは老婆だった。
「そこのガキ、名を言え」
「え……えっと……俺の名前は白で———」
「ハッ! お前今、嘘をついたのう……」
「嘘?! 嘘って何を……」
そりゃあそうだ、俺の名前を言えと言われたから、あくまで言ったまでなのだが……
「お前の名前じゃよ。概念登録されている真名を言えと言っておるんじゃ!」
概念登録……つまりは生まれてくる時に名付けられた本名を口にすればいいと?
「え……えっと……アレン・セイバー……?」
「多分それじゃな———……セイバー、か…………全く、近ごろの若いもんはす~ぐ嘘をつく」
「は、はあ、すいませ———」
「それで、食糧か? 悪いが、この村はもう終わりじゃ。食糧なんて何1つないわい」
唐突の説教、唐突に突き付けられる事実。
……この村は終わり? 魔王軍にでも襲われて……いや、どこにも血痕はないし、多分それはないだろう。
ではなぜ食糧がない? 老婆が隠してるのか?
「仕方ない、お前が迷っておる様じゃから言ってやるがの、この村は30年前に廃村になった。わし以外誰もここにはおらん」
「えっと……じゃあなぜ、貴方はここに……」
「行くあてがないからじゃ」
「食糧がないってのは……」
「お前、魔力で感じられないのか? わしは純粋な魔族にして魔王軍幹部じゃ。食糧なぞなくても生きれるわい」
「魔王軍……幹部?!」
……まさかの幹部、襲来である。
……前回より4ヶ月前。
イデアが魔王城に訪ねるより4ヶ月前の話である。
「黒~、木材買ってきたぞ~」
俺は、まあ、途中で襲ってきた兄さんを……ボコボコにしてまで木材を買ってきた。
「よし白、それじゃあ屋根の修理頼むぞ」
「釘」なる鉄を「ハンマー」なる物で木の板で打ち込む。
こういう経験は初めてなので新鮮だった。
「黒ーっ! これでいいんだよなーーっ!」
「ああ、よくやった! それじゃあ降りてこい、夕食だ!」
「なあ黒、やっぱり俺、旅に出る事にしたよ」
「どうした急に。何かあったのか?」
「さっき、木材を買いに行った時、兄さんと出会ったんだ」
「……まさかイデアか?! こんなところで会う事になるなんてな……」
「正直兄さんが俺をつけまわしてるのかとも思ったさ。……んで、兄さんと一戦交えたんだ。……背水の陣すら使わずにボコボコに叩きのめしたが、その後帰りながらこう思うようになったんだよ。
……全力で戦える相手がほしい、命と命のやりとり、命をかけた戦いをできるようなヤツと出会いたいって……! 心の底から、戦いたくてウズウズしてるんだよ……!」
戦いたい。しのぎを削り、命を尽くして戦いたい。今の俺にはそんな感情しかなかった。
「戦う事こそ生きる意味」などと言い、戦う事を自分自身に対して、脅迫じみた義務として押し付けていたあの頃とは、違う感情だった。
———いつからだろうか、『痛みがなければ生きられない』と、そう思い始めたのは。
それにしてもボコボコにした、は言い過ぎだろうか。
「5ヶ月前には戦わないとか言っていたくせに、いっぱしの口を聞くようになったもんじゃないか」
「……ああ、だから、ここに居座るのは今日で終わりにするよ」
「……んふ、まあお前の人生だしな、好きにしろと言ったのは俺だ。それに俺の負担も減るしな。
さ、明日からはまた歩く事になるぞ。もう夜9時。また旅に出るなら今日はもう寝た方がいいんじゃないか?」
「……そうだな、明日に備えて心の準備もしなきゃならないしな」
「サナとも……会う事になるだろうしな」
「……それじゃあ、おやすみ。このまま寝るよ」
ベッドに潜り、目を瞑り意識をシャットアウトする。
例の「白の世界」に入ったまま半覚醒の意識を保つ。
……いや、これって前みたいに寝れないのか?
◆◆◆◆◆◆◆◆
……だなんて思いながら半覚醒のまま仮眠のような睡眠をとっていたら、いつの間にか朝になっていた。
「……あ」
元から意識は半覚醒だったのでスパッと起きれた。
……そもそも、あまり睡眠をした、という自覚が持ててない、が。疲れ果てていた頭は完璧に休めていた。
「黒は起きてないけど、もう行くか。俺は———」
俺は、俺は、やっぱり待ちきれないんだ。
刀を携え、荷物を取り、靴を履き、ドアを開け外に出る。
……ん?
刀が……欠けている……?
まさか、度重なる打ち合いで欠けた……?
