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ブレイバー
徹底抗戦
********
その頃。外にて。
「……おいっ! 魔術要員はもういないのか?!」
「白兵戦で黒騎士に勝てるわけないだろ!!」
未だに外では蹂躙が続く中、充分に休養をとったサナは、ようやく出撃する準備を終えた。
サナは目覚めてからと言うもの、全ての状況を把握していた。
********
微弱だが鍛冶屋にて反応していた白の魔力。
白はおそらく休んでいる……のだろうか?
だ……とすれば、私がやる事はただ1つ。
「……白が元気になるまでの時間稼ぎ……って訳ね」
誤解であったが、嬉しい誤解であった事にはサナは後で気付く事となる。
……多分、今の白だったら、ここで行かないなんて事を選択することはないだろう。
ここで行かなければ、ここで戦わなければ、休んでいる白に怒られてしまう……だろうから。
「フリーズクリスタルっ!」
まずは凍結魔法でヤツの動きを止める。
「なんだなんだ?」
「援軍……なのか?」
「あんなか弱い女の子があんな魔法を使える訳……ない……よな?」
ザワザワし始めてきたが気にしない。思考はますます青に染まる。
考えるは魔法のイメージのみ。
とりあえず、時間稼ぎならこのまま放置しておいても大丈夫な気が……しなかった。
次の瞬間、黒騎士を包み込んだ氷塊は一瞬にして砕け散る。
……まあ、そりゃあそうでしょう。
何だって相手は魔王軍幹部最強の一角、黒騎士。
そうやすやすと時間稼ぎなどさせてくれるはずもなく。
「素晴らしい魔力だった……がしかし残念だが無意味だ」
既に黒騎士は眼前まで迫っており。
「……!」
急いで即興の魔力障壁を張るが、そんなものヤツの前では紙きれ同然に斬り捨てられる。
「ウソ……でしょ? どうやって応戦すればいいって言うワケ?!」
何とか氷魔術等で壁を作りヤツから逃れようとするものの、劣勢、防戦一方な形勢は変わらず。
「サイクロン!」などと唱え、弱小な下位魔術で黒騎士に攻撃した勇者たちもいたが、そんなちっぽけな魔術じゃヤツには勝てない。
絶対的な防御力、他の追随を許さぬスピード、地をも砕くパワーの掛け算。
「……何よこれ、絶対勝てない……じゃないのよ!」
今すぐにでも地団駄を踏んでやりたかったがそんな時間などとうの昔にかき消えた。
……と、
氷で作っていた壁の後ろに黒騎士がいない事に気付いた瞬間。
同時に横から大剣が猛スピードで迫り来る。
何とか魔力障壁を張れはしたものの、大剣が魔力障壁に接触した瞬間、魔力障壁は歪曲し、衝撃の緩和された痛みが自身に伝わる。
「……っっ!……ぁ……ぁあっ!」
横腹に一発、まともに打撃を加えられたかの様な衝撃。
なす術もなく地面に倒れ込む。
勝負は……たったの数分で幕を閉じた。
時間稼ぎなど言えるような実力ではなかった。
再度目を開け、横たわった無数の勇者たちの遺体を視界に入れる。
「……あ、あ~あ、馬鹿は私も、じゃない……」
己の非力さを恨みながら。自滅しにいった事を後悔しながら。
「私は出来る」などと思い込んだ自分に腹を立てながら、それでも痛みに喘ぎ地を這いずる。
「自分は特別だ」「自分には魔術の才能がある、だからこそ困ってる人を助けなきゃいけない」
くだらない義務に囚われながら。自分で己に課した使命に溺れながら。
血反吐吐いて、それでもなお、「何か」の為に生きようとする自分には、文字通り反吐がでる。
無言でこちらに近づくのは、大剣を担いだ黒騎士。
……恐らく、私を殺しに、私にトドメを刺しにきた……んだろう。
どうにか必死に身体を起こそうとする……が、力が入らない。
「……なるほど、ここが私の……墓場ってわけね……」
「無駄話はしない、ただただ絶命しろ」
……自分の命が終わる刹那、あったのは無。
死への恐怖と、圧倒的な絶望、そしてもう2度と、白には会えなくて、なんだかんだあって楽しかったあの旅も、もう2度とできない事への悲しみ。
その全てが混ざり合った結果、もう思い残す事もなくなった。
「……生まれ変わったら……もっと、楽な人生を歩みたいなぁ……」
……もしも、願いが叶うなら。
他人を救う、など馬鹿げた理想など掲げず、勇者という責務、魔王を討伐するという責務などない、楽な人生が、どうせなら歩みたかった、と。
息も絶え絶えの少女は願った、ほぼ同時に。
カツン、と。小さな石を床に落下させたような、高くしかし軽い音。
一瞬、ほんの一瞬のみ、黒騎士の思考はそちらへ傾く。
「例の爆剣」ではないか、と思ったからだ。
しかし、ソレは爆剣ではなく。
瞬時に、私の生存本能は働いていた。
「エクスプロージョンッ!」
枯渇寸前の魔力量で放った最上位爆裂魔法。
いくら倒せずとも、あの距離で食らえばまともにはいられないはずだ……!
