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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
ラグナロクの揺籠
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*◇*◇*◇*◇
全く同時刻。
焼き付けるような日差しが、爛々と鋼鉄の都を照らす最中。
第5機動小隊———人界軍と同盟を組んだ、トランスフィールド諸国の一部が結成した『西大陸東部連合』で構成された部隊。
この第5機動小隊の兵器として、人界軍から配備されたのが、サイドパワースーツとして搭乗することのできる、人界軍専用汎用人型機動兵器『サイドツーmark.2』である。
魔王軍との決戦が終結した後、トランスフィールドは全面的に戦争を停戦し、人界軍との関係が密接になった。
そうして、魔王打倒から、このオリュンポスに至るまでの1年間の間に、『サイドポーツ』という競技が発展した。
この競技自体は、『サイドツーmark.1』、攻撃用兵装を装備していない人型ロボットを用いた球技……だったのだが、対オリュンポス———『エターナル』の完遂のために動いたオリュンポスを攻め滅ぼすため、攻撃用兵装の追加、機動力の向上を目的とした機体が量産されることとなった。
それが僕たち、第5機動小隊の乗り込む『サイドツーmark.2』である。
サイドツー。
魔力もしくは電力にて動く、全長3メートルほどの、人型の構造をとった史上初の機動兵器、サイドパワースーツ。
搭乗者はユニットコンテナなるコンテナに乗り込み、それを骨格のみの機体の中央にはめ込み起動させる。
ユニットコンテナ装着時の外見としては、骨格だけの脚部に股関節部より伸びる六本の鉄の管、その真上にコンテナが位置し、そのコンテナの両脇部から両腕が伸びているという構造である。
人型でありながら顔面がなく、中腹部に視覚の機能を搭載したこの形は、前作機のmark.1よりも機動性を重視したものとなっている(顔面部の重量を削減したため)。
両腕部は骨格のみながらも5本指の手の形状となっており、さまざまな武器を持たせられるという汎用性に富んだデザインとなった。
脚部、足の裏の部分にはローラーがついており、機動性を重視したデザインになっている。これは元々サイドラー自体が競技用として開発された名残である。
……従来の人界軍の兵器から見れば、化け物じみた性能をしているが、あくまでこれは量産機に過ぎない。
———そして、僕の乗っているコレは、その中でも特別に強化された、至高の一品。……まあ、元々もうちょっと高価な僕の専用機だって、あったわけだけど。
『セン!……本当にこっちで合ってるでヤンスか?』
無線より聞こえたノイズ混じりの、ヤンスの声。
「……ああ、うん、間違ってたって建物ぶっ壊せばいいだけだから大丈夫……だと思う」
『強引でヤンスね……まあできかねないところが怖いんでヤンスが……』
「……ヤンス、くいな。……そろそろ目標地点だ。…………兵装準備、一斉掃射の用意を」
『…………セン、いつもに増して……怖いね……』
「そりゃあ……そうだ。ここは戦場だ、気を抜いたら———僕たちが死ぬ。特に、自分自身の力で、魔力障壁も神力障壁も張れないヤンスは……そのリスクが高いから」
『そんなんなくても、このサイドツーを使いこなして、必ず作戦を成功に導いてやるでヤンスよ!』
「……はいはい、いくら成績がダントツで1番だったからって、あんまり調子に乗らないでよ、もしものことがあったらアレだから」
そうして、僕が率いるサイドツー15機の第一機動部隊は、アルファポイントへの入り口———閉ざされた鉄の壁へと辿り着く。
「……Cキャノン、爆裂刻印概念弾装填式、用意!
…………撃てーーーーっ!!!!」
僕の掛け声と共に、赤に塗られた小銃型の概念弾放出機構装備式銃より、ただ単発の弾が放たれる。
高速にて放たれたその弾は、鉄の壁に突き刺さるやいなや———、
爆発した。
紙を破るように鋭く、そして大きな音を立てながら、その爆発反応は次々と連鎖してゆき、ついには鉄の壁をも———突き破った。
そう、この威力、この技術こそが……今の人界軍、今の西大陸東部連合の実力なのである。
『……さっすが、改良型Cキャノンでヤンスね……俺たちがヤバくなったら、後ろからソレで援護頼むでヤンスよ』
「……うん、いざとなったら……この力で終わらせる」
鉄の扉の先、地下への道は開かれた。
またここに、突撃してゆく部隊が一つ。
その部隊が相対したのは———。
「こんにちは、人間の皆さん?……オリュンポスはどうですか、美しいですか?……そうですよねえ、そうでなくては! なんせ私の有る都市なのだから!!」
……と、いきなり住んでるところ自慢大会を繰り広げた、美しき女だった。
……いやいやいや、何なんだこの人。急にここに現れて———って、まさか話に聞いたゴルゴダ機関……っ?!
