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19偶然と必然

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苦戦した末にしっかりとハッピースライムヤードにやってきた大きな異物であるETメンテマを撃破した。
運命というものは夢にも思ってもいないような偶然と必然の複雑に交錯する出会いでもあり、
それはまた数奇。
各々が振るサイコロの出目がそろったりそろわなかったり……はたまた宇宙ソラから投げ入れたり────────

合体機獣キマイラがみつめていた素晴らしい夢のような流れる夜模様はやがて、
どこからか多数いっぱい現れた。色とりどりの怪獣たちに支配されていく。


「冗談だろおい……!」
「これは……これは……!」
「メンタマいっぱいうっそーーーーーー!」

視界モニターを塗りつぶすように近付く光景の意味するところは多勢に無勢。
まさに怪獣イーターの大行進。


「これは……どうするんだヒトミくんっ!」
「どうするも何もっ!」

クールダウンしていた赤い瞳は再び熱帯びた。
五芒星を描くようにうなる鞭で迫りくるビームの雨を弾き、
掠め過ぎ去ろうとした大目玉の飛行物体をスライムネットで手早く捕まえた。

左からビームを撃ちながら不意に仕掛けてきたもう一体の緑のメンテマには、蛍の左手を光らせて夜に映える光量が弱点の目を瞑らせる、

勢いそのまま縛り付けた赤い目玉ハンマーを緑の目玉へと叩きつける、衝突し互いに一瞬してビリビリと爆散。

「ハピスケ、マッキーさっきのよりいけるよー!」
「たしかに先程のものより柔く遅く感じた」
「ならやるっきゃねぇなァ! いけるか王女マッキー所長!」
「まだ……もちろんだっ!」
「もちもちいけいけいったれええええ」

不意打ちを仕掛けてきた2体のメンテマの動きを見抜いた充瞳キマイラたちはあっさりと返り討ちに成功。
状況は決して楽ではないと思われる、だが初めに苦戦した黒いメンテマほどの強度は感じなかったそれは幸いな判断材料。
厳しいがさっきのように料理できればまだやれると判断したキマイラのパイロットたちは頼れるリーダーの意に同意し、一度王城の方へと向かった。

「とにかくどこでもいい撃ちまくれ眼帯ム、ポチャイム! 射撃許可だ、撃てば当たる!」
「キョカだだだだだああああああああああ」
「ぽっちゃりとりょーかいりーだーっ」

多勢に無勢だが温存させていた仲間はいる。
一度、眼帯ム操るチワワスナイパーとポチャイムのラビットモチットタンクと合流しキマイラの援護射撃をするようリーダー充瞳は支持を下した。


ドンドンと激しい砲撃音とレーザー音が空を焼いていく、撃てば当たるその表現は大袈裟ではなく無茶苦茶な隊列もなにもない入り乱れるプテラノドンとメンテマは墜落爆散誘爆していった。


丸まり地を抉りながら転がってきた紫の針鼠をかまわず振りぬいた左足で一蹴、怪獣蠢くやかましい空に突き刺ささり汚く散る。

ロケットランチャーで支援射撃しながら跳ねるカエルはここぞの集中繊細な鞭操作でその脚を結び青紐に繋いだカエルをそのまま地べたへと叩きつけた。

やがて仰向けの腹を膨らませて滑稽に爆散。

なおもつづく針鼠の特攻隊をキマイラは守備前線に立ち蹴り上げていく。

「んなろっ!!! これで何点だチクショー! まだまだシタからもきやがるぜ! 当たり前のことを言うけど……キリがない!」

力を合わせ奮闘するも敵の数は減っている気がしない、ぞくぞくと補充されるようにキリがない。
経験したことのない未曽有みぞうの大部隊大攻勢が大波のようにハッピースライムヤードに押し寄せてきている。

「ヒトミくん! 悔しいがここは城を放棄しひとまずどこかに後退をすべきだこのタコイカ2の情報通りならば丈夫なスライムたちならば城の大砲で遠くへ逃げることが可能だろう」
「了解マッキー所長たしかにそういう使い方がありましたねっ! じゃ伝令のスラショ」
「あぁっいっぱいハピスケェカエルのはらーーーーーーーー」

いっぱいの白い腹、色とりどりのカエルの小隊が息を合わせ一斉に跳び上がる──森から顔を出したロケットランチャーの不意の一斉射が宙を蛇行しながらキマイラへと収束していく。
キマイラはこの量を捌くには……瞬時に判断しダメージ覚悟で鞭で盾を作り構えた。
黒い頭頂から湯気立つほどに奮闘集中していた頭部パイロットは、だくだくと伝う汗に構わずチカラを込めてグリッド空間で踏ん張る。
見つめるお玉杓子ミサイルに、
信じるキマイラと盾に、


ぽたり…

ぽたり……

────ばばばばばばばばばばばっ


手に汗握るそして凍り付くような一瞬の間に……絶え間ない鋭い風音と連続した発射音を響かせる、視界の先は突然のハリセンボン。

前方にぷすりと突き刺さっていくキマイラのボディから流れる白と黒の広範囲バルカンが、破裂させていく……痛烈な刺激を受けたお玉杓子が膨らみ誘爆し次々と一斉に散っていく。

カラフル爆発花火が視界モニターを彩っている。

ベポン、

台形のビジョンに映る臙脂色の学生服はすっかりパイロットスーツの代わりだ。
それを着こなす凛とした姿勢、黒い瞳と黒いロングヘアーといえばもう真っ先に彼女のことを彼は思い浮かべるだろう。

「練習していた左脚にいくわ」

「沼津縫栄委員長おおおおおおおおおおおおおおおお」
「イインチョイインチョーーーーー」
「そ、ソコナシの……み、みかたか!!!」

「……きっとフルネームで呼んでいる暇はないわ、状況はいいから指示をして、充瞳リーダー」

おかしなテンションと熱気ではしゃぎトブ通信ビジョンをながめて────
至って冷静クールに、投げ込まれた状況がカオスであれひとり動じないように。
汗だくの充瞳の顔を真っ直ぐに見つめている。

思わぬ援軍、ここぞの援軍。
乗り込んだボディから手早くキマイラの左脚へと移る。
黒と白の長針と暗褐色の基本色、ヤマアラシの左脚となり、キマイラは使い慣れた新たなホノウをその身に宿し歓喜に唸る。

底無高校1年B組クラス委員長沼津縫栄、おなじく副委員長充瞳ハッピースライムヤードのピンチに颯爽と駆けつけた。
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