Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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再会と再開

(おそらく)感動の再会

「え……って事は、貴方が……?」

 この老婆が、村をめちゃくちゃに……?


「わしじゃない、わしはただこの村に住みついただけの無害な魔族じゃ! 魔王とも縁は切っておるわい!」

「は……はあ……」



「さあさ、分かったら早くどっか行け! わしは1人で暮らしたいんじゃ!」



「そ……その前に、この近くに」

 そこまで言うと老婆は何かを汲み取ったのか、崩れた教会の様な場所を指差し、



「こっからそこの角を曲がったとこの道をそのまま道なりに進めば、もう1個村がある!……そこに行くがよい、希代の救世主よ」


 ……あれ? 今この老婆、なんて言った?
「希代の救世主よ」確かにそう言ったのか、俺に向かって??


「分からないなら気にしなくていいわい、そら、早く行かんとどうなっても知らんぞ」

 ……なぜ早く行かないといけないのだろうか。色々と聞いてみたい事もあったが、腹はきちんと空いてるので先に進む事にした。






「……今代の救世主……わしの予言の子は……ヤツか。……さて、ヤツは魔王に勝てるのやら……」







 道。と言えども、完全に道なき道、的な感じだった。

 少し草が禿げ、黄土色の土が出てきたところが道 (と言われるようになったもの)みたいな感じで、お世辞にも舗装されているとは言い難いものであった。

 だが、老婆が村と言ったものの正体が徐々に見えてくる。

 さっきの廃村とは打って変わって、家はあった。

 人もいて、活気のあるような村だった。森も開けていたし、特別丘の様な高い場所もなかった。




 しかし、異常は村の中心。
 村の中心周りには武装した勇者や魔術師、人界軍の騎士がおり、かなりの人だかりができていた。

 何かあったのか、と人混みを掻き分け、落ちていた灰色の布を着て走る。
 すると。開けた人混みの背後には、鉄の足場が。



 ……その下には、地下何メートルも続くような大穴が掘られていた。



「……なあおい、この穴なんなんだ?」

 人混みの中に紛れ込み、恐る恐る、横の赤髪の勇者に話しかける。
「え? まさかお前、依頼で来たんじゃないのか?」

「依頼……いや、通りすがりだが」

「マジかよ……でもその風貌から見て勇者なんだろ? ま、頼りにしてるぜ」

「ってか、あの穴は何なんだよ?」

「依頼じゃないなら教えてやろうかな……あの穴にはな、ロボットが埋まってたんだよ」

「ロボット?」

「そう、鉄の塊。分かりやすく言うなら鉄ゴーレムさ」



 ゴーレム。古代遺跡ダンジョンなどでよく見つかる岩の自律型移動兵器である。つまり、そのゴーレムの鉄バージョンか?

「んで、発掘作業を行うから、目覚めて動きだした時の為に俺たちはここにいるんだ」

「なるほど…」


 ……つまりロボットは目覚めると。
 よく穴の下を覗いてみる。
 暗く深く、光も届かない漆黒にソレはあった。
 暗黒の中で1つ輝く鋼の図体。
 鉄は形を成し、筒状になっていた。



「ちなみに、発掘作業つったって、どうやって持ち上げるんだ、あんなの?」

「そりゃあ、魔術による念動力に決まってるだろ」


 ……なるほど、どうりで魔術師が多いわけだ。
「……一緒にいていいか?」

「ああ、もちろん」

 ……なんだか聞いたことのあるような声だった。



 
 なんて話してると、魔術師達が一斉に念動力を使い始めた。
 紫色に可視化された魔術師達の魔力がゴーレム(?)を覆い、そのまま持ち上げる。
 始めの頃は筒状になった鉄しか見えなかったが、持ち上げられてその全貌が見えてきた。

 筒状の身体には足のような太い突起が左右合わせて2つあり、太い突起にはそれぞれ3本ずつ小さな突起が付いていた。
 雲の隙間、陽の光が差し込む。



 ———すると。
 筒状の身体から、球体状の単眼のようなものが姿を現す。

 鉄の球体自身には球体に反るような形で丸の模様が彫ってあり、その中心には今にもビームを放ってきそうな感じの赤く塗られた丸模様。

 ……って言うか、完っ全に物理法則を無視して浮いている球体に対して、誰も突っ込まないのは何でなんだ?
 ……と。



「---活動再開。命令通リ破壊行動ヲ行イマス---」

 ……なんだって? 破壊……?!
「---個体名:<汎用人知移植型兵器アミュエスト>起動。搭乗者:なし---」

 突如響き渡った中年男性のような機械音声。
 何事か、全くもってわけが分からなかったが、皆は既に武器を構えていた。


 と。念動力が途絶したのか、ロボットは猛スピードで、穴の底目がけ落下する。

「大丈夫……なのか?」

 赤髪の男は俺に質問してくる。



「大丈夫か……と言われると俺に分かる話じゃない、が。戦う準備だけはしておけと言っておく……!」


 次の瞬間。
 立っていられなくなるような揺れが村を襲い、その時、穴から姿を現したのは。



 とてもあの図体ではできそうにないほどに飛び跳ね、穴から飛び出てきたロボットであった。

 しかもしれっとロボットの左右に1つずつ、ちょこんと浮いてる手のようなものまでついて来ている。

 あまりにも無機質すぎるロボットの発声に戸惑ってはいたが、この時俺はある勝機を見出していた。

 あの何メートルもある穴からロボットが飛び出てきたという事は、あのロボットは見た目に反して軽い、という仮説を立てる事ができる。つまり、恐らく装甲は薄く、今の俺の刀でも両断できるくらいにはあると言う事……!

