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「さてはじまっておりますべらぼぅに続いております丘梨栄枯のブルーシートブルースカイカレーライスストーリー飯第1話シルファンカレー」
「では、まずはおさらい、既に先程集めたウルフパックをパパっと剥いて調理したので、ええ、ごらん」

【FS】レッドウルフ肉×1
【FS】グレーウルフテイル肉×2
【FS】グレーウルフ肉×3

「はい、では使っていきます、はい、はい、ではパパッとよろしくお願いしますね」

黒髪のどこか一味冴えない青年、
この物語の絶対的主人公である丘梨栄枯、
白とグレー混じりの髪に洒落た年季のあるグレーの道衣の男は。

AIカメラは自動で判断し撮影していく。

一斉に指示通りにパパッと食材カードを使用していった。出てくる、出てくる、召喚され出てくる。

ぽんぽんぽんと、敷かれたブルーシートに並べられていく白い美しい紋様を描く赤の肉の宝石が。
メインのその宝石の他にも食材を召喚、カラフルでワクワクな漬物の緑や赤と黄の真空パック。

広がる緑の地、
どこまでも青い空、
白い泉をバックにブルーシートの上に3人はポーズを決めた。

中央、死鳥舎様にカメラ目線、得意気にいや妖しげに微笑み突き刺すメインウェポンのイエローフライパン。

黒髪をぐしゃぐしゃとかきながら苦い冴えない顔、ホットプレートをよっこらしょっと、意外にも力もち。吐い信者に指定された構図でポーズを決める。

後方彼氏ヅラ立ちの元祖とはこの男、あえて前には出ない四歩程下がって腕を組む。にっこりと目を細めて緑の大地に佇む、白髪の──────。



42789ぼこ:こいつらをぶん殴る方法
42999ぼこ:↑ぶん殴りにいけなかったくせにぃ
43178ぼこ:だれあんどだれ&だれ?
43356ぼこ:丘梨栄枯と愉快な仲間たち
43654ぼこ:ブルーシートどっから出てきた
43788ぼこ:老人おるんやけど
43919ぼこ:仙人かな?
44277ぼこ:きったねぇ仙人の存在感がやばいんですけど
44441ぼこ:おぬし、山から下りてきた?
44780ぼこ:肉吊るした山小屋に住んでそう
45011ぼこ:これからこいつらでカレーを作るという恐怖
45222ぼこ:仙人が作るカレーはべらぼぅに旨そう
45301ぼこ:なぞの肉入ってそう
45407ぼこ:既にはいってるんですが
45411ぼこ:誰か手前のやつにも触れてやれ
45467ぼこ:オーラが無い
45486ぼこ:なんで来た?
45600ぼこ:やる気ないなら帰ってどぞ
45613ぼこ:後方立ち仙人に全部もってかれた人
45772ぼこ:ホットプレート持って来る馬鹿
45889ぼこ:こいつホットプレートでたたかうらしいな
46018ぼこ:ぷらぷら垂れ下がるコンセントは哀愁
46091ぼこ:仙人に対抗してホットプレート持ってきた悲しい男
46345ぼこ:死のダンジョン?
46680ぼこ:ピクニックかな
46805ぼこ:現実がこのメンツでピクニックすることある?
46902ぼこ:強制参加型って味方だったヤツが急に敵になるから怖いよな
46904ぼこ:命名ホットプレートマン
47000ぼこ:ホットプレートマンがんばれ!


構築した死鳥舎強制参加ガチャシステムによりひみつのパスワードは送り付けられた。
送り付けられたが最後、入力する意思は関係ない。
丘梨栄枯のいる死のダンジョンひみつの場へと導かれた表情テンションの明確に異なる青年と仙人。
これからこの3人でカレーを作るのだと彼女、吐い信者は言う。
パパッとがモットーである彼女はこの場にある食材と機材をしばし眺め思い立ち……さっそく準備に取り掛かった。


「………………」

じゅーじゅーと肉が焼けていく。
冴えない目がじーっとそれを現実から逃避するような魂の抜けた表情で眺めている。


▼有料暴走▼

48754ぼこ:65点
48809ぼこ:47点
48890ぼこ:52
48902ぼこ:42てん
48921ぼこ:38点
48932ぼこ:69点
48956ぼこ:おまえら本当最悪だな
48994ぼこ:おいそろそろ返せ59点


「………………」

黒いホットプレート上の肉、まだ赤い上部にブラックな果物ナイフを慎重にブッ刺しぎこちない手つきで大きな肉塊を裏返した。

見えてきた育てた裏の表情、

ホットプレートの規則正しい模様が焼き付いた焼き目、
焦茶色のいい感じの漢らしい焼き目が姿をあらわした。
きらきらと静かに泡立つ脂の光が死鳥舎の食欲をそそる。


▼有料暴走▼

49004ぼこ:100点
49036ぼこ:99点
49078ぼこ:旨そう89点
49091ぼこ:急にはねあがったな
49129ぼこ:何の点数かは言ってないからな
49160ぼこ:100!


