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3……ギンガハッピース!

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しっかりと歯を磨き……何かに、そう、プテラノドン3羽と巨大紫針鼠1匹に勝利した素晴らしい1日が終わった。

暗闇に溶け込み部屋中央に鎮座する石盤と共に布団を敷きネムる充瞳は────────


静かな夜……健やかな夜……やがて夢見る……眩しいエメラルドの誘う、夜戦。


「ってふざけんなァァァ寝心地の良い夢を見せろおおおおって夢だったああああははははは」

「テキシューテキシューソコナシハピスケやったれえええい」


眠気も醒める突然のテキシュー、


ETデスハリネズミⅡ:
ETはイーターの略。
硬くて鋭いニードルバルカンと
その身を丸めて突進するローリングニードルアタックに注意だ。


と既に戦闘中であった。

「ツーだろうがトゥーだろうが針が付いてちゃ一緒だろう親戚鼠!」

またも以前の針鼠と同じ戦法を取ってきた、キマイラから丸々となり走り距離を取ろうとする緑針鼠を、鋭く伸びてパッと展開した電磁スライムウィップの青網で狙い通りに捕まえ、


「「よっこら、せーーっのッ」」


「お前もソコナシハッピー左ストレート、だっ!」


パワーで勝る同じ料理方法で宙に引っ張り釣った針鼠の鼻っ柱に、出力を上げたキマイラの左ストレートをお見舞い炸裂。
スベるカラフル鼠花火と化し夜のハッピーな野を彩って爆散していった。


「すすすすすらっとギンガハッピース!」
「うおおおギンガハッピース!」

喜びのダブルギンガハッピースを披露したキマイラの搭乗者充瞳とスライム王女はコックピット内で通信ビジョンを笑い飛ばし合い。

「はははははげぇ、プテラノドンの編隊!? 死に損ないのチワワからの通信アラートだとぉ!? チワワおま……ってキマイラの射程じゃ抑えられねぇぞ!! おい王女さん狙撃するから銃になって!」

「そげきん? ジュー?」

「お城の大砲でいい!」

「無茶だよハピスケ! 鞭以外はむちむちの無茶ァァ!」

「なんでぇ!? なんでムチィ!?」

「なんかヤなのーーーーっ」

「なんかヤッてェェヤなら仕方ない、うん。──んなら! そうかッ! こういうシチュエーションはそうだロックにソコナシに理解ったぜ!」








嘴から赤い雷電を見境なく地に放ち東の森を舞うトリが確実に近付いて来ているのがもはや分かる。
その間にも何もしていなかった訳ではない。宴会で自慢してきたブツと王女の話を丁寧に聞きなおし、男はソコナシのプランを思いついたのであった。

キマイラが運び集め調達してきた彫刻美しい青い巨大石像。
それはなかなかにスライム女王と王女に似ているモノもあったり似ていない失敗作もあるようだ。

「ヤッちゃっていんだな?」

「ダイジョブ! みんな当たれば宝石よりハッピー上回る! つまりムザイ!」

「俺もそう思った! だっよっなァァァ、って有罪あんの!? ……ははははッ!!!」

網で巨像を覆い──腕を回しぐるぐるとキマイラの頭上に回転させていく。
リズムよく回し、青い残像がカゼを切り十分な遠心力を得て、

「任せろ俺は充瞳、ッだああああァァァ」

陸上のハンマー投げのようにタイミングよく──真っ直ぐ矢のように飛んだ巨大物体──青いハッピースをした宝石像は赤いメカプテラノドンの顔面へとクリーンヒット。

夜空に1羽の汚い爆発の模様と後からキラキラと映える青い煌めきが散りソラを演出、出来の良い打ち上げ花火のように咲き誇った。

「すすすすすらっとハッピーヒットおおおお、あはははキラっとエンターテイんメントおおおお!!! すらっとすっごーーいよハピスケェェ!!!」

「だから言ったろ俺はハピス……最高に冴えたハッピーな寝ぼけ眼してっからなァァ!!! ふわぁほわぁァァァ──はふっ……次だ次ィィ!」

「ハピスケハッピりおっけーぇ」


空の王者プテラノドンの編隊に対して出力全開の遠心力をつけ投げ放つ、様々なお色気ポーズを取る青い像の砲。
本日のトリを飾る赤い爆発とブルーダイヤモンドの煌めく夜空は、欠伸も醒める世界にひとつだけの美しい特大花火。

手の甲を見せ照らし合い分かち合う、赤みを帯びた淡い黄と、アオアオと瑞々しい、ギンガハッピース。

人間とスライム合わせてソコナシハッピーな平和な同盟が食い破ろうとする悪意を粉砕する────本日二度目のMVP────ハッピースライムヤードにこの2人在り。


「にしてもよぉミサイルのない潔いキマイラと死にかけのチワワだけじゃおそらくこの先やばくねぇか? …………まぁいっか勝ってるし! はははははキマイラ強いぞおおキマイラッ! チワワも地味にお疲れェェ」


またも開かれようとしていた王城での特盛フルーツサンドの宴会をやんわりと拒否し、
充瞳は少々必要な用事を済ませてからハッピーじゃない世界へと戻り二度目の勝利の夢を胸に……未だ紅く興奮冷めやらぬその瞳をふたつ閉じて…………それはそれは心地の良い眠りへと就いた。



夜戦後──未だ少しパジャマが汗でベタつく身体で……巨大合体機獣キマイラのパイロット充瞳は死んだようによく眠り気持ちの良い健やかな朝を迎える────『朝食はやっぱり欲しくなり後で城へとお邪魔しかっぱらってきた手土産のフルーツサンド。最高にハッピーだ』

