1 / 12
1.瑞雪を見て
しおりを挟む
半袖に半ズボン。
夏服で極力弱めた炬燵で温もる真冬。
冬を感じたくなった昼下がり、外へ寝巻きのまま飛び出した。
まず、寒かった。
木枯らしが、体を切り付けて痛かった。
「そうだ、少し遠くへ歩こう」
心に決め歩き始める。服はまだ半袖に半ズボン。お金はポケットに小銭が二つ。
街中に一つ取り残された自販機がどうにも寒そうで、仕方がなかったから暖かいほっとレモンを買って隣で飲んだ。残りのお金は何故か五枚に増えた。
「お前ら、寒そうだな、俺も寒い」
街を見下ろし過ぎていく白い雲を見上げた。
途中で眼鏡をつけてないことに気が付いて眼鏡をつけた。
世界をよく見ても、取り残された自販機も、流れる雲も、なんだか寒そうで、蒼かった。
人がいない道路の脇、何故だか蒼くなりたくて、靴と靴下を脱いだ。
アスファルトが足元を酷く冷やした。
蒼くなりたかったが、これではなかった。
そのまま脱いだ物を履くのも面倒になって、裸足のまま歩き始めた。
信号を待つ車の横にわざとらしく立ち止まる。白線の上だけを選んで足を踏み入れる。石が並べられた道を、同じ柄の所だけ選んで歩いていく。
「あいつら、笑ってる」
きっとこっちを見て笑ってるんだ。学校なんて檻と同然だ。蒼くなっていく僕らを見て嫉妬してるんだ。
笑ってみせよう。力不足な太陽に歯を出した。
太陽は笑い返してこなかった。少し、寂しかった。
「君、そんな服装で大丈夫なの?」
山へ向かうなか、大人が喋りかけてきた。
「これ、あげるよ」
羽織っていたコートを手渡してきた。
それだけ渡してくると、何かを思い出したかのように走って去っていった。礼も出来ずコートを着てみると、暖かかった。
半袖、半ズボン、裸足にコート。なんとも不恰好。けれどもう木枯らしはあまり痛くなかった。
「蒼いな」
山頂から見渡す街は、やはり蒼かった。
この冬らしさが蒼々しいのだ。
あまりな世界に切に希う。
──帰ろうかとしたその時、空から白が降った。
流れる雪雲から降り落ちる結晶は、悔しいほどに綺麗だった。
春、夏、秋の足音が遠のいていく。
世界が冬に染まっていく。
蒼くはなれなかった。
それでも、僕は冬の一部だったらしい。
きっとこれは瑞雪だ。
笑った。葉を落とした木々が笑いかけた。
笑い返した。不器用な笑いを贈った。
暖かいコートに身を包んで帰路を辿った。
冬と、冬景色と、今日出会った者たちに感謝を込めて。
きっといつか、誰かを救えるように。
夏服で極力弱めた炬燵で温もる真冬。
冬を感じたくなった昼下がり、外へ寝巻きのまま飛び出した。
まず、寒かった。
木枯らしが、体を切り付けて痛かった。
「そうだ、少し遠くへ歩こう」
心に決め歩き始める。服はまだ半袖に半ズボン。お金はポケットに小銭が二つ。
街中に一つ取り残された自販機がどうにも寒そうで、仕方がなかったから暖かいほっとレモンを買って隣で飲んだ。残りのお金は何故か五枚に増えた。
「お前ら、寒そうだな、俺も寒い」
街を見下ろし過ぎていく白い雲を見上げた。
途中で眼鏡をつけてないことに気が付いて眼鏡をつけた。
世界をよく見ても、取り残された自販機も、流れる雲も、なんだか寒そうで、蒼かった。
人がいない道路の脇、何故だか蒼くなりたくて、靴と靴下を脱いだ。
アスファルトが足元を酷く冷やした。
蒼くなりたかったが、これではなかった。
そのまま脱いだ物を履くのも面倒になって、裸足のまま歩き始めた。
信号を待つ車の横にわざとらしく立ち止まる。白線の上だけを選んで足を踏み入れる。石が並べられた道を、同じ柄の所だけ選んで歩いていく。
「あいつら、笑ってる」
きっとこっちを見て笑ってるんだ。学校なんて檻と同然だ。蒼くなっていく僕らを見て嫉妬してるんだ。
笑ってみせよう。力不足な太陽に歯を出した。
太陽は笑い返してこなかった。少し、寂しかった。
「君、そんな服装で大丈夫なの?」
山へ向かうなか、大人が喋りかけてきた。
「これ、あげるよ」
羽織っていたコートを手渡してきた。
それだけ渡してくると、何かを思い出したかのように走って去っていった。礼も出来ずコートを着てみると、暖かかった。
半袖、半ズボン、裸足にコート。なんとも不恰好。けれどもう木枯らしはあまり痛くなかった。
「蒼いな」
山頂から見渡す街は、やはり蒼かった。
この冬らしさが蒼々しいのだ。
あまりな世界に切に希う。
──帰ろうかとしたその時、空から白が降った。
流れる雪雲から降り落ちる結晶は、悔しいほどに綺麗だった。
春、夏、秋の足音が遠のいていく。
世界が冬に染まっていく。
蒼くはなれなかった。
それでも、僕は冬の一部だったらしい。
きっとこれは瑞雪だ。
笑った。葉を落とした木々が笑いかけた。
笑い返した。不器用な笑いを贈った。
暖かいコートに身を包んで帰路を辿った。
冬と、冬景色と、今日出会った者たちに感謝を込めて。
きっといつか、誰かを救えるように。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる