使い魔の王はパートナーを求めて

sara

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閑話

父と娘

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ある貴族の家の一室
そこには父と娘が向き合っていた
父の方は40代くらいの凛々しい男であり娘もそれに似て綺麗である
とても親子で出すような空気ではないが厳かで重い雰囲気に包まれた中で最初に口を開いたのは男の方であった

「今日の魔力検査では良い結果を出せたらしいな、」
娘ははじめの言葉で舞い上がった
しかし突き落とされるのは早かった
期待していた分絶望も大きい

「そう思ってたら大間違いだ。
この家に生まれたのだからそれくらいでは駄目だと分からないのか?」
厳しく叱るように話す
この部屋の温度が何度か下がるように感じられた

「分かっております…」
泣かないように目を閉じ堪える
何度叱られても慣れないのだ

「本当に分かっているのか?
まあ、それはいいだろう。今日言いたかったのは別のことだ。
第一王子には会ったか?」

彼女は肯定の返事を返す

「それならいい。
将来第一王子の婚約者となるために今のうちに接近をしておくように。女なんだからそのくらいでしか役にたたないだろう?」

「そうですね、」
娘なのに女なんだからとそんな風にしか価値をみられていない現状にまた一つ心にひびが入ったように胸が痛い
それに第一王子の婚約者候補なだけでまだ何もないのに…
第一王子はパーティー等でエスコートされる時に顔を合わせるが向こうは私のことをよく思ってないらしく時々睨むような視線を向けてくる
どんな理由があれそんな方と一緒にいるのは気分が悪い
しかしお父様に認められるためには第一王子との婚約…
どうすればいいのか分からなくなったが挨拶をし部屋から出た


男が一つ失態を起こしたのは隣の席の平民の者と話したのを注意しなかったことだった
昔のこともあるし第一王子の方が大切だと思ってのことだ
ここで口にしていれば男が望まない展開にならなかったかもしれないのに
しかし所詮言っても変わらないだろう
これから急速に距離が近づく二人に何をしても無駄なのだから


部屋に戻った彼女はベッドにうつ伏せて涙を流す
いつになったら認めて貰えるのだろうか
いっそのこと諦めたなら楽なのだろうか
くしゃりとシーツを握りしめた


私は諦めずに努力する人はとても好ましいと思いますよ


ふと思い浮かんだ言葉に心が揺れる
力を込めていた手をシーツから離し顔を上げた
私はまだ頑張れる…
そう自分を奮い立たせ横に倒れ目を閉じた



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