「概念封印、解除」
木の部分が剥がれ落ちる。
「やっぱりだ」
刀身。その白銀に煌めく真剣すら、一部が欠けていた。
……おっと、これは。またまたやるべき事が増えてしまったみたいだ。
いくら神核が、概念が付与されているとは言え、元はただの刀。こうなる事はとうの昔に分かりきっていた。
そっと木のドアを閉め、
「さよなら」
と呟き、ツリーハウスを後にする。
……ありがとう、俺を1年間、見守っててくれて。
……今日サナと会う為の心の準備を、昨日したばかりだってのに。
東に歩き始めた後、どのくらいの日々が経っただろうか。
◆◆◆◆◆◆◆◆
ただ……俺が歩いている間、日が沈んだ回数は約120回。
……つまり、つまりだ。
単純計算だが、俺は……
4ヶ月間歩いていた!!!!
その間、出会った人の数、2568人!
経由した村の数、14!
王都への道を聞いた回数、138!
———王都は、影も形もない。
何度聞こうと、何度方角を合わせようと、次の村に着くときには既に王都への方角は違う方角へと向いていた。
どこに進み続けているのかも分からないまま。
もう、半ば放心状態になりながらただひたすら東に歩き続ける。
「……え?」
あまりの衝撃に思わず声が出る。
朦朧とし始めた意識を保ち必死に東に歩いていたが、木と木の間を抜けた先。見えた景色は。
「……は?」
見えた景色は、海であった。
一面に広がる赤。波1つ起こさぬ凪の体現。その中央には———大きな孤島が。
……そう、海は赤色だ。1000年前の終末戦争で、赤く染まったとか何とか。
「……ああ……俺、ついに死んだんだな」
……東、東と、東に行けば王都に着くと思っていた。
……だが、王都は意外にも小さかったんだろう。
なんせ何度方角を聞こうったって、全くもって王都が見つからないのだから。
どうやって、この状況を脱出しろってんだ。
目の前の崖の下には一面の赤い水。
4ヶ月ずっと陽の光に当てられていたせいで、いっそ海に飛び込んでやろうかとも思ってしまった。
「……ん?」
よく見ると、左の崖沿いの道には木製の古びた看板が。
看板に彫られた文字を見る。
「なになに……5km先……カンメ村……?……カンメ村……?! 村……!」
やった……、ようやく村だあ、食糧だ!
前の村から離れ約6日。ここに至るまでに雑草と湧き水を所かまわず摂取し続けた矢先の、この光景。
なんで俺は、前の村で食糧を買ってこなかったんだ、などと今更ながら後悔しながら村に向かって走り出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇
え゛゛、村?
5km先、と書いてあったが、体感500mくらいだっただろう。
村、などと謳っておきながら、家中に蜘蛛の巣が張り付けられており、出歩く人もおらず、果ては井戸も水がなくなっている。
……ああ、これが限界集落ってやつか。
———もしも、もしも今願いが叶うなら、
俺に……食糧をくれ。
「俺に、食糧をくれーーーーっ!!」
「なんじゃ、うるさいのう」
と。家から出てきたのは老婆だった。
「そこのガキ、名を言え」
「え……えっと……俺の名前は白で———」
「ハッ! お前今、嘘をついたのう……」
「嘘?! 嘘って何を……」
そりゃあそうだ、俺の名前を言えと言われたから、あくまで言ったまでなのだが……
「お前の名前じゃよ。概念登録されている真名を言えと言っておるんじゃ!」
概念登録……つまりは生まれてくる時に名付けられた本名を口にすればいいと?
「え……えっと……アレン・セイバー……?」
「多分それじゃな———……セイバー、か…………全く、近ごろの若いもんはす~ぐ嘘をつく」
「は、はあ、すいませ———」
「それで、食糧か? 悪いが、この村はもう終わりじゃ。食糧なんて何1つないわい」
唐突の説教、唐突に突き付けられる事実。
……この村は終わり? 魔王軍にでも襲われて……いや、どこにも血痕はないし、多分それはないだろう。
ではなぜ食糧がない? 老婆が隠してるのか?
「仕方ない、お前が迷っておる様じゃから言ってやるがの、この村は30年前に廃村になった。わし以外誰もここにはおらん」
「えっと……じゃあなぜ、貴方はここに……」
「行くあてがないからじゃ」
「食糧がないってのは……」
「お前、魔力で感じられないのか? わしは純粋な魔族にして魔王軍幹部じゃ。食糧なぞなくても生きれるわい」
「魔王軍……幹部?!」
……まさかの幹部、襲来である。
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