Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-レイラ: 理由

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「何……の、為に……って———」

「ええ、そう!……お前は一体何のためにここにいて、…………っ、何のために……戦ってるん……すか!

 護りたい、大事な……ものは! 貫きたい…………信念、は! お前にだって……それがあるはず……なんすよっ!」



 ラースは黙り込む。
 能天気そうに空を見上げた後、ほんの少し俯いて。

「———そんなの、任務のために決まってるじゃない……!

 任務、任務、任務! 今の私にはそれが全てで、それしか私を満たしてくれないの! それがなきゃ……誰も振り向いてくれないの、だから———!」

「やっぱ……おかしい!

 どっかおかしいっすよ、お前……任務だけが全てなんて、そんなの……おかしいっすよ!」

「おかしいって、どこがよ! 私は正常、私は普通、別にどこもおかしくも……ないじゃない!

 任務をこなさなきゃ、誰も私を愛してくれないもの、誰も私を気にかけてくれないもの!……それを一番に思って、何が!」 

「その在り方も何もかも……どっかから、狂ってるって……言ってるんすよ!

 何が———何が、お前をそうさせて……!」





 ———ああ。
 最初は。本当に、最初は———ただの時間稼ぎのつもりだったのに。

 どうしてこう……いつの間にか本気になっていたのだろう。


「…………うるさい、うるさいうるさいうるさいっ! 黙れ黙れ黙れぇぇえっ!」

 もはや持ち手しか無くなった鎌を振り下ろさんと、ラースは迫り来る。……狂乱などという、本来人間に使うべきではない言葉が一番似合うほどに。

「……無駄っすよ、いくら手負いとは言え、そんなので……あっしは破れない!」

「なんっで……なんで死んでくれないのよ、目障りなの、邪魔なの、ウザいのよっ!!

 任務を果たさないとダメなの!……だったら、今度こそ……今度こそ……パパに見捨てられるっ!」

「———パパ?」

 一度大きく後退し、攻撃の手は止まる。
 ……パパ?…………って、あの……ずっとカーテンの奥にいた、ラースのお父さん?


「もう……もう、何度も失敗した!
 鍵の奪取作戦も、その後の作戦も、またやってきたチャンスも、全部使い潰した!

 何度も何度も……何やっても、パパには褒めてなんてもらえなかった……愛してなんて、もらえなかったのにぃっ!」

「———」


 かける言葉が思い浮かばなかった。



 あっしは、コイツを———何の躊躇もなしに殺すことが、できるだろうか。



 ……どー見たって訳アリだ。どー見たって、救われるべき『歪み』がある。







 ……と、言うか。

 そもそもコイツ……あっしと同じだ。
 父に愛してもらえない———そんなの、あっしの家では普通だった。父どころか、母だって。

 ……ずーっと。ずっと、ずっと、ずーっと。あっしの事は……ただの、おもちゃだと。



「…………っ……うぅ……っ……何で、何で……なんだろうね……

 どうして……ここまで、酷いんだろうね……!」

 ———ああ、ダメだ。
 何で、どうして、涙が止まらないのか。

 昔の自分と重ねて、同情して泣いてしまっている?
 ……そんな、こんな狂ったヤツと、自分を重ねるなんて。


「何で…………泣くの。

 何で、どうして……が……泣くのよ、ねえ、どうしてよ!」
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