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折れた柱はもう何本目だろうか。整えられていた闘いの舞台は壊れゆき、灰色に煙りながら不完全さを徐々に増していく。
「何を狙っているのかは知らないが、そのままつづけるのは勧めはしない。命の使い方は、拘りに足を取られるより常に見返りの大きい方が良い」
「はは、そうだね」
その身が軽々と柱に打ち返された、デジャブかと思えるほどに無謀に見えただろう。妖しい紫の魔力のインクを全身に被ったからといって、その騎士との単純な力の差は埋めようがない。
むしろ反撃を受ければ自分にもデメリットもある、この特殊魔力を纏ったスタイル。魔力暴走を引き起こすことに特化したこの紫鬼のスタイルは、諸刃の剣。自分にもその願は適応される。
大剣を操るナイトに接近戦ではかなわず、魔力暴走を引き起こされ池原自身の魔力総量が逆に減らされてしまった結果は明らかだ。
鉄兜の男もわざわざ忠告をする程に、これ以上打ち込んでも蒔いた種子で花が咲くことはなく意味がない……単調かつ稚拙な攻めに見えたということだ。
「じゃあこんなのは、どうかな────【愛-ism】」
そんな鉄兜の男のご要望に応えてか、池原は息を吐き、考えを変えた。
まだまだ終わりじゃない……帽子を上に飛ばしてまた深くかぶった。すると池原は紫のスタイルを諦めたのか、身にする作業着が今度はファンシーな桜色に染まっていった。
変わり種にも思えるこの奇抜なカラーは、女神戦でしれっとピネスに協力した時のような遠隔操作に長けたスタイル、すなわち────
「あたしが好きなキャラはあたしと限らないの、よっ!」
鉄兜のお相手へと真っ直ぐに向けた刺又はそのU字の先から魔力のマナ粒子を集約し、いきなり桜色の弾を発射した。
しかし不意打ち気味に打ち出されたその二連弾は、一つは地にボールのように叩きつけられ、一つは大剣にタイミングよく両断された。
その瞬間、桜の花がパッと一面に咲く。サプライズのくす玉が割られたように散りゆき、迂闊に大剣で斬り裂いでしまった鉄兜の視界を覆う。
その鮮やかな目くらましに乗じて、鉄兜の裏に回った本体本命が仕掛けた。
しかし、鉄兜の扱う変幻自在の武器をこの奇策の成功を持ってしてもまだ足りず、攻略できない。
【メタルツール】は魔力を流され状況に応じた形を即座に成した。それは柄を中央に配置した双頭剣、【リブラソード】である。両刃仕様になり天秤のようにバランスの取れたそのソードに、間に合わない死角はない。またも池原のアタックは通じず、強襲し刺股の武器を叩き込んだ彼女の軽い体が、いとも容易く鉄兜の膂力に吹き飛ばされる。
メタルツールは使いよう。池原の見せた後ろからの強襲も鉄兜の男による完全なる対策と反応により、収穫はゼロに──。
「そういった魔法の類も想定してこの武器にした。武器にくらべて派手なものはそれだけ消耗する。へばった魔術師ほどてご──」
ご高説を垂れようとした鉄兜の首を下から打ったのは、────地に眠っていたもう一つのサプライズのくす玉。
「パラレル異能解放────【鬼愛-ism】……悪いけどあたしゃ魔王を倒すような天才魔術師じゃないのよ。馬鹿みたいな拳を振り翳す女神に負けて、ぽっと出の年下に負けて、あげく雇われ主にも負けちゃって、あたしの強みは何なのか一晩じっくり考えたから、ぜひともマァマァ味わって、ねっ!!」
この機を待っていたとばかりに、池原は新しい情報を次々に投入。身に纏う作業着は桜色を維持しつつ、そこに新たに以前見せた紫を混ぜたマーブル状に混沌と染まった。ブク校に在籍する魔術師たちと訓練を重ねた巧みな魔力コントロールで、規則なく澱んでいたマーブル状の絵はやがて、はっきりと半々に分つ鮮やかなツートンカラーに整理された。