「非戦闘員……?……ならば、ここは戦わずに保護するしか……」
『でっ……でもセン、コイツ……この鉄の扉の中にいたんでヤンスよ?……何か、何かよからぬ胸騒ぎがしやがるでヤンス』
「……そうだね、……でも、意思の疎通は図るべきだ。理由もないのに殺すなんて、そんなのは……ダメだから。
それじゃあ、アイツは———報われない」
全く同時刻。
焼き付けるような日差しが、爛々と鋼鉄の都を照らす最中。
第5機動小隊———人界軍と同盟を組んだ、トランスフィールド諸国の一部が結成した『西大陸東部連合』で構成された部隊。
この第5機動小隊の兵器として、人界軍から配備されたのが、サイドパワースーツとして搭乗することのできる、人界軍専用汎用人型機動兵器『サイドツーmark.2』である。
魔王軍との決戦が終結した後、トランスフィールドは全面的に戦争を停戦し、人界軍との関係が密接になった。
そうして、魔王打倒から、このオリュンポスに至るまでの1年間の間に、『サイドポーツ』という競技が発展した。
この競技自体は、『サイドツーmark.1』、攻撃用兵装を装備していない人型ロボットを用いた球技……だったのだが、対オリュンポス———『エターナル』の完遂のために動いたオリュンポスを攻め滅ぼすため、攻撃用兵装の追加、機動力の向上を目的とした機体が量産されることとなった。
それが僕たち、第5機動小隊の乗り込む『サイドツーmark.2』である。
サイドツー。
魔力もしくは電力にて動く、全長3メートルほどの、人型の構造をとった史上初の機動兵器、サイドパワースーツ。
搭乗者はユニットコンテナなるコンテナに乗り込み、それを骨格のみの機体の中央にはめ込み起動させる。
ユニットコンテナ装着時の外見としては、骨格だけの脚部に股関節部より伸びる六本の鉄の管、その真上にコンテナが位置し、そのコンテナの両脇部から両腕が伸びているという構造である。
人型でありながら顔面がなく、中腹部に視覚の機能を搭載したこの形は、前作機のmark.1よりも機動性を重視したものとなっている(顔面部の重量を削減したため)。
両腕部は骨格のみながらも5本指の手の形状となっており、さまざまな武器を持たせられるという汎用性に富んだデザインとなった。
脚部、足の裏の部分にはローラーがついており、機動性を重視したデザインになっている。これは元々サイドラー自体が競技用として開発された名残である。
……従来の人界軍の兵器から見れば、化け物じみた性能をしているが、あくまでこれは量産機に過ぎない。
———そして、僕の乗っているコレは、その中でも特別に強化された、至高の一品。……まあ、元々もうちょっと高価な僕の専用機だって、あったわけだけど。
『セン!……本当にこっちで合ってるでヤンスか?』
無線より聞こえたノイズ混じりの、ヤンスの声。
「……ああ、うん、間違ってたって建物ぶっ壊せばいいだけだから大丈夫……だと思う」
『強引でヤンスね……まあできかねないところが怖いんでヤンスが……』
「……ヤンス、くいな。……そろそろ目標地点だ。…………兵装準備、一斉掃射の用意を」
『…………セン、いつもに増して……怖いね……』
「そりゃあ……そうだ。ここは戦場だ、気を抜いたら———僕たちが死ぬ。特に、自分自身の力で、魔力障壁も神力障壁も張れないヤンスは……そのリスクが高いから」
『そんなんなくても、このサイドツーを使いこなして、必ず作戦を成功に導いてやるでヤンスよ!』
「……はいはい、いくら成績がダントツで1番だったからって、あんまり調子に乗らないでよ、もしものことがあったらアレだから」
そうして、僕が率いるサイドツー15機の第一機動部隊は、アルファポイントへの入り口———閉ざされた鉄の壁へと辿り着く。
「……Cキャノン、爆裂刻印概念弾装填式、用意!
…………撃てーーーーっ!!!!」
僕の掛け声と共に、赤に塗られた小銃型の概念弾放出機構装備式銃より、ただ単発の弾が放たれる。
高速にて放たれたその弾は、鉄の壁に突き刺さるやいなや———、
爆発した。
紙を破るように鋭く、そして大きな音を立てながら、その爆発反応は次々と連鎖してゆき、ついには鉄の壁をも———突き破った。
そう、この威力、この技術こそが……今の人界軍、今の西大陸東部連合の実力なのである。
『……さっすが、改良型Cキャノンでヤンスね……俺たちがヤバくなったら、後ろからソレで援護頼むでヤンスよ』
「……うん、いざとなったら……この力で終わらせる」
鉄の扉の先、地下への道は開かれた。
またここに、突撃してゆく部隊が一つ。
その部隊が相対したのは———。
「こんにちは、人間の皆さん?……オリュンポスはどうですか、美しいですか?……そうですよねえ、そうでなくては! なんせ私の有る都市なのだから!!」
……と、いきなり住んでるところ自慢大会を繰り広げた、美しき女だった。
……いやいやいや、何なんだこの人。急にここに現れて———って、まさか話に聞いたゴルゴダ機関……っ?!
「非戦闘員……?……ならば、ここは戦わずに保護するしか……」
『でっ……でもセン、コイツ……この鉄の扉の中にいたんでヤンスよ?……何か、何かよからぬ胸騒ぎがしやがるでヤンス』
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それじゃあ、アイツは———報われない」
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