夏の残香

宮浦透

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1.セミが泣いた

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ケ・セラ・セラ。なんては言うけれど、そこで鳴いてる蝉はあと一週間以内には死んでるんだって。
 「僕も死ぬ一週間には鳴いて見せるよ」
 それまでには僕も子どもが居るといいな。いや、僕は人間だから孫が生まれるくらいまでは生きているかもしれない。
 生ぬるい風が体を横切っていく。これだから夏は嫌いだ。
 みんな暑さにやられて、弱ってしまう。それだから何かが歪んでしまう。
 春は得る代わりに失うし、夏は暑さにやられて人生が歪み出した気がして、秋は俯瞰してる自分に嫌気がさすし、冬は寒さにやられて人生が捻れていく。
 随分と騒がしい人生を送ってる気がする。これが青春って言う奴なのかもしれない。
 なんくるないさ。なんては言うけれど、そこで鳴いてる蝉はあと一週間もすればあの世なんだって。
 「お前、そこで一人で鳴いてて悲しくないのか」
 「悲しいから、泣いてんだ」
 喋るわけもない蝉がそう言った気がした。
 お前って、泣いてたのか。
 ただこれからの人生を受け入れて、泣いて逝くのか。
 木の葉が風に揺られて靡いていく。どこかの家で風鈴が鳴っている。
 明後日は台風らしい。
 また、明後日も声を聞かせてくれよ。
 一週間はその煩い声を聞いていたいのだから。
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