池原叉鬼は諦めが悪い。斬新かつ鮮烈な異能を呼び覚まし、ようやく良い一発を浴びせた鉄兜の男に、一気に仕掛けた。
「何を狙っているのかは知らないが、そのままつづけるのは勧めはしない。命の使い方は、拘りに足を取られるより常に見返りの大きい方が良い」
「はは、そうだね」
その身が軽々と柱に打ち返された、デジャブかと思えるほどに無謀に見えただろう。妖しい紫の魔力のインクを全身に被ったからといって、その騎士との単純な力の差は埋めようがない。
むしろ反撃を受ければ自分にもデメリットもある、この特殊魔力を纏ったスタイル。魔力暴走を引き起こすことに特化したこの紫鬼のスタイルは、諸刃の剣。自分にもその願は適応される。
大剣を操るナイトに接近戦ではかなわず、魔力暴走を引き起こされ池原自身の魔力総量が逆に減らされてしまった結果は明らかだ。
鉄兜の男もわざわざ忠告をする程に、これ以上打ち込んでも蒔いた種子で花が咲くことはなく意味がない……単調かつ稚拙な攻めに見えたということだ。
「じゃあこんなのは、どうかな────【愛-ism】」
そんな鉄兜の男のご要望に応えてか、池原は息を吐き、考えを変えた。
まだまだ終わりじゃない……帽子を上に飛ばしてまた深くかぶった。すると池原は紫のスタイルを諦めたのか、身にする作業着が今度はファンシーな桜色に染まっていった。
変わり種にも思えるこの奇抜なカラーは、女神戦でしれっとピネスに協力した時のような遠隔操作に長けたスタイル、すなわち────
「あたしが好きなキャラはあたしと限らないの、よっ!」
鉄兜のお相手へと真っ直ぐに向けた刺又はそのU字の先から魔力のマナ粒子を集約し、いきなり桜色の弾を発射した。
しかし不意打ち気味に打ち出されたその二連弾は、一つは地にボールのように叩きつけられ、一つは大剣にタイミングよく両断された。
その瞬間、桜の花がパッと一面に咲く。サプライズのくす玉が割られたように散りゆき、迂闊に大剣で斬り裂いでしまった鉄兜の視界を覆う。
その鮮やかな目くらましに乗じて、鉄兜の裏に回った本体本命が仕掛けた。
しかし、鉄兜の扱う変幻自在の武器をこの奇策の成功を持ってしてもまだ足りず、攻略できない。
【メタルツール】は魔力を流され状況に応じた形を即座に成した。それは柄を中央に配置した双頭剣、【リブラソード】である。両刃仕様になり天秤のようにバランスの取れたそのソードに、間に合わない死角はない。またも池原のアタックは通じず、強襲し刺股の武器を叩き込んだ彼女の軽い体が、いとも容易く鉄兜の膂力に吹き飛ばされる。
メタルツールは使いよう。池原の見せた後ろからの強襲も鉄兜の男による完全なる対策と反応により、収穫はゼロに──。
「そういった魔法の類も想定してこの武器にした。武器にくらべて派手なものはそれだけ消耗する。へばった魔術師ほどてご──」
ご高説を垂れようとした鉄兜の首を下から打ったのは、────地に眠っていたもう一つのサプライズのくす玉。
「パラレル異能解放────【鬼愛-ism】……悪いけどあたしゃ魔王を倒すような天才魔術師じゃないのよ。馬鹿みたいな拳を振り翳す女神に負けて、ぽっと出の年下に負けて、あげく雇われ主にも負けちゃって、あたしの強みは何なのか一晩じっくり考えたから、ぜひともマァマァ味わって、ねっ!!」
この機を待っていたとばかりに、池原は新しい情報を次々に投入。身に纏う作業着は桜色を維持しつつ、そこに新たに以前見せた紫を混ぜたマーブル状に混沌と染まった。ブク校に在籍する魔術師たちと訓練を重ねた巧みな魔力コントロールで、規則なく澱んでいたマーブル状の絵はやがて、はっきりと半々に分つ鮮やかなツートンカラーに整理された。
池原叉鬼は諦めが悪い。斬新かつ鮮烈な異能を呼び覚まし、ようやく良い一発を浴びせた鉄兜の男に、一気に仕掛けた。
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