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ゴーレムセメントで生成された動かない白い柱状の物体には、1から9のヒットマークが張られている。
その読み上げられていく1から9のヒットマークを瞬時順番に攻撃するという、池原が考案した戦闘時の判断力を重点的に鍛えるトレーニング法。既にトレーニングルームにいたピネスと、呼ばれて合流した戦う執事のタガヤは、次々と耳に流れる番号の通りに白柱のターゲットに、それぞれの剣と靴で攻撃を当てていった。
「37673です!」
「ハイっ!!」
「ちょなんてーー!!」
風紀委員部部長のハッキリとした声で読み上げられた数字を攻撃。タガヤの靴跡は正確に読まれた番号の順を射抜いた。小角部長が手持つビンゴシートのようなものには、すべての番号に丸がつけられ全てをヒットさせるまでのタイムが同時に表示された。
「紫さんは丁寧でも遅いのです! エッチアイはそもそも全然違うのです!!」
白柱を爆砕し誤魔化したものの、もう一枚のシートを見た小角の目は欺けず。言われた番号の通りに攻撃できないひよっこの男子を、小角はバッサリと叱った。
「ぅーー……まじでこんがらがる……どうすりゃいんだこれ……! っておわ!?」
「464897358なのっ!!!」
「はっ、はいっ!!」
「〝なの〟はいらねぇっ!! ってなげぇんだよ!!!」
頭を使いながら体を動かすものがいれば、頭を使いルールを練り上げるものもいる。
騒がしくなったトレーニング風景を見つめる登別と池原の2人は、真四角の簡易椅子に座りながら【異能】のルールを再度お互いに確認していく。
「さいしょの異能は柔らかい、ねぇ。あたしは、なんか味付けすればするほどに、融通の利かないガチガチになってきた気もするんだけどねぇ」
「一度自分の中で決めたルール、願い。いえ、アソビといった方が正しいかしら。例えばじゃんけん、カード、料理、竹馬、冷蔵庫、ランタン、ネクロマンシー、きのこ狩り。一度ダンジョンで始めたアソビを自分で終わらせることは難しいのだと思うわ。深入りすればするほどに」
「ランタン、冷蔵庫、ネクロマンすぃーが遊びかどうかはおいといて、まぁまぁそんな感覚はあたしも分かるところだね。あたしの場合は運がよかったかな。漠然とした戦うことを生業にした強さ→感情にしわけて→ゲームチックなシステムに組み込む、っていう風に、やらかい未熟なうちに神様どちら様からもらえた無味無臭のこの期待感に満ちた飴を練り上げていけたんだからねぇ。いやーおかげさまさまだよ、何事も上手い人の真似をするところからだねぇ。あたしの手探りだけじゃこうも早くはそこへと辿り着けなかったよ」
「うん、そうね。願いが異能になる……ならハッキリとした願いほど強力だけど、頑固でもある。だから異能があやふやでやらかい内に一番プレイしやすい追加願を設定すればいいと思ったの。だからこそカード遊び、これは絶対に外せないとおもったわ」
「そしてカードのくくりにじゃんけんの絵柄もしまったってわけだー。いやー感心感心、そんな裏技を序盤で見つけだすのはおたく、やるねぇ」
「ええ、でも見つけたのは私だけじゃなく不黒文校長先生よ。私がダンジョンに志願した時には、始めから用意していたように使う装備や戦い方にいたるまでの相談に乗ってくれたわ」
「あはは、ま、そうだろうねぇ。あの校長様は序盤にいたら嬉しいはずのあたしも出し惜しみにするほどだ。普段ふざけているようでヘンなところで用心深いからねぇ。おかげで割といい感じにじっくり新しい戦闘システムにも対応できたよ。売れ残りの武闘家のはしくれも、ねっ! ん──でも、普通はあれだねぇ? ベースとなる願いってのがあるからある程度決められた遊びの範疇、既に味付けされた能力を駆使して戦って成長してくわけだ? 汎用性の高そうな【カード】が異能になるのは戦闘のプロ目線で見るとかなりお得なようにみえるんだけど? 小っ恥ずかしいかもしれないけど参考までに、元の願いとか聞かせてもらってもいいかんじかな?」
「そうね────私には願いらしい願いはないわ。ただおもしろくなりそうなことを、願ってしているだけよ」
願いのない人間、願われない人間などいるのだろうか。
池原は彼女の言葉と少し翳ったようにみえた表情に、わずかな奇妙なものを感じた。
しかし雇われのイチ用務員が、在籍する女子生徒の深掘りはしないものだ。池原叉鬼が聞きたいことはミステリアスな彼女の過去エピソードではなく、まだ解き明かされていない細かなルールだけだ。
