Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

空へ

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『———それじゃあ、サイドツーの手のひらに乗ってください』

 俺たちを覆う巨大な人影。人界軍による人型機動兵器、サイドツー。そして、そこから聞こえるのは、音量が増大したセンの声。

 ……こんなものが出来上がっていたなんて、俺には全く知るよしもなかった。

 ただ、今は使えるものは何でも使う。例え悪魔に縋ろうとも、俺はあの計画を潰してみせる。

 ……人界王だって、同じ気持ちでサイドツーなんてものを作ったんだろうな。人界王が作ったのかなんて知らないけど。

「乗ってるだけで……いいんだよな?」
『はい、心配な場合は、武装装備用の接続ジョイント———突起に捕まってください』

 それにしても……人界軍が、こんな未来的な兵器を持ち出すなんて。
 どこから技術を仕入れたのかは分からないけど、あまりにも人界軍の技術には似合わない兵器だった。


「……アテナは乗らないのか?」
「私……は、飛べる。…………よわい、しろと違って……飛べるから」
「俺も飛ぼうと思えば飛べるけどな」

◆◆◆◆◆◆◆◆


『10秒後に発進します、衝撃に備えてください』

 10……9……

「白!……行ってらっしゃい!」
「———ああ、行ってくる。決着を付けて戻るよ」

 8……7……6……

「センも頑張るでヤンスよーーっ!」
「…………頑張って」
『うん。白さんたちは、僕が絶対に送り届けてみせる』

 5……4……3……

「…………行こう、空へ」

 2……1……


『サイドツー、発進っ!』

 次の瞬間。
 俺たちは、空へと一直線に舞い上がる。———。

「すっげえ……」

 陽が登りつつある、暁の夜空を背に。
 見定めるは、空に浮かぶ終末の化身。人の未来を創りし、全知全能なるカミの虚なる真体。

 ———が、その巨体は、白い雲の影に隠れつつあった。

『サイドツーも応戦はしますが……正直、こちらに向かってくる神話的生命体は対処しようがありません。ですのでアテナさんも、可能な限りの迎撃をお願いします』

 センのその声に、同じく空に浮くアテナはサムズアップで返す。


「……おい、ちょっと待った……アレなんだよ?」

 機神ゼウス———その真体に真下から突撃をかけていた、紅き鉄の塊が。……いやいやなんだよアレ、俺はあんなの見たことないぞ?!

『アレは……まさか、ヒノカグツチ!…………っ、白さん、あの中には———』

「あの中が?! どうだって言うんだよ、ええ?!」



『………………コックが…………乗って…………ます』

「はあ?!?!」

 オイオイ嘘だろ……あんなので機神とマトモにやり合う気か?!
 一体何だよ、自爆でもする気なのか……!

「ちくしょう……コック諸共、アレに乗ってる奴らで命張ろうってのかよ……! そんなのさせねえ、絶対に!……もう犠牲を増やしたくないんだよ……ヤツらの計画のせいでっ!

 セン、時間を無駄にしてる暇はねえ! コックが乗ってんなら尚更だ、どうにかして早くゼウスのところに辿り着くぞ!」


『急加速、行きますよ……前方287、神話的生命体多数———突っ切ります!』

 機体の前方には、センの言う通り何やら鉄の塊のようなものが無数に浮かんでいた。
 高度もまちまちだ、あれじゃあ避けて行くなんて無理な話———しかし周りこむわけにもいかない。

 とか考えた瞬間、サイドツーが猛スピードで発進する。

「………………風……が……」

 俺にも何かできないか、と前に出た瞬間、身に余る突風が俺を襲う。立っていようものなら確実に一歩後退してしまうくらいの突風。

『はあああああっ!』

 サイドツーの右腕より閃光と轟音が響いた直後、前方にて多数の爆発が。

「サイドツーって、銃とか使うんだな」

 そんなことに感心しながらも、俺たちはその『神話的生命体』だか呼ばれた敵の嵐に突っ込んでいく。

『白……さん、僕たちだけじゃ防ぎきれない、そちらもそちらで、臨機応変な対応を求めます!』

「ああ、分かった! 難しいけど色々とやってみるさ!」

『神話的生命体』と呼称された、反円錐の飛行ユニットは、俺たちめがけ一目散に突撃を仕掛けてくる。


「要するに、斬りゃあいいんだな、斬りゃあ!」

 片手のみで振るった刃。弱々しい力であろうとも、その斬撃は魔力を纏い、浮遊する敵に対して命中していく。

『前だけでいいですからね!……横のヤツらは———接触する前に突っ切ります!』

 こちらにかかる力と、前方よりの突風の強さが倍増する。

 ———が、それでも刀を振るのはやめない。右腕は接続ジョイントを掴んだまま。左腕のみで、神威を何度も何度も振るってみせる。


『まずい……このままじゃ、ヤツらが先に大穴に接触する……!』
「お……俺たちがいちゃついてたがばっかりにか?!」
『責任の押し付け合いはいいです、今はただ———この雲を突っ切るのみ……!』

 雲———白く染まっていたソレに入り込んだ瞬間、機体が揺れ始め、水滴が至る所につき始める。

「おおぉおっ?!」
『制御が……むずか……しい……っ!』

 強風が吹き荒れる。もはや自分の姿勢すら、制御が効かないほどに。

「アテナ……この雲、どうにかできるかーーーーっ!」

 もはやその姿すらも見えなくなっていた、が。ピリッとした妙な感覚の直後だった。

『神力反応、増大……惑星統合級……って、何ですかコレは?! こんなもの定めてるだけで一生見ないと思ってたのに!』

 ———来た。

『まずい———とにかく必死にしがみついてください、白さん!』
「お……おう、分かった!」

 と応答した瞬間に、機体は一瞬のうちに、幾度となくその動きを変えてみせた。

「ぐ…………っ、ぐぐ……ぅ、やってくれんじゃねえか……っ!」

 閃光に包まれる視界。ほとばしる稲妻を体で感じ、その衝撃に耐えつつ瞳を開く。

 雲は———晴れていた。
 たった一瞬の、その衝撃によって。

『あ……あれ、が、機神の……力……』
「セン! 足を休めてる理由はねえ、今すぐにでも———」
『はっ、はい!』

 機神ゼウス———その姿を捉えたサイドツーは、再度急速発進する。
 いよいよ、ラストスパートと言ったところか。

『あのまま突っ込みます、アテナさんはゼウスの外壁を破壊してください!』

 応答はないが、その声は確実に聞こえている。
 ソレを証明するように———身体に……こう、ピリッとした感覚がまた流れたからだ。
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