Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-レイ(過去): 信ずるモノ

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「正す、救う、今はそんな事言っている場合じゃないはず……今まさに、終末を迎えようとしているこの世界を目の当たりにして、それでもは……このようなくだらない内乱を続ける気か、ライっ!」

 夢だからだろうか、やはり声は自由に出せない。そのくせ、たまにある症状なのだが意識だけはハッキリしている。





 ———結局、後の祭り。
 今ごろ私が来ても、ただの傍観者、というわけか。

『…………ほお、くだらない、などとよくもまあ……貴様には解らぬか、この争いの意味が。……そんなことなど、とも』
「…………っ!」

 その言葉の意味も、今となっては痛いほど分かる。

 互いのサイドツーが大きく後退する。
 そう、コレは邪魔者をも全て排除した一騎討ち。

『それもそうだ、国の、我ら人類の未来を憂えぬ貴様らに何が解ろうか! 我らが愛し、我らが尽くした人界王は既に死せり! 下手な東洋の国なぞに隷属して消え失せるほど、我らの誇りは甘いものだったか?!』
「……」

『答えられぬか、近衛騎士最上位でもあったはずの貴様が、答えられぬと言うのか?! 否、そんな事は許されぬ、答えてみせよ、答えてみせよ近衛騎士、レイ・ゲッタルグルトォッ!!!!』


「…………違う」

 虚しい会話だった、と今になれば思う。

「違うとも、断じて———そうではない。……魔の手にも打ち勝った我ら人界軍、その誇りは永久に燃えゆく火之迦具ヒノカグの残照として民を照らし出す。……そのようなもので消え失せる誇りなどでは、断じてありはしない……!

 …………しかし、我らは———このレイは、人界王と共に歩むことを魂にも刻んだ身!……例え貴公を、魔族を、人類を裏切ろうとも、我が主を裏切る事は決して、決してできはしない!

 ———だから私は、この誇りを胸に……そして貴公の屍を越えて、自らのやり方で国を正す!

 だからこその介錯の一刃、王の剣たるこの一撃にて、王に仇なす一切合切全てを、そして人類の誇りとやらを歪曲させ、外道に走る輩を斬り伏せてみせる!

 ———来るがいい、近衛騎士、ライ!……貴公の誇りは、己が胸に押し留める!」



『火之迦具の誇り、か…………ならばこちらも容赦はせん、覚悟せよ……っ!』

 そうだ、この言葉。
 覚悟せよ、その言葉をも、私の本来の胸の内に向けられた言葉だった。


 何せ、その言葉は、貴公———彼女がここで死ぬという事実を暗に示しているからだ。

 思えば、私は変に本気だった。
 あちらがその誇りとやらを大衆に目覚めさせる為に、トランスフィールドの掌で転がされる事も承知で叛逆に踏み切ったと言うのに。



「はぁぁぁぁぁあっ!!!!」
『だぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!』



 その刃は、見事に。
 敵機———に、深々と。




『ここで散り行くは……
 まるで最初から、何もかも分かっていたかのように、彼女はそう言い放つ。


『登る朝日———もう2度と見ることが叶わんとは、虚しいものだ』



「……さらば、誇りを胸に持つ騎士よ。……後はこちらに任せろ」




『せめて、仄かに燃え上がる灯火とならんことを祈って———』
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