 ヤツは「破壊行動を行う」だか何だか言っていたから、恐らく破壊する以外で止める事は不可能……

 ならば……!


 布を脱ぎ捨て、刀の概念封印を解除する。

「つああああああっ!」

 木刀の中から現る真剣。
 こいつでヤツを両断してみせる……!



「……あれ、お前その白髪……まさか……」

「すおりゃあああっ!」



 一瞬のうちに跳び上がり、逆光で眩しく輝く鋼を見据える。
 そのまま振り下ろして、フィニッシュだ……!

「---敵性反応アリ---」


 ……ん? 手ごたえが……重い??


 ……俺は、俺は確かにヤツを上から下に目がけて両断……しようとしたはずだ。
 だが。だが、……まあ、さっきの仮説は間違っていたらしい。


「何……だと……?」

 振り下ろしたはずの刀はヤツの鋼の縁で完全に静止していた。
 瞬間。
「なっ?!」

 浮いていた単眼から光が放たれる。
 地面に向かって一直線に放たれたそれは、まさにビームと呼ぶに相応しいものであった。

 ビームは撫でるように地を焦がし、次の瞬間、ビームの通った後がオレンジ色に膨れ上がり、
     



 ———爆発した。



 まるで炎のように赤く、膨れ上がった地面だったものは、その地に地獄を作り出した。

 身を焦がす熱風。突発的な強風。
 幸いビームに直接当たった者はいなかっただろうが、間近でその爆発を受けた者はただじゃ済まないだろう。

 ———んで、次にヤツが狙うとすれば。


 赤い光がこちらに向けられる。
 すかさず鋼を蹴り、地上へと落下する。

 幸いビームには当たらなかった。が、これ……どうするんだ?


 着地と同時に思考を巡らせる。
 俺の刀でも斬れない……傷1つつかないとなると、一体どうやって勝てばいい?

 ……いや、全くもって勝てるビジョンが浮かんでこない。
 もう魔法やらなんやらで消し炭にするしか……






「……い!」

 思考に集中していた俺を何かが呼んでいる。

「おい! お前、お前白だろ?!」

 呼んでいたのは、先程まで話していた赤髪の男だった。



「ああ、白……だけど?」

「お前……死んでなかったのか……って、俺の事分かるか? 俺の事!」

「赤髪……まさかガスか?」

「そう! そうだよよく覚えててくれたな!」

「……おいおい、今はそんなの気にしてる場合じゃないと思うぞ!」

「そうだよな、白でも斬れなかったんだ、俺には逃げる事しかできないけど」



 ……と。またもや大きな振動。
 横を見ると、ロボットが着地していた。
 どういう仕組みかは分からんが、筒状の身体の下についている小さな足らしき突起で立っているようだった。

 反対側を見てみると、一斉に魔力を込め始めている魔法使いたち。

 恐らく一斉攻撃で消し炭にしようとしているんだろうが、俺の刀神威で斬れなかったんだ、流石に火力不足感が否めな———、


「エクスプロージョンっっっ!!」

 瞬間。
 上空から叫び声。何事かと真上を見上げると、そこには1人の女魔法使いが。


 ……にしても、今の声、聞いた事があるような声だったような……?

 1秒後。ここら一帯を何らかの影が覆う。
 直上。現れていたのは、巨大な魔法陣。
 ……まて、もしかしてここを爆破するつもりか?!

「白、逃げるぞ! この場にいたら死ぬ!」
「言われなくとも……!」

 一目散に勇者たちが逃げていく中で、ロボットは1体、動く事なくその場に佇んでいた。



 次の瞬間、大気は轟音を響かせ、地表にて爆発。
 当然ながら、飛び散った岩盤の破片は各地に飛び散る。当然ながらじきこちらにも来るであろう。

 ……おいおい、どうすんだ。後始末どうすんだよ。んでどうやってあのロボットに勝つんだよ……!
 ……と。

「白、上見ろ、上! 破片が!」

 真上には猛スピードで落下してくる岩の破片が。


 ガスは既に俺と離れた位置にいたが、俺は、俺は死ぬ事をいち早く察した。
 いくら落ちてくる破片とはいえ、背水の陣を使って動体視力を上げなければ斬る事はできない。

 背水の陣を使う為に集中する時間もなければ、魔力障壁を構築する時間も、ここから跳び去る時間もない。



 破片が俺に激突するまでのおよそ0.5秒。その間に俺はここまで思考を巡らせていた。……まあ、その思考もすぐに無駄になるのだけれども。


 風を切る音がした後、頭上では激突音。俺の頭は破片に激突して木っ端微塵に……なってない?






 目を開け、上を見上げるとドーム状の魔力障壁が。
 あーあ、やっぱりさっきの思考は無駄になってしまった。




 ……そして俺のすぐ横には、杖を突き出し魔力障壁を維持しているサナの姿が……ってあれ?
 何で……サナが……ここにいるんだ……?



「……ハア、怪我はなかった?……もう貴方、次は気をつけてよね、私だって他にも色々あって……」

「あ、どうも、白……だよ?」

「……え?」

「……うん」

 感動の(?)再会である。
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