Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
82 / 256
断章Ⅰ〜アローサル:ラークシャサ・ラージャー〜

開幕!魔武道大会!


「……んで、結局エントリーするの? 魔武道大会には」
「もちろん、俺は昔から、戦う事しか生きる理由がなかったからな~…………」





◆◇◆◇◆◇◆◇

 そして。
 各々が胸に秘めた(大抵ろくでもない)覚悟がぶつかり合う決戦の日がとうとう訪れた。



 その日の王都には人が殺到しており、とても街を歩けるような状態ではなかったが、無事に俺たちはエントリーを済ませる。

 まるで壁のように、ギチギチに人が密集していた王都から這い出る。




 センに関しては……ヘンな魔族と獣人……? を連れていたが、どうやら3人揃ってエントリーしたらしい。

 そして配られたのは伸縮性のある素材で作られた鎧。
 鎧を装着した途端、身体を伸縮自在の変質魔力障壁が覆う。

 ……特に動きに不自由さは感じないし、いつも通り戦えるだろう。
 しかも栄養自動摂取機能付き。2週間は何も食べず活動可能であり、他にもチャット機能とか色んな便利な機能があって……



 例を挙げるのなら、この鎧には、大会選手の管理もできるような仕組みになっているらしく、大会開始1日毎に増えていく「禁止ゾーン」に入った瞬間、その選手は脱落する仕様になっている、ってサナが言ってた(魔術式を組んだのはサナであるから知ってる)。


 …………まあそんなこんなあって、大会は正午より始まることに。


 とりあえずその正午までは自由時間という事で、あらためてルールを確認する。

「はい、まず、チームを組む事はOK、何人でもOK。ただし、勝者は最後に残った1人。

 つまり、私たち相手に敵が殺到する事は明らかだわ。チャットで位置情報の共有もされるかもしれない。だからこそ……」

「幻術……ですね、しかも幻想顕現魔術だから、いざ攻撃するまで偽物とは気付かれない……」

 そう、ここは完全にサナに任せる。
 幻想顕現魔術で俺たちのダミー、デコイを作ってもらうんだ。

「さすがサナだな、世界一の魔術師は伊達じゃない」

 サナは得意げに口角を上げる。

「当たり前よ!……で、できるだけ、最後の最後、禁止ゾーンが縮まるまで交戦は避けたいんだけど……」


「そりゃあ、戦うメリットもないしな、それでも戦いたい戦闘狂はいるんだろうけど」

「はあ……イデアは、無視よ。あんなヤツ、勝っても負けてもただただ体力を浪費するだけなんだから」

「場所は……どうします? 村は禁止ゾーンですから、どこかで野宿する事になりますが……」

 センの問いに、一瞬思考を巡らせる。が、その時、サナがあらかじめ考えていたかのように急に提案する。



「黒の家なら、禁止ゾーンにはなってないわよ。いくら栄養は獲得できるとはいえ、腹が減っては戦はできぬ、でしょ、白?」

「……そりゃあそうだが、黒の家に泊まり込むのか……俺たち3……いや5人で」


 サナも、あろう事かそれまで無言だった丸っこい魔族のヤツと獣人の少女も、めちゃくちゃ笑顔で、それも今にも「うん」と言いそうな顔でこちらを見つめてくる。

 ……なるほど、すまん黒、めちゃくちゃ迷惑かけるわ~。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 そうして、高らかに開戦の笛は鳴り響いた。
 西大陸内全358ヶ所から鳴り響いたその笛は、どこにいようと聞こえるものであり、その大会の大きさを指し示すには申し分ない物であった。


 あちこちにてされ始めた村は、この大会内においては禁止ゾーンで、1つ1つ巨大な魔力障壁で覆われている。

 ……しかし、その1歩でも外に出れば、魔術師の闊歩する戦場が待ち構えている。







 1日目。
 とりあえず、出来る限り交戦しないよう黒の家に向かう。

 ……と言っても王都よりはかなり離れており、今日1日のみで着くとは思いがたい。

 だからこそ、人混みを避けてひっそりと、隠密行動を取る必要があった。
 はっきり言って癪だが、これもセンの賞金の、そして強いヤツと本気で戦うためだ、今は我慢我慢……




「おい、アイツら倒せそう、倒さなくていい、の……?」


 細い木の林の影に隠れながら、ひっそりと歩いていた時、俺の服をグイグイと引っ張りそう聞いてきたのは、獣人の少女、くいな。


 センによれば、コイツはセンについてきた訳じゃなく、コックについてきただけらしいが、正直めちゃくちゃ強い戦力にはなれるだろうから連れてきた、との事。

「……もういい、アイ、倒しにいく……」


 ……あれ?
 コイツ本当に戦力……?


「待て待て待て待てえっ、おい! さっき交戦は控えようって言ったばかりだろ! なんでそんなに戦いたがるんだよっ!」

 小声ながら精一杯の声で叫ぶ。

「たたかわない……? たたかうの、ダメ……?」

 ……宝石に寸分違わぬようなつぶらな瞳でこうも見つめられると、やっぱりどーしても許してしまいそうな……ってダメに決まってんだろ!!




 その時であった。

「……くいなちゃん、考えて頑張ろうとしてくれた事は嬉しいけど、もうちょっと我慢しようね?」

 ……この中で、パーティメンバーで唯一女性(機械は除く)であるサナの母性が炸裂したのであった。


 思わずこっちもうっとりしてしまいそうなその声には、流石のくいなも食い下がらざるを得なかった。

「うん……アイ、我慢する……」




 ……ふと思ったのだが、コイツの一人称、「アイ」とかいう変な一人称なんだよな……最初聞いた時は何言ってんだコイツ、ってなったが。



 ……そんなこんなありながらも、何とか接敵なしで黒の家に到着。……が。

「ここ……数時間前から人がいないでヤンスね……」


 と異変を口にしたのは、ドワーフのヤンスだった。

「ヤンス、わかるの?」
「匂いで分かるでヤンス。結構自慢の得意技なんでヤンスよ」

「下等、なドワーフ、にも……有用な点が……存在、した」

「誰が下等でヤンスか?!」

 食い気味に憤慨するヤンスを横目に、サナに質問する。


 ……それは、ある疑問点について。

「人がいない……つまり、黒は数時間前にどこかに行った、って事かよ?」

「……白、最悪の敵が増え……いや、大丈夫か、黒さんはこんな大会に参加しそうにはないし、多分どこかに行ってるんでしょ、知らないけど」



「だよな、よりにもよって黒は参加なんてしないよな……!……って事で、食糧はいただいていきますね……」



「白、は……クズ、不在の人の、家……から、盗むのは、下等の証……」

 ……さりげなく、実に自然に罵倒が飛んできた事に関しては無視を決め込もうと思う。

感想 203

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。