【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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「意志を持つ攻撃……精霊術か!」

「ざーんねんっ、そんなに澄み切った女の子じゃございません! しみったれた武闘家は、ねっ!」

 今の池原は【鬼-ism】と【愛-ism】どちらの尖った性能も並列して引き出す、いわばパラレル接続をしている。今までのただのルール分けた異能を一つずつ確かに発揮する一本線のシリアル接続とはちがい、パラレル接続は二本を同時に扱う。

 これをちなんで《パラレル異能》と名付けた。しかしその分、この二つの異能の混在する状態を維持する難易度は一本の異能を用いていた時よりも段違いに跳ね上がる。登別海が以前、黒騎士相手に見せた【チョキ×パー】の合体じゃんけん魔法のように、複数のルールを同時に扱い掛け合わせる高等技術を、池原叉鬼も学び今成し遂げたのであった。

 精霊術と見紛うほどに意志を持つように柱を跳ねる桜餅弾と、隙を突いた刺又武器による接近戦。ギアを上げた用務員のそのコンビネーションに打って変わって手を焼くのは、これまで完全に近い処理をしてきた鉄兜のナイト。

 そして敵である池原叉鬼の完全は〝これ〟だと……弾と刺又の2人がかりに打たれ襲われながら、鉄兜は理解わからざるを得ない。そんな自分を倒すために取っておいたと言わんばかりの怒涛の攻めを見せつけられている。

 しかし紫とピンク、このような二種の力を使っているであろう高度な芸当、長く続ければ魔力が保たない。いずれ尽きて消える切り札であるとも同時に悟る。ダメージをもらいながらも鉄兜の男が選んだ選択肢は────

「受けきる、────来いっどこからでも」

 勢いを増した彼女の全力……その完全なる力を完全に受けきることであった。そして手に取る武器【メタルツール】も、今度は天秤剣を崩し──防御に優れた大きな銀色の【ラウンドシールド】に変形させた。

 当然これだけではないとも鉄兜の男は見越した。これだけでは命を刈り取るには不十分。チェックメイトのイチゲキがどこかで来る……そう確信と期待をする。

 跳弾していた桜色の魔法はやはり内蔵する魔力が失せ消えた。どちらともの計算通りに、今、妖しく燃えたぎる紫と燦々と光る桜色の魔力を纏うツートンカラーの戦士が、正面から突っ込んで行く。

 これが最後の攻防ならば、最後に相応しい勇ましき小細工なしの正面突破。

 触れ合う瞬間にどのような衝撃が、どんな反応が起こるのか、常人より優れたその肉体で堂々たるナイトは盾を構える。

 だが鉄兜の視界から彼女を覗くナイトはぶつかった瞬間まで気付かない、これはチェックメイトではない、布石の何手目かにすぎないことに。


魔力暴走マジッククラッシュ


 一定以上の打撃を与え発動する【鬼-ism】の特性であり、内在魔力が爆ぜる現象。積もり積もっていたカウントダウンは今ここでゼロを迎えた──しかしその未知の現象の餌食になったのは、屈強なナイトの肉体の方ではなく〝武器〟の方である。

 狙っていたのは武器。池原はあの女神ガイア同様にいくら打っても魔力量の底の見えない不死身のナイトの方ではなく、ナイトの扱うその武器の方が脆弱であることに気付いた。さらに、その武器は魔力伝導率の良い変幻自在の武器メタルツール、ならば打ち続け打たれ続け、先に崩れるのは──その特殊武器である。

「──!?」

「【怒-ism】アッタマってきたぜぇ、はは、いく、ゾっ!!!」

 マジッククラッシュしたメタルツールの銀は、魔力コントロールが著しく乱れた末に、成していたその盾の形を保てず、沸騰した液体のように周囲に飛び散り爆ぜた。

 そしてまさかの方法で盾を突破した、諦めの悪い用務員の打ち出す次の一手は────真っ赤に染まる、怒りのスタイル。小細工不要の人間に備わる一番強い感情を今、形相を深め露わにし、策も何も投げ捨てたパワースタイルで突き抜ける。

 武器を失った角落ちのナイトに怒りパワーを上げた用務員、本気に染まる戦闘のプロが負けるはずがない。テンション高ぶる足技と、合わせて放つ刺又棒術の荒ぶる連打が決まり、そのまま上空へと体躯に勝る騎士を打ち上げていく。

「【楽隕らくいん】!!! ゾっと!!!」

 そして魔力で編んだ赤い紐に繋げて、一気に打ちつけるは投げ技の【楽隕】。空から地へと騎士は落ち、怒りのテンションそのままに池原は刺又を天から槍のように投げ捨てた。

 さらに念を入れて地へとしっかり今投げ捨てた敵を拘束する。刺又本来の得意とする使い方が、轟音の後に突き刺さった。

 鉄兜の騎士の首を、突き刺さるU字部と接する地で首輪をした。さらにその赤熱する刺股から、赤い魔力糸が繭の糸を吐くようにしゅるしゅると展開される。鉄兜の男の黒いスーツ姿が見えなくなるほどに、何重にも赤く赤く巻き付け敵を拘束した。

 そして拘束したからには、──攻撃しなければならない。敵はその程度の縛りで根を上げる弱者ではない。

「異能全開! 【クリティカル-ism】……よォォおおおおおおおお!!!」

 叫ぶ腹、突き出す臍から捻りだすように生み出したのは、特大の弾。

 激しい連撃ショーの終わり、それを彩る最後のカラーチェンジは、深緑に光り輝くエメラルドグリーン。真っ赤な作業着を塗り替え、溢れる魔力に染まっていく。

 そして今、宙からボレーで捉え蹴りだすのは、己と相手の感情にびしばし伝う──確信の弾、己の血肉に宿るありったけの魔力を注ぎ込んだクリティカルボール。


「これが完全なるアタシの────────【エメラルド:エクスプロージョン】……なんて、ねっ」


【鬼-ism】
【愛-ism】
【鬼愛-ism】
【怒-ism】
そして
数多の願と感情を経て導き生み出された【幸-ism】

 狙いは格上の相手をチェックメイトへと誘う特大のクリティカル。その大技を料理つくるための丹念な全ての下準備は済んだ。

 荒ぶる感情と整然とした願の塊は、地にへばりつく鉄兜のターゲットへと向かい蹴り落とされた。

 二つの魔力、陰気と陽気、厳しい戦闘を通し密かに塩梅良くブレンド配合されたそれらの気は、宙から術者に蹴り出されながら、しっかりこねられ混ざり合い互いを利用し合う。

 そして互いのパワーを譲り合うことなく反応と変化をつづけ、熱され燃え上がり膨張する。

 着弾した瞬間からやがて次第に、巨大な魔力ドームを形成し爆発する。

 いつまでもつづく翠の閃光は、全力でひねりだした勝利の輝き。

 完全なる用務員、池原叉鬼、ここにあり!
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