「はぁ…………」

どこかで売ってそうでどこにも売っていないせたみずいろのカッターシャツがトレードマーク、その場にいても存在感が塩のように薄い男は小さく息を吐いたつもりでいた。


▼有料暴走▼

49189ぼこ:きこえてるぞ
49214ぼこ:ため息吐くなぶっ飛ばすぞ
49240ぼこ:ママに服買ってもらえ
49265ぼこ:青年にくを焼く
49308ぼこ:てかこいつのホットプレートどうなってんの
49406ぼこ:地面にコンセント刺さってて笑う
49478ぼこ:プラグな
49599ぼこ:そりゃガイアにコンセント接続すればガイアパワーでホットプレートもあったまるよね!
49631ぼこ:こいつ頭おかしいやろ
49666ぼこ:薄い奴がうっすい能力もってどすんだおい
49677ぼこ:ずいぶんと家庭的な能力で
49683ぼこ:こんなおバカな珍スキル早々みない
49690ぼこ:↑傘ミサイル飛ばしたり掃除機で暴れたりはフツウだもんな
49701ぼこ:能力ホットプレートプラグ刺し
49862ぼこ:あったまの悪い能力で笑った
49917ぼこ:まぁあったまるんだけどな


肉を焼きつつぼーっと眺めていた青いビジョンに流れる白いぼこは自分宛てのモノであると……。
好き勝手なことを現世から死のダンジョンまでぼこぼこチューブを介して書き込まれている、普段目立つことのない青年は一気に浴びたこの吐い信者不在の吐い信のスポットライトに焼かれつつも苦笑いに変換してやりすごした。

ものの、

「あんたらなぁ……」

そう呆れ気味に言葉を発すると、ナイフをすこしだけ力を込めてブッ刺し青年は肉ブロックの裏面を確認していった。


▼有料暴走▼

49990ぼこ:おっ、反抗期か?
50007ぼこ:あんたらなぁ♪
50031ぼこ:あんたらなぁ(肉裏面チラ見)
50111ぼこ:あんたねぇ!
50207ぼこ:あんたやったわね!
50331ぼこ:完全に玩具にされてるな
50400ぼこ:モブが肉焼いて50000ぼこ達成
50451ぼこ:責任とって全裸でぼこぼこかまぼこの舞い決定だなこいつ
50456ぼこ:てかこれ有料放送なのしってた?
50654ぼこ:青年にくを焼く(有料)
50711ぼこ:肉焼いてる映像で金取る時代か
50721ぼこ:あ、全国の焼肉店のおやじの敵だこいつ
50832ぼこ:無言で肉焼いて金貰ってこいつ仕事舐めてるね
50902ぼこ:全国の牛さんに謝れよ!
50993ぼこ:ウルフ「…………」
51011ぼこ:こいつ何しに来たんや?
51067ぼこ:そりゃ肉焼きにきたんやんか


「………………俺もしらねぇってなんかゾクゾクって悪寒が走って机にあったホットプレートにしがみついてたらこうなっただけ……」

温度は誰かさんに指示された通りの低温、
良い焼き音と匂い立つ白煙の中、
黒髪を左手でひとつかき上げぼそりぼそりと。
だが彼がしゃべる度にそれは暇を持て余した死鳥舎様の燃料となり燃え広がっていく。
死鳥舎はどんな些細なひとことも聞き逃さない、彼らは少しでもおもしろそうなものを好き勝手に妄想し膨らませ共有したい生物であるから。


▼有料暴走▼

51134ぼこ:なんかいきなり語り出したんだけど
51213ぼこ:お前ごときが長文をしゃべるな
51278ぼこ:ご、59点がしゃべる!?
50398ぼこ:髪かくな汚い
50451ぼこ:いうほどオカンが走ってホットプレートにしがみつくか?
50608ぼこ:↑餃子に蓋するの忘れたときとか
50642ぼこ:いうほど机にホットプレートないからっ
50655ぼこ:しまうのだるいからね(主婦目線)
50666ぼこ:きのう焼きそば?
50677ぼこ:ホットプレートした日の次の日はホットプレートになりがち
50698ぼこ:↑私がやるやつ(笑)
50700ぼこ:ここ主婦多いな…
50706ぼこ:死のダンジョンだからな
50707ぼこ:↑チンキス
50710ぼこ:やっぱ頭おかしいわこいつ
50774ぼこ:おっ、キャラ付けがんばってんな
50826ぼこ:ホットプレートマンが有能で嫉妬がひどい
50887ぼこ:有能?
50931ぼこ:アレをみてると相対的に有能ではあるな
50960ぼこ:パーティーに一台は欲しいよ、ええ
51071ぼこ:どのパーティーかによる
51112ぼこ:まぁボス戦前のセーブポイントにこいつが中華そば袋もって突っ立ってたら便利よ
51219ぼこ:てかあいつらどこ行った?
51270ぼこ:丘梨主役交代したんだってよ
51413ぼこ:ホトプレ男「丘梨ィィィィはやくきてくれえぇぇぇぇ(じゅーーーーっ肉裏面チラり)」
51551ぼこ:主婦の味方ホットプレートマン!



マリアレポート❾
【FS】とはfoodstuffの略つまり食品食材のことだな。
モンスターを打ち倒すことでドロップするカードパック、食材の入手方法は主にそれかスタンダードカードパックからも出る、あとは現世から持参するしかないな。
なぜこうも食材カードというものが存在しているのか……
探索者たちをより長くより深い死階まで生かすためか、モンスターを積極的に駆除させるためか?

どちらにせよ挑戦者のいないダンジョンとはきっと寂しいものだな。
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