……だなんて思っていたら、既に私の体は舞い上がっていて。
苦痛でどうにかなってしまいそうな腹を捻り、落下と同時に杖を使い受け身を取る。
「あ……はは、よかった……!」
……そこにいたのは、白と同じような目をした少年で。
腰には剣を。手にも剣を持っていた。
……そんなに持って何をするのか、と思ったが、よく見ると黒騎士の背後には剣が。
……つまりこの少年が剣を投げ、注意を引きつけてくれた、と。
「……大丈夫ですか? ケガはないですか?……って、あれだけうずくまってたんですからケガくらいありますよね、ハハ」
「ごめん、貴方のお陰で……助かったわ……それじゃあ貴方は逃げて……」
「えっと、それは……無理、ですね」
……マジ? 本気で言ってる?
いやいや、特別な身体能力があるって言うなら話は別だけど、この子魔力の質も量もほぼ最低レベルじゃないのよ! 白ともタメ張れるレベルの!
魔気だけを受け取ってても分かるわ……この子明らかに『弱い』のよ……!
「い……いや……無理って言われた……って、アレに勝つ方が無理……じゃない?」
「無理と分かっていてもやらなくちゃならない時がある。って、ある勇者さんが教えてくれたんです。……もちろん、僕じゃアレには勝てません、……でも」
……でも。
『お前が憧れた人のように、何かの為に命を張れるやつが、勇者だよ』
……センはあの時の、言葉を思い出す。
「……やるしかないんです。僕は、僕自身が勇者になる為に。そしてあの勇者さんに、希望を繋ぐ為に!……そう生きて死んでいったのが、僕の憧れていた人ですから!」
「無理と分かっていても……そうよ、そうよね私! 今までだってそうやってきたんだから、今回だってきっと上手くいくはずよね!」
諦めムードだった思考は、勝ち筋を探す為の思考回路へと切り替わった。
「……今、鍛冶屋である秘密兵器を作ってるんです。……その兵器が出来上がるまでの時間稼ぎ、お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろん。救われた命だもの、何だって使ってあげるわ!」
「一応ですが、目的はヤツを倒す事じゃなくて時間稼ぎです。……だから、何か拘束系の魔法があればいいんですが……」
「魔法なら私に任せて! 大体できるから!」
その頃。外にて。
「……おいっ! 魔術要員はもういないのか?!」
「白兵戦で黒騎士に勝てるわけないだろ!!」
未だに外では蹂躙が続く中、充分に休養をとったサナは、ようやく出撃する準備を終えた。
サナは目覚めてからと言うもの、全ての状況を把握していた。
********
微弱だが鍛冶屋にて反応していた白の魔力。
白はおそらく休んでいる……のだろうか?
だ……とすれば、私がやる事はただ1つ。
「……白が元気になるまでの時間稼ぎ……って訳ね」
誤解であったが、嬉しい誤解であった事にはサナは後で気付く事となる。
……多分、今の白だったら、ここで行かないなんて事を選択することはないだろう。
ここで行かなければ、ここで戦わなければ、休んでいる白に怒られてしまう……だろうから。
「フリーズクリスタルっ!」
まずは凍結魔法でヤツの動きを止める。
「なんだなんだ?」
「援軍……なのか?」
「あんなか弱い女の子があんな魔法を使える訳……ない……よな?」
ザワザワし始めてきたが気にしない。思考はますます青に染まる。
考えるは魔法のイメージのみ。
とりあえず、時間稼ぎならこのまま放置しておいても大丈夫な気が……しなかった。
次の瞬間、黒騎士を包み込んだ氷塊は一瞬にして砕け散る。
……まあ、そりゃあそうでしょう。
何だって相手は魔王軍幹部最強の一角、黒騎士。
そうやすやすと時間稼ぎなどさせてくれるはずもなく。
「素晴らしい魔力だった……がしかし残念だが無意味だ」
既に黒騎士は眼前まで迫っており。
「……!」
急いで即興の魔力障壁を張るが、そんなものヤツの前では紙きれ同然に斬り捨てられる。
「ウソ……でしょ? どうやって応戦すればいいって言うワケ?!」
何とか氷魔術等で壁を作りヤツから逃れようとするものの、劣勢、防戦一方な形勢は変わらず。
「サイクロン!」などと唱え、弱小な下位魔術で黒騎士に攻撃した勇者たちもいたが、そんなちっぽけな魔術じゃヤツには勝てない。
絶対的な防御力、他の追随を許さぬスピード、地をも砕くパワーの掛け算。
「……何よこれ、絶対勝てない……じゃないのよ!」
今すぐにでも地団駄を踏んでやりたかったがそんな時間などとうの昔にかき消えた。
……と、
氷で作っていた壁の後ろに黒騎士がいない事に気付いた瞬間。
同時に横から大剣が猛スピードで迫り来る。