しっかりと既に洗顔し、その黒い瞳とワラい合い新しい1日をスタートさせた学生は。

相変わらず生クリームたっぷりがクセになる朝食のフルーツサンドを頬張りながら、赤い表紙のノート、タコイカ学習帳に記載し直した資料に目を通していく。



現在の戦力
キマイラ:
(近接特化の主力、王女さんの鞭はまだまだ上手く使えそうだ。あの針鼠退治にはコイツじゃないとおそらく厳しいぜ)

死にかけのチワワスナイパー:
(プテラノドン対策の遠距離射撃と耳の聴音機が今のところ使えそうではある。どうにか復活させたいよな)

パイロット
俺:
(まぁソコナシのリーダーといえば俺だよな?)
スライム王女:
(不意にみせるギンガハッピースがドキッとかわいいけど、お前ライフルになってくれねぇのか? まいっかギンガハッピース可愛いし!)



「贅沢は言わねぇこの際機体はこれでいいや。だけどこれ以上襲撃されたら腕利きのメカニックやらドックがないとどうやってもヤベェよな? あの明るいスライムたちにロボットの修復ができるか? いやきっと出来ない、うん。寝ぼけてたがそういや思い返してみるとキマイラの電量は昼やったときより夜は少し回復してたっぽいが? 紫針鼠から食らった針が刺さってたし外観のダメージはそのままだった気がすんなぁ……。確認しにいった森に捨てたチワワは相変わらず死にかけだったし」

「他にもあのチワワが死んだ湖のほとりには気になる点やらおおきな丸々はあったが……てか浸かった? マジでねむかっほわぁぁふわぁ────ぁふ、まぁとりあえずサァこの巨大ハリネズミとプテラノドンの使い回し敵怪獣の夢幻がまだ続くってんなら……ヤルっきゃないよな! うん」

「でも俺はまだ義務教育な高校生、学校には行かねばならない! ふむはむはむじゅる──って事でハッピースライムヤードのみんなァフルーツサンドごちそっさん!」

やはりあの世界にはなかったブラックインスタントコーヒーに生クリームたっぷりのフルーツサンドの相性は最高にハッピーな組み合わせだった。

思わず目を閉じながらもぐもぐと唸る──口内の甘く苦い余韻にうなずく。


『テキシューテキシューハピスケ!』


未だ目を閉じ、頷きながら。

「若干15歳この歳で幻聴に悩まされるとはつらいぜ」


『テキシューだよテキシュー! テキシュー焼けたよー!』

「テキシューが焼けるかァァァプチシューでも焼いて食ってろおおおお! 今行く!!!」

頭に響く元気なテキシューのアラートで、床が焼けたように焦る学生は椅子をガラッと引き掛けていた臙脂色のブレザーを羽織り走る。

ダイニングから充瞳の部屋へと移動、スクランブルをお願い告げる鳴り止まない警報の元へとドタドタと急ぐ。

「おーーっす!!!」

見えてきた黒く四角いちいさな舞台は、エメラルドに発光。クリームで汚した口元ワラう学生に射す光がどこまでも広がっていく────────



▼▼▼
▽▽▽



▼東の森の湖のほとり▼



鳥の囀り散る青と緑木漏れ日、静かなユートピアに不似合いな──バチバチと雷電ほとばしる。


巨大カプセルドックの中をするりと抜けて湖を裂き出撃した巨大合体機獣キマイラ。

「おおお、やっぱり寝ぼけた読み通りにキマイラの電量全快と……破損ダメージ直ってるじゃねぇか! ソコナシにナイスだ昨日の、イヤ今日の充瞳さん!!!」

「おおおお、全快ハッピー! やったねハピスケとキマイラ!」

「だなァ! よっしゃーこれで手先が粘液のスライムたちをメカニックにする心配はいらねぇ! ──ってうおお!?」

頭部と右腕のグリッドコックピットでの通信ビジョンを介した雑談の間に……不意に青い空から近付いて来たプテラノドンの嘴雷撃が襲ったのは──壊れて佇む死にかけのチワワスナイパー。
慌てて行動に走るキマイラはギリギリでその身を挺し盾となり大事な大事な無人チワワユニットの防衛になんとか成功。

「──まじでやめやがれてめぇ俺のソコナシのプランをソッコーで潰す馬鹿か! トリ頭の化石野郎がァァ!」

「【電磁スライムウィップ】できたよー!」

「ナラッ余裕かました滑空化石に【電磁スライムウィップ】だ捕まえろ!!!」

「わかったハピスケしゃっとクルっとヤったルうううう」

青い鞭は宙低く居た嘴に素速く巻きつき捕らえて──大地に根付くとてつもなく強いチカラに赤い大トリは引っ張られ巻き取られ墜落していく──そしてソコからセレクトし繰り出すのは強烈な右の膝蹴り。

「既に命名、ソコナシニーハッピーブレイカーァァ、ってな!!!」

「ソコナシにィィィィハッピーィィィィ!!! やったやったあああはははは」

嘴粉砕顔面とクビ消し飛ぶ出力MAXの膝蹴りはバチバチと唸る。

「って喜びは爆発のアトォォ!!!」

天へと投げ捨てたクビ無しのトリはやがて爆発爆散。

「ふぃい序盤で2つしかない戦力減らしてたまるかよチワワと王城どっちもを死守だ王女!」

「ハピっとおっけーーぇ」

すぐさま充瞳とスライム王女は大きなキマイラを操り灰色のチワワを抱えより鬱蒼とした東の森の深みへと運び隠した。

王城とチワワを守るためにチワワの聴音機も当てにその視野高い紅い瞳を凝らし、ひとまず王城の方へと戻りながらの周囲の索敵を同時に始めた。
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