Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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C・C・C(カーネイジ・クライシス・クラッシャー)

シグマドライヴ/ザ・オールマイティ

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********

 放たれた衝撃は全てを揺るがし、魔導大隊の位置する城壁をも砕く。



 ……その砂塵の中で。
 城壁にて傍観を続けていたサナとコックは、「絶対に見たくなかったモノ」を目にしてしまった。

 兵は、全て殲滅した。
 今の衝撃で、敵味方問わず、誰1人残さず吹き飛ぶ。
 ……イデアの、そしてレイの安否が心配になるところだが。



 バゴリと音を立て瓦解する城壁。

「退避、魔導大隊、退避! 白兵戦、用意!」

 不安定になった足場が崩れ落ちる。


「サナ様、あなたは私がお守りします」
「ありがとう、コック……ただ、これは一体何……?」

 翼を広げたコックに抱き抱えられながら、状況を伺う。
 ……なぜ、城壁は瓦解した……?
 いくらあの爆裂魔法とはいえ、ここに直接打ち込んだわけじゃないはず……







 ———その答えが、2秒後に明らかとなる。



「会いに来たゼェ、お嬢さん!」


「……コック! 天撃でも何でもいいから追い払って!」
「承知しております……!」

 爆煙に辺りが包まれる。しかし、




「……オレの、勝ちだな」

 既にその鉄の右腕を振り上げた、クラッシャーがそこにいた。





 その巨腕が振り下ろされ、コックが形成していた魔力障壁のドームごと、地面に叩きつけれる。



「がぁっ!…………ごめんコック、ありがと……もういいわよ、魔力障壁は。その代わり、コックも一緒に戦って……!」

「もちろん、私も戦いたくて胸が高まっております!」

 ……あれ、コックってこんな戦闘狂のキャラだっけ。





「終わりだゼ、お嬢ちゃん!」
「負けてられるもんですかあっ!」

 史上最大の激突が今———始まった。



「……錬成開始ビギンズクラフト!」
「おらぁっ!!」

 咄嗟に出来上がった氷の膜が、その巨腕によって砕け散る。



 だがしかしこれは序章に過ぎない。
「幻想顕現、『メタル・クライシス』!」

 幻想顕現魔術。


 思い浮かべたものを、そっくりそのまま現実に映し出し、魔力でそれを形作る魔術。


 ……がしかし、私が思い浮かべたのは、クラッシャーの神技ジル、『剛鉄襲来メタル・クライシス』。

 クラッシャー本人、そのものを形作る概念自体になんとか干渉し、その神技を完全完璧にコピーする……! というか意地でもしてみせる……!





「同じ手を使っても、1人じゃオレには勝てないぜ……?」

「誰が私1人って言った……ワケ?」

 ———神技ジル。人の身体のエネルギー、原動力たる『神力』を用いて発動できる、その人固有の超能力。

 ……クラッシャーのものは、鉄を操作できると言う簡単なものだった。

 迫り来る巨腕を、鉄のカーテンで凌ぎきる。
 しかし、この後。
 防戦一方では始まらないが為に、その為にコックがいる……!




「天殺撃……これで終わり……です……!」

 既にその身体には、コックの手が添えられており。



「何だと……!」

 そのまま、コックの全身全霊の一撃によって、クラッシャーの身体は細胞1つ残さず吹き飛んだ。













 ……かのように、思われたが。

「ちくしょうっ、なんてデタラメなアッ!」

 その身体は、既に鉄へと変化していた。
 首から頭にかけては、未だ人のままであったが。




「最初から……首から下は偽物ってことね……!」

「まさか気付かなかったのか? 俺の真名概念にまで侵入しておいて!」

「私にとってもうかつだったわ…………ハッ、コックは……!」
「……この、鉄クズ人形の事か?」






 天殺撃。
 その一撃は、文字通りコックの全身全霊を賭けて行われる、最強の一撃。
 無論、一撃で仕留めきれなければ、こちらが動けなくなり、殺される。

「コック!」

「サナ……様……お逃げくだ……さい……よかったです、この短い期間でも…………みなさんと一緒にいれて……」

「何別れの言葉告げてるの!…………そんなの、許す訳ないでしょ……!」

 クラッシャーの真上へと跳び上がる。

「ここで……決着をつける……!」





 ———瞬間。
 腹部に電撃。
 腹部より神経を伝わって響いたソレは、間違いなく「痛み」であった。






 コックが天殺撃を試みていた頃。
 城壁だったはずの瓦礫から見下ろしていたのは、白だった。

********


「……コック、アイツ……!」

 






 ……だが。
 その光景。
 2秒に満たない僅かな時間に巻き起こったその展開に、俺は戦慄しながらも、


 ———激怒していた。




 首を掴まれ、既にボロボロなコック。
 跳び上がったが最後、腹部を鉄の針にて貫かれたサナ。

 赤い、赤い、無情な痛みと、涙と血がこぼれ落ちる。

「……やめろ」

 目より光がなくなり、完全に力を失ったサナ。

「……やめろ……!」


 力無く落下してゆく様は、まるで先程の涙を表しているようで。



「やめろぉぉぉぉぉっ!!」



 地を蹴り、全てを終わらせる。
 これで最後だ。
 絶対にケリをつける……!
 確実に、正確に、迅速に、苦痛を与えて、殺す!

「次から次へと……くたばり損ないが邪魔をするなぁっ!」

 突進してくる38本もの鉄の針。
 避けれるはずもなく。


 その全てが、俺の身体に突き刺さった。
 心の針が、その全てが、俺の身体に。










『アダム・セイバー、認証』

 瞬間、辺りの景色より色が消え去る。
 全ての生命体、そしてそれに起因する魔力、神力の流れも全てが静止する。
 針すらも、衝突する寸前でその動きを止める。
 ———『白の世界』へと。






◆◇◆◇◆◇◆◇




 
 ヘンに、落ち着いた気分だ。
 さっきまで、あんなに怒り狂っていた、というのに。

「気に入ってくれたかい? 全知全能ザ・オールマイティは」

 そんな全ての時が静止した世界で動けるのは。
 やはりというか、俺のみだった。
 つまり、コイツは……

「お前は……俺か」
「キミであってキミではない。僕の名前はアダム・セイバー、人類のであり、であり、キミのさ」

「……つまりお前が、俺の食人衝動を引き起こしていたのか。

 俺の中にいた、俺ではない俺———それはお前だったのか、アダムとやら……!」

 と、少年アダムは顔をしかめる。




「合ってるけど……違うね、衝動は僕の中にもある。僕の、史上初の人間としての欠陥としてね」

「だったらなぜ、それを抑えなかった」

「キミと同じ理由さ。抑えられなかった。

 だからこうしてキミの身体、キミの魂に『・オールマイティ』を介して、転生しているんだよ。

 ……僕はヒトであって———厳密にはヒトじゃない、ヒトだからね、こういうことだってできるのさ」


「……お前の話を全部分かる気はないが……ハタ迷惑な話だな、お前のせいで……俺は今でも十字架を背負わせれてるなんて。

 で、何の用だ、早くしてくれ、どうせこの止まった時間も、永遠に止まったままじゃないんだろ?」



「……何の用……僕の人格が露呈したから、こうしてただ話に来ただけさ。それよりも気をつけた方がいいよ。

 この神力結界『シャットダウン・オブ・ワールド』は、後5秒でこの世界から排除されてしまうからね。


 ……この神技ジルは、君のものだ。……だけど、その根源は。つまり僕にも、コレを制御できるんだよ」



「は、つまりタイムリミットは5秒だけかよ……!」

「身体は、キミだけだけど動かそうと思えば動くから、早くした方がいいよ。……じゃあね、僕はキミの幸福を祈ってるさ」


「ああ、そうかい、今はこんな話してる場合じゃないんだけどなっ!」

 完全に静止し、重力の影響も何も受け付けなくなった身体を揺り起こす。
 既に落下態勢、迫り来るは死の針38本。
 だが、その全てが止まっているのなら。
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