何とか魔力障壁を張れはしたものの、大剣が魔力障壁に接触した瞬間、魔力障壁は歪曲し、衝撃の緩和された痛みが自身に伝わる。
「……っっ!……ぁ……ぁあっ!」
横腹に一発、まともに打撃を加えられたかの様な衝撃。
なす術もなく地面に倒れ込む。
勝負は……たったの数分で幕を閉じた。
時間稼ぎなど言えるような実力ではなかった。
再度目を開け、横たわった無数の勇者たちの遺体を視界に入れる。
「……あ、あ~あ、馬鹿は私も、じゃない……」
己の非力さを恨みながら。自滅しにいった事を後悔しながら。
「私は出来る」などと思い込んだ自分に腹を立てながら、それでも痛みに喘ぎ地を這いずる。
「自分は特別だ」「自分には魔術の才能がある、だからこそ困ってる人を助けなきゃいけない」
くだらない義務に囚われながら。自分で己に課した使命に溺れながら。
血反吐吐いて、それでもなお、「何か」の為に生きようとする自分には、文字通り反吐がでる。
無言でこちらに近づくのは、大剣を担いだ黒騎士。
……恐らく、私を殺しに、私にトドメを刺しにきた……んだろう。
どうにか必死に身体を起こそうとする……が、力が入らない。
「……なるほど、ここが私の……墓場ってわけね……」
「無駄話はしない、ただただ絶命しろ」
……自分の命が終わる刹那、あったのは無。
死への恐怖と、圧倒的な絶望、そしてもう2度と、白には会えなくて、なんだかんだあって楽しかったあの旅も、もう2度とできない事への悲しみ。
その全てが混ざり合った結果、もう思い残す事もなくなった。
「……生まれ変わったら……もっと、楽な人生を歩みたいなぁ……」
……もしも、願いが叶うなら。
他人を救う、など馬鹿げた理想など掲げず、勇者という責務、魔王を討伐するという責務などない、楽な人生が、どうせなら歩みたかった、と。
息も絶え絶えの少女は願った、ほぼ同時に。
カツン、と。小さな石を床に落下させたような、高くしかし軽い音。
一瞬、ほんの一瞬のみ、黒騎士の思考はそちらへ傾く。
「例の爆剣」ではないか、と思ったからだ。
しかし、ソレは爆剣ではなく。
瞬時に、私の生存本能は働いていた。
「エクスプロージョンッ!」
枯渇寸前の魔力量で放った最上位爆裂魔法。
いくら倒せずとも、あの距離で食らえばまともにはいられないはずだ……!
……だなんて思っていたら、既に私の体は舞い上がっていて。
苦痛でどうにかなってしまいそうな腹を捻り、落下と同時に杖を使い受け身を取る。
「あ……はは、よかった……!」
……そこにいたのは、白と同じような目をした少年で。
腰には剣を。手にも剣を持っていた。
……そんなに持って何をするのか、と思ったが、よく見ると黒騎士の背後には剣が。
……つまりこの少年が剣を投げ、注意を引きつけてくれた、と。
「……大丈夫ですか? ケガはないですか?……って、あれだけうずくまってたんですからケガくらいありますよね、ハハ」
「ごめん、貴方のお陰で……助かったわ……それじゃあ貴方は逃げて……」
「えっと、それは……無理、ですね」
……マジ? 本気で言ってる?
いやいや、特別な身体能力があるって言うなら話は別だけど、この子魔力の質も量もほぼ最低レベルじゃないのよ! 白ともタメ張れるレベルの!
魔気だけを受け取ってても分かるわ……この子明らかに『弱い』のよ……!
「い……いや……無理って言われた……って、アレに勝つ方が無理……じゃない?」
「無理と分かっていてもやらなくちゃならない時がある。って、ある勇者さんが教えてくれたんです。……もちろん、僕じゃアレには勝てません、……でも」
……でも。
『お前が憧れた人のように、何かの為に命を張れるやつが、勇者だよ』
……センはあの時の、言葉を思い出す。
「……やるしかないんです。僕は、僕自身が勇者になる為に。そしてあの勇者さんに、希望を繋ぐ為に!……そう生きて死んでいったのが、僕の憧れていた人ですから!」
「無理と分かっていても……そうよ、そうよね私! 今までだってそうやってきたんだから、今回だってきっと上手くいくはずよね!」
諦めムードだった思考は、勝ち筋を探す為の思考回路へと切り替わった。
「……今、鍛冶屋である秘密兵器を作ってるんです。……その兵器が出来上がるまでの時間稼ぎ、お願いしてもいいですか?」
「ええ、もちろん。救われた命だもの、何だって使ってあげるわ!」
「一応ですが、目的はヤツを倒す事じゃなくて時間稼ぎです。……だから、何か拘束系の魔法があればいいんですが……」
「魔法なら私に任せて! 大体できるから!」
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