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第8話 ラヴ&パンケーキ

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 吊り下げられた教室プレートには【決闘!】と書かれている、そのふざけた校内の一室の戸を引き開けると。白いもやの薄膜で中が分からない。唾を飲み込み進入するとそこには想像していたよりも広々とした空間が広がっていた。

 入るや否や激しい爆発音が耳を突き抜けた。いきなりの出来事に警戒した乙参組の3人。

 中央の四角い石のステージには、おそらく先ほどの爆発音で発生した爆煙が立ち込めており、やがて明かされていく2人のシルエット。

「はぁはぁ……くっ……」

「おいおいの、おい。まだ私の実力の内の1割も出してないですよお客様」

「くっ……」

 白い刃はカラリと手から離れ落ち。石床にひどく消耗し膝を着いていた。一方で倒した相手を前に余裕を見せ佇むすらりとしたクラシックなメイド服は。

「あ、ナイスタイミング彼氏様くーん、みってるーーキミの彼女様はわたしがぼっこぼこにしといたからねええええクソ馬鹿バカップルがよおおおお」

 クールで丁寧な佇まいから一変、ぞろぞろと入って来た来客、月無五百里に気付き元気よく機械的な動きで遠方にいた彼に手を振った。

「メプルさん!!」

 月無五百里はセーラー服の彼女を見つけると手すりを飛び越えて観客席らしき見晴らしの良い場から飛び降りていた。

 慌てて石のステージに着地し、痺れた足でもつれながらも走り彼女の元へと辿り着きよろよろと立ち上がったメプルを抱き受け止めた。

「はぁはぁ……月無くん……」

 ひどく疲れたメプルは五百里の胸にもたれかかり息を整える。そんな彼女にかなしみ五百里は更にぎゅっと抱き止めた。

「あーあー、彼氏様の登場ですねそうですね。甘ったるいねェ糞みたいな展開だねェ」

「るせぇよ根暗メイド」

「……はい?」

 バッ、と振り返った強い黒瞳は両手を前に組み佇む女のベージュ色の目を睨みつけ凄んだ。

「人の幸せ妬んでラヴラヴカップルに特大パンケーキ提供してんじゃねぇよこの糞バカメイド店員! しかも税込4444円ってなんだよギャグにしてもしょーもねぇよ! パンケーキごときでぼったくりじゃねぇか! 一連、恨みつらみをヤッチマッターに晒して終わらせてやるよお前の根暗人生!」

「ほ、ほ、ほえあああァァァ!?!?」

 ずらずらと吐き出された言葉、それがグサリぐさりと離れたクールメイドに突き刺さった。無表情な鉄仮面は一変、言葉とも言えないやり場のない驚きを五百里に凄まれ漏らしてしまった。

「それはしゃれオツなパンケーキ屋店員失格ぐみぃ」

「パンケーキ屋ってイチャイチャとかそういう場所だしねーどちかというと人間失格ぅ? あははやば」

 この広々とした空間の上階で見学していた者たちはざわつき、突如乱入して来た男に注目が集まる。

「それがヤなら、残飯パンケーキひとりで蝋燭おっ立てて食べてろ」

「お客様……コロッッッスゥゥゥ!!!!」
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