世跨ぎ

宮浦透

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2.朝陽の声

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 次朝日が昇ったら、僕は大人になる。
 そんなこと子供の時間を楽しんだ僕らはみんな知っていた。それでも大人を横目に見てた僕らにはまだ信じ難かった。淡々と、刻々と迫っている大人って奴に呆気を取られている間に、僕らはその大人って奴になっていった。
 大人ってのは変で、自覚とか、責任ってのを持たなきゃいけない。そこにはもう子供の楽しさなんて微塵も残ってなくて、朝日を横目に見る生活をするだけ。月明かりを見る暇もなく生きていく日々。
 もう次の朝日を見たくない。
 そうは思ってもそれは我儘で、大人にはあるまじき事だ。気付けばもう大人ってのに取り憑かれているのかもしれない。その世界に行くなら自分で背中を押したい。少しはそう思いたかった。
 段々と目的も意欲も失ってただの世界の奴隷となっていく僕らには、子供は何て言うのだろう。変だ。あんな風にはなりたくない。そんな意見の的になるんだろう。
 これは僕らが変なのか。いいや、そんな訳がない。
 世界が変なんだ。もとい世間が変なのだ。誰がなんて言おうと僕らは子供だった。それでも世界の条理には敵わなくて、子供の頃の夢なんていずれ忘れて、こうやって世界に擦り潰されていく。
 多分きっと、僕の運命はそうやって動いていくんだろう。運命が上手く運ばれなかった瞬間から、分かりきっていたはずなのにそれでも何処かに希望があるはずだと思っては仕方ない。
 月明かりが、僕を照らしてくる。
 とてもじゃないがうるさくて寝れたもんじゃない。でもそうか。葛藤の末に置き去った苦悩は、これから前に進んでいく僕らにとって忘れちゃいけないことなんだ。
 携帯をとって、同志を呼びかけた。一緒に朝日を見よう。それで一緒に大人になろう。最後の子供の時間を、忘れないようにも。
 僕らは、子供の心を忘れてはいけない。
 安い飲み物を一杯、きっとこれも大人になったら飲むことは減っていくんだろう。それでも今の僕らにはこれも大事な思い出の一つなんだ。
 願おう。今日を忘れないことを。明日からに取り憑かれないことを。僕らの人生が運命に負けないように希う。
 朝日を、僕らは体全身に浴びた。
 もうこれからは大人なんだ。社会に揉まれて奴隷になっていく。それでもこの日を思い出してまたこの場所に戻ろう。
 大切な何かを取り戻すために。僕らは再度歩き始める。僕は再度朝日に目を飛ばす。みんなが横目で見ても、それだけはしないでおこう。
 朝日の声は、聞こえたつもりだ。
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