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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-レイ(過去): 誰が為の言の葉
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『———時に、レイよ』
……?!
なんだ、その言葉は。
貴公は……ここで死んだはずだ、ここで機体が爆発し、逃げることすら叶わなかったはずだ。
それ以上の言葉を言い残すなど、私の記憶には……ない!
『例え勝ち目が無かろうとも』
『例え己が折れようとも』
『それでも、貴様は言ってみせたな。……王に仇なす者を斬り伏せる、と』
———なんだ、なんだコレは……私はこんなの知らない、このような言葉など……聞いたこともない!
『———だが、貴様は今、折れようとしているな?』
心の奥に、深く突き刺さるような感触がした。
……多分、図星だったんだろう。
だが、コレは誰のための言葉だ?
誰が為の言の葉なのだ……?
『私は———貴様に任せた。後の事を、人界王の事を、この国の事を、民の事を、そして———世界の、惑星の事も』
託された、はずなんだ。
『そして王は———今は既に亡くなられた。…………これは誰のせいだ?』
王が亡くなられたのは、王を護れなかったのは、もちろん……私が…………
そうだ、この後、ライに別れを告げた後———敵兵サイドツーの放った弾に撃たれ、王は———亡くなられた。
『撃つならば、この我を撃てぇぃ!』
そう言い残され、民の、そして我らの為に、その尊き命を閉じたのだ。
だから、つまりは護れなかったのだ。
王の護衛が仕事の近衛騎士でありながら。
その王を、護る事すら叶わないのであったのだから。
『それは貴様のせいではない』
———え?
『あれは必然だ。……時として、必然である事も起こり得る。…………王は、あの時その必然に出くわされたのだ。……だからこそ王は、その時の最善たる犠牲の方法を、最良たる未来をこの手に掴み取る為に、自ら死にに逝かれたのだ』
「……違う、違います……私が、私が護れていたのなら、もっと別のやり方だって———!」
『———本気で人界王を想い、その意志を弔うと言うのならば、貴様はそれを肯定すべきだ。
……王なりの方法で、王は正されようとした、救おうとされた。……ならば、今を生きる貴様がその意志を継ぐべきだ』
『泣くな、折れるな、突き進め。……散った数多の命、それら全ての上に、貴様らは立っている。……火之迦具の焔もじきに目覚めるであろう。
人類の誇り、その勇姿を見せつけるのは貴様だ』
なぜだろう。
眼前にて見えているのはサイドツーの正面部だけだと言うのに。
「は………………!」
『聞こえなかったのか、私たちの分の誇りまで、そこへ連れて行けと言っているんだ』
どこか、ライが暖かく、見守る様に微笑んでいるような、そんな情景が———。
『…………分かったか』
「分かったか……って、ここで答えたら……!」
まさか、この期に及んで私は、『もっと仲間として過ごしたかった』とでも言い放つつもりだったのであろうか。
それこそ———それこそ、手向けには不似合いだ。
あの時の別れは、ちゃんと別れとして———自らの心で決着をつけなければならない。
『———本当に、後は任せたぞ』
……ならば、この言葉にどう答えるべきか。
本当ならば、聞きたいことだっていっぱいあったし、話したい事も、やりたいこともまだまだ沢山あった。
あの時———王の下で騎士として働き始めたあの時に戻ることのできるならと、何度思ったことか。
それほどまでに王と彼女———ライは私にとってかけがえのない存在だった。
日ノ國より逃亡した時、この世界には地獄しかないと思い込んでいたのに。
『そんなことはない』と、私の認識を壊したのが———人界軍の存在だったのだから。
こんな私に手を差し伸べてくれた、私の仇敵の存在も大きいけど。
彼らのおかげで、私はヒトの優しさに触れ、命にまで誓った復讐から離れることができたのだから。
だから———感謝してもしきれないけど、それでも今、この時だけは———何も聞いちゃいけない。
決して見えはしないだろうけど、この想いだけは伝わっているはずと信じて。
「……っ…………!」
せめてもの、手向けとして。
———黄泉へと送り出す為の、敬礼を……1つ。
……?!
なんだ、その言葉は。
貴公は……ここで死んだはずだ、ここで機体が爆発し、逃げることすら叶わなかったはずだ。
それ以上の言葉を言い残すなど、私の記憶には……ない!
『例え勝ち目が無かろうとも』
『例え己が折れようとも』
『それでも、貴様は言ってみせたな。……王に仇なす者を斬り伏せる、と』
———なんだ、なんだコレは……私はこんなの知らない、このような言葉など……聞いたこともない!
『———だが、貴様は今、折れようとしているな?』
心の奥に、深く突き刺さるような感触がした。
……多分、図星だったんだろう。
だが、コレは誰のための言葉だ?
誰が為の言の葉なのだ……?
『私は———貴様に任せた。後の事を、人界王の事を、この国の事を、民の事を、そして———世界の、惑星の事も』
託された、はずなんだ。
『そして王は———今は既に亡くなられた。…………これは誰のせいだ?』
王が亡くなられたのは、王を護れなかったのは、もちろん……私が…………
そうだ、この後、ライに別れを告げた後———敵兵サイドツーの放った弾に撃たれ、王は———亡くなられた。
『撃つならば、この我を撃てぇぃ!』
そう言い残され、民の、そして我らの為に、その尊き命を閉じたのだ。
だから、つまりは護れなかったのだ。
王の護衛が仕事の近衛騎士でありながら。
その王を、護る事すら叶わないのであったのだから。
『それは貴様のせいではない』
———え?
『あれは必然だ。……時として、必然である事も起こり得る。…………王は、あの時その必然に出くわされたのだ。……だからこそ王は、その時の最善たる犠牲の方法を、最良たる未来をこの手に掴み取る為に、自ら死にに逝かれたのだ』
「……違う、違います……私が、私が護れていたのなら、もっと別のやり方だって———!」
『———本気で人界王を想い、その意志を弔うと言うのならば、貴様はそれを肯定すべきだ。
……王なりの方法で、王は正されようとした、救おうとされた。……ならば、今を生きる貴様がその意志を継ぐべきだ』
『泣くな、折れるな、突き進め。……散った数多の命、それら全ての上に、貴様らは立っている。……火之迦具の焔もじきに目覚めるであろう。
人類の誇り、その勇姿を見せつけるのは貴様だ』
なぜだろう。
眼前にて見えているのはサイドツーの正面部だけだと言うのに。
「は………………!」
『聞こえなかったのか、私たちの分の誇りまで、そこへ連れて行けと言っているんだ』
どこか、ライが暖かく、見守る様に微笑んでいるような、そんな情景が———。
『…………分かったか』
「分かったか……って、ここで答えたら……!」
まさか、この期に及んで私は、『もっと仲間として過ごしたかった』とでも言い放つつもりだったのであろうか。
それこそ———それこそ、手向けには不似合いだ。
あの時の別れは、ちゃんと別れとして———自らの心で決着をつけなければならない。
『———本当に、後は任せたぞ』
……ならば、この言葉にどう答えるべきか。
本当ならば、聞きたいことだっていっぱいあったし、話したい事も、やりたいこともまだまだ沢山あった。
あの時———王の下で騎士として働き始めたあの時に戻ることのできるならと、何度思ったことか。
それほどまでに王と彼女———ライは私にとってかけがえのない存在だった。
日ノ國より逃亡した時、この世界には地獄しかないと思い込んでいたのに。
『そんなことはない』と、私の認識を壊したのが———人界軍の存在だったのだから。
こんな私に手を差し伸べてくれた、私の仇敵の存在も大きいけど。
彼らのおかげで、私はヒトの優しさに触れ、命にまで誓った復讐から離れることができたのだから。
だから———感謝してもしきれないけど、それでも今、この時だけは———何も聞いちゃいけない。
決して見えはしないだろうけど、この想いだけは伝わっているはずと信じて。
「……っ…………!」
せめてもの、手向けとして。
———黄泉へと送り出す為の、敬礼を……1つ。
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