Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
233 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

最終兵器は恋をする

しおりを挟む
「あー……あー、ちょっと……入っても、いいかしら?」

 俺もアテナも、互いに黙り込んだ空間に割り込んだのはサナだった。

「……どうしたんだ、何か不安なことでも———」

 戸惑う俺に向けて、サナはそっと耳打ちする。

「もっと他に、言うべきことあるんじゃないの?……これが最後かも……しれないんだからさ」
「お……ああ、そうだな。すまん、ありがとう」

 他に言うべきこと———か。
 他に……他に………………



 ———そうか、ソレがあった。


「アテナ!……ちょっと……いいか。……みんなのいないところで話をしたい、一回……来てくれないか」

◇◇◇◇◇◇◇◇


「…………アテナ、その……俺、な……」

 人のいないところ———崩れ去ったオリュンポス外壁、その影にアテナを連れ出す。
 それでも、そこまでしてでも言いたいことがあった———んだが。

「お……おお、俺……な、な……」

 ここに来てまで。言いたいことは、俺の口から出はしない。

「?」
「ああ…………言うさ、言う、言う……言ってやる……!

 俺は———お前のことが好きだ! 好きで好きでたまらないんだ、大好き……なんだよ!……っはあはあ、言った、言ったぞ……!」

「……うん、知ってる。…………アテナ、も……しろ、の……ことが、すき。
 
 だいすき、だから……アイしたい。この、恋を……アイに、変えてしまいたい」

 アテナは少しばかり頬を染めはにかみながらも、俺との会話を続けてくれていた。


「だ……から、さ……コレは提案なんだが……

 もしゼウスと……お前のお父さんと和解できたら……お前と、けっ、けけけけけけけっ……!」


 ダメだ、足が……緊張して、震えて……!


 ———いいや、そんなんじゃダメなんだ。
 俺が……のは———正真正銘、神様の娘……っつーかコイツも神!

 ここで言えないなら、俺は一生……踏み出せない……!

「お前と、結婚……したい!……しよう! そうするって、お前のお父さんに……ゼウスに言いつけてやるんだ、どうだ! どうだ!!!!」

 目を瞑って、その答えを待つ。
 

「…………しよう! 結婚!! な!!!!」

 10秒経過。答え無し。……まさかここにまで来て無視か?!?!……いいやいやいやそんなことはない……ない、ない……はずだ……!


「……じゃあ、証……見せ、て?」

「あか……し?」

 ようやく口を開いた……はいいものの、証……とは……?


「いれる。……いれ、て……まじわって……」

「お…………おおう?」

 おいおい、それじゃまるで……
 入れて……交わる……って、さあ……ここで?!

「トロトロ……に、ドロドロになって……そして、赤ちゃんを産むの」

「おい待って待て待てまさかお前ここでするつもりか?! 流石にんなことやってる時間ねえっての! 一体俺が何を入れなきゃなんないって……」

「………………舌、入れて……」

「舌かーいっ……ああすまん、めっちゃくちゃ誤解した」

「だって……お父様、言ってた。……舌、入れたら…………できる……って」

 舌を入れたら子供ができる……って何でそんな誤解を解いてやらなかったんだよお父様?!?!


 ……あ、じゃあさっきの『抱いて』宣言、別に隠語でも何でもなくただフツーに抱いてほしかっただけ…………あーまたまた俺自身の後悔ポイントが増えていく~っ!


「………………だめ?」

「ダメも何も……今まで何回かした……だろ。……やっていいよな?」

「今まで……何回、か……してきた、じゃん」

「お前がソレ言うか……」


 息を落ち着かせて。昂る心臓を抑えて。
 安らいだ気持ちで、その顔を手に取る。

「…………いいよな?」

「……」

「いいよな…………??」
「うるさい」
「っ?!」

 逆にあっちに両手で頬を掴まれ、強引にも口は重なってしまった。

「…………ん……んんぅ……っ」

 しばらくの間口と口は重なり続け、そしてその時間は静かに幕を閉じた。

 互いの吐息……のみしか聞こえない、この場において。
 そうしてる間の声……にもならない音というのは、何とも……濃密で味わい深いものだった……と思う。

 ……と、アテナは人差し指を俺の唇にそっと置いて一言。

「へたくそ」

「あぁっ?!」

「へたくそ、へたくそへたくそへたくそ。しろのキス……いつ、も……へたくそ」

「下手くそで悪かったな…………っああクソッ、たった1人の女の子にさえ、満足にしてやれないのか……」

「そういうところ」

「へ?」

「そういう……気負いすぎる、ところ。……しろにとっては、欠点……かも、だけど……そうやって……相手の、ことを考えられるのは……すごい」

「うぐ……っ」


「……でも、もう。

 もう、何も———せおわなくて、いい。



 しろは、もう———しろじゃ、ない。
 ツバサ、だから」


 ———そっか。
 そう言えば、前にもそんなことを言っていた。俺の思うようにしてほしいって、アテナは前にも言っていた。


 ずっと、そのスタンスだったのか。
 どこまでも、俺優先なのか、お前は。


 ……でも、そうか。その俺優先の在り方が、コイツにとっては最高の幸せなんだ、きっと。

 だったら、それに応えるためには———。




「やめて、いいのかな」

「うい?」




「俺は———俺の、贖罪を。

 この身に帯びた、罪の……贖いきれぬ罪の、精算を」



「……それで、しろが……幸せに、なるのなら、アテナは……それ、で……いい!

 いっしょ、に、たのしく……生きよ?」



「———ああ、そのために……終わらせなきゃならないからな」
しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...