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1.瑞雪を見て
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半袖に半ズボン。
夏服で極力弱めた炬燵で温もる真冬。
冬を感じたくなった昼下がり、外へ寝巻きのまま飛び出した。
まず、寒かった。
木枯らしが、体を切り付けて痛かった。
「そうだ、少し遠くへ歩こう」
心に決め歩き始める。服はまだ半袖に半ズボン。お金はポケットに小銭が二つ。
街中に一つ取り残された自販機がどうにも寒そうで、仕方がなかったから暖かいほっとレモンを買って隣で飲んだ。残りのお金は何故か五枚に増えた。
「お前ら、寒そうだな、俺も寒い」
街を見下ろし過ぎていく白い雲を見上げた。
途中で眼鏡をつけてないことに気が付いて眼鏡をつけた。
世界をよく見ても、取り残された自販機も、流れる雲も、なんだか寒そうで、蒼かった。
人がいない道路の脇、何故だか蒼くなりたくて、靴と靴下を脱いだ。
アスファルトが足元を酷く冷やした。
蒼くなりたかったが、これではなかった。
そのまま脱いだ物を履くのも面倒になって、裸足のまま歩き始めた。
信号を待つ車の横にわざとらしく立ち止まる。白線の上だけを選んで足を踏み入れる。石が並べられた道を、同じ柄の所だけ選んで歩いていく。
「あいつら、笑ってる」
きっとこっちを見て笑ってるんだ。学校なんて檻と同然だ。蒼くなっていく僕らを見て嫉妬してるんだ。
笑ってみせよう。力不足な太陽に歯を出した。
太陽は笑い返してこなかった。少し、寂しかった。
「君、そんな服装で大丈夫なの?」
山へ向かうなか、大人が喋りかけてきた。
「これ、あげるよ」
羽織っていたコートを手渡してきた。
それだけ渡してくると、何かを思い出したかのように走って去っていった。礼も出来ずコートを着てみると、暖かかった。
半袖、半ズボン、裸足にコート。なんとも不恰好。けれどもう木枯らしはあまり痛くなかった。
「蒼いな」
山頂から見渡す街は、やはり蒼かった。
この冬らしさが蒼々しいのだ。
あまりな世界に切に希う。
──帰ろうかとしたその時、空から白が降った。
流れる雪雲から降り落ちる結晶は、悔しいほどに綺麗だった。
春、夏、秋の足音が遠のいていく。
世界が冬に染まっていく。
蒼くはなれなかった。
それでも、僕は冬の一部だったらしい。
きっとこれは瑞雪だ。
笑った。葉を落とした木々が笑いかけた。
笑い返した。不器用な笑いを贈った。
暖かいコートに身を包んで帰路を辿った。
冬と、冬景色と、今日出会った者たちに感謝を込めて。
きっといつか、誰かを救えるように。
夏服で極力弱めた炬燵で温もる真冬。
冬を感じたくなった昼下がり、外へ寝巻きのまま飛び出した。
まず、寒かった。
木枯らしが、体を切り付けて痛かった。
「そうだ、少し遠くへ歩こう」
心に決め歩き始める。服はまだ半袖に半ズボン。お金はポケットに小銭が二つ。
街中に一つ取り残された自販機がどうにも寒そうで、仕方がなかったから暖かいほっとレモンを買って隣で飲んだ。残りのお金は何故か五枚に増えた。
「お前ら、寒そうだな、俺も寒い」
街を見下ろし過ぎていく白い雲を見上げた。
途中で眼鏡をつけてないことに気が付いて眼鏡をつけた。
世界をよく見ても、取り残された自販機も、流れる雲も、なんだか寒そうで、蒼かった。
人がいない道路の脇、何故だか蒼くなりたくて、靴と靴下を脱いだ。
アスファルトが足元を酷く冷やした。
蒼くなりたかったが、これではなかった。
そのまま脱いだ物を履くのも面倒になって、裸足のまま歩き始めた。
信号を待つ車の横にわざとらしく立ち止まる。白線の上だけを選んで足を踏み入れる。石が並べられた道を、同じ柄の所だけ選んで歩いていく。
「あいつら、笑ってる」
きっとこっちを見て笑ってるんだ。学校なんて檻と同然だ。蒼くなっていく僕らを見て嫉妬してるんだ。
笑ってみせよう。力不足な太陽に歯を出した。
太陽は笑い返してこなかった。少し、寂しかった。
「君、そんな服装で大丈夫なの?」
山へ向かうなか、大人が喋りかけてきた。
「これ、あげるよ」
羽織っていたコートを手渡してきた。
それだけ渡してくると、何かを思い出したかのように走って去っていった。礼も出来ずコートを着てみると、暖かかった。
半袖、半ズボン、裸足にコート。なんとも不恰好。けれどもう木枯らしはあまり痛くなかった。
「蒼いな」
山頂から見渡す街は、やはり蒼かった。
この冬らしさが蒼々しいのだ。
あまりな世界に切に希う。
──帰ろうかとしたその時、空から白が降った。
流れる雪雲から降り落ちる結晶は、悔しいほどに綺麗だった。
春、夏、秋の足音が遠のいていく。
世界が冬に染まっていく。
蒼くはなれなかった。
それでも、僕は冬の一部だったらしい。
きっとこれは瑞雪だ。
笑った。葉を落とした木々が笑いかけた。
笑い返した。不器用な笑いを贈った。
暖かいコートに身を包んで帰路を辿った。
冬と、冬景色と、今日出会った者たちに感謝を込めて。
きっといつか、誰かを救えるように。
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