池原と登別は、異能についての理解を語り合い深めあった。
その読み上げられていく1から9のヒットマークを瞬時順番に攻撃するという、池原が考案した戦闘時の判断力を重点的に鍛えるトレーニング法。既にトレーニングルームにいたピネスと、呼ばれて合流した戦う執事のタガヤは、次々と耳に流れる番号の通りに白柱のターゲットに、それぞれの剣と靴で攻撃を当てていった。
「37673です!」
「ハイっ!!」
「ちょなんてーー!!」
風紀委員部部長のハッキリとした声で読み上げられた数字を攻撃。タガヤの靴跡は正確に読まれた番号の順を射抜いた。小角部長が手持つビンゴシートのようなものには、すべての番号に丸がつけられ全てをヒットさせるまでのタイムが同時に表示された。
「紫さんは丁寧でも遅いのです! エッチアイはそもそも全然違うのです!!」
白柱を爆砕し誤魔化したものの、もう一枚のシートを見た小角の目は欺けず。言われた番号の通りに攻撃できないひよっこの男子を、小角はバッサリと叱った。
「ぅーー……まじでこんがらがる……どうすりゃいんだこれ……! っておわ!?」
「464897358なのっ!!!」
「はっ、はいっ!!」
「〝なの〟はいらねぇっ!! ってなげぇんだよ!!!」
頭を使いながら体を動かすものがいれば、頭を使いルールを練り上げるものもいる。
騒がしくなったトレーニング風景を見つめる登別と池原の2人は、真四角の簡易椅子に座りながら【異能】のルールを再度お互いに確認していく。
「さいしょの異能は柔らかい、ねぇ。あたしは、なんか味付けすればするほどに、融通の利かないガチガチになってきた気もするんだけどねぇ」
「一度自分の中で決めたルール、願い。いえ、アソビといった方が正しいかしら。例えばじゃんけん、カード、料理、竹馬、冷蔵庫、ランタン、ネクロマンシー、きのこ狩り。一度ダンジョンで始めたアソビを自分で終わらせることは難しいのだと思うわ。深入りすればするほどに」
「ランタン、冷蔵庫、ネクロマンすぃーが遊びかどうかはおいといて、まぁまぁそんな感覚はあたしも分かるところだね。あたしの場合は運がよかったかな。漠然とした戦うことを生業にした強さ→感情にしわけて→ゲームチックなシステムに組み込む、っていう風に、やらかい未熟なうちに神様どちら様からもらえた無味無臭のこの期待感に満ちた飴を練り上げていけたんだからねぇ。いやーおかげさまさまだよ、何事も上手い人の真似をするところからだねぇ。あたしの手探りだけじゃこうも早くはそこへと辿り着けなかったよ」
「うん、そうね。願いが異能になる……ならハッキリとした願いほど強力だけど、頑固でもある。だから異能があやふやでやらかい内に一番プレイしやすい追加願を設定すればいいと思ったの。だからこそカード遊び、これは絶対に外せないとおもったわ」
「そしてカードのくくりにじゃんけんの絵柄もしまったってわけだー。いやー感心感心、そんな裏技を序盤で見つけだすのはおたく、やるねぇ」
「ええ、でも見つけたのは私だけじゃなく不黒文校長先生よ。私がダンジョンに志願した時には、始めから用意していたように使う装備や戦い方にいたるまでの相談に乗ってくれたわ」
「あはは、ま、そうだろうねぇ。あの校長様は序盤にいたら嬉しいはずのあたしも出し惜しみにするほどだ。普段ふざけているようでヘンなところで用心深いからねぇ。おかげで割といい感じにじっくり新しい戦闘システムにも対応できたよ。売れ残りの武闘家のはしくれも、ねっ! ん──でも、普通はあれだねぇ? ベースとなる願いってのがあるからある程度決められた遊びの範疇、既に味付けされた能力を駆使して戦って成長してくわけだ? 汎用性の高そうな【カード】が異能になるのは戦闘のプロ目線で見るとかなりお得なようにみえるんだけど? 小っ恥ずかしいかもしれないけど参考までに、元の願いとか聞かせてもらってもいいかんじかな?」
「そうね────私には願いらしい願いはないわ。ただおもしろくなりそうなことを、願ってしているだけよ」
願いのない人間、願われない人間などいるのだろうか。
池原は彼女の言葉と少し翳ったようにみえた表情に、わずかな奇妙なものを感じた。
しかし雇われのイチ用務員が、在籍する女子生徒の深掘りはしないものだ。池原叉鬼が聞きたいことはミステリアスな彼女の過去エピソードではなく、まだ解き明かされていない細かなルールだけだ。
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