雷先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 〜絶対的の果てをめざして〜

山下敬雄

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第12話 育成イベント【クリティカルショット】

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【育成イベント牛頭梢編】

ダンジョンを抜け出した牛頭梢はとある喫茶店に来ていた。

数時間前、遠くふしぎな水平線を見つめ、ヤドカリと並びコード接続し充電したスマホをいじりながら。ぼーっとして座っていたところに…とつぜん、海から砂浜に流れ着いた。
──その洒落たボトルメールを受け取り、瓶に封じられていた中の手紙には、〝この場所〟が記されていたのだ。

ちょっこしやってきた牛頭梢は腰をやすめ、テラス席に座った。客は田舎にしては家族連れやらそこそこいる、経営が成り立ってはいるようだ。
そしてボトルメールの指示通りに、注文したメニューをこなしていく。フォークを鉄色の皿に突き立て──巻き取っていく……。

「ちょっこし、ただめし」


「なぞ」


しかし、なにも意味がない、なにも起きない。そう、シデン・レイラはそれっぽいかっこいい事をしただけなのであった。とくに、漂流するボトルメールは人生で一度、文字に起こすだけではなく実際に生でやってみたかったのであった。

ただ、ただめしを牛頭梢はいただいていく。くるくると謎はトマトケチャップの赤に絡まり、空いていた胃袋におさまるばかり。

午後3時52分、【喫茶グランド】でおすすめのナポリタンとミルクコーヒーを────




【育成イベント月山編】

「はぁあああああ!!!」
「────芸がないな、ただ若さだけを取り出したところで精々そのへんの年寄りを喜ばせるだけ、強くは」
「これが精一杯のっ、たのしませる芸なんてないんだからァ!!! そのへんのヘンなみんなや大人みたいに寝惚けてられないのッ! 剣なんてどうでもいいのっ!!!」
「ッ、それはイチブ同感だッッ、──ツァッーーーー!!!」
「きゃっ──ちょっとおおお、脇腹でも痛いんだからァはぁああああ!!!」
「アレはまったく奔放なならずものばかりをッッ! よく見つけてくるものだ、ツァッーー」
「奔放なのはそっちとアレなんだからァっ、はぁあああ!!!」
「それは…癪でしかないッッツァッーーーー!!!」



【育成イベント海都編】

騎乗位ではげしく、手早く、一度済ませたド神子は早くも電池切れになり……。これ以上の自発的サービスは終了、マウントポジションを降りピッチャーの交代を告げた。

今度は正常位のカタチとなって男女密着の行為に寝転びながら耽ていく。汗かき、刺激し合い、まぐわいだくだくと分泌し、密閉された空気がいやらしく澱んできたスイカテント内で、なおもつづく。

薄暗い赤のナカ。脱ぎ捨てられた彼の水着、彼女のグレーのスポーツブラとパンツ、黒いパジャマの下。

流れる汗粒が混ざり合いド神子の黒いパジャマ1枚だけの女体へと、ぽつり─ぽつり─と滴り、伝っていく。

必死で、夢中で腰を動かしてド神子の中を突いていく。興奮で反り返った硬い肉棒が、腹側の膣壁に熱く擦れていく。
汗を散らしながら息を荒げながらも若者の彼は、言われたとおりに寝転ぶ彼女のため必死にはたらく。
そんな前のめりで、でもダメになりそうになりながらもなんとか1人の雄として頑張る…若者の表情を、ポーカーフェイスなド神子は、いつもよりもイキイキとした目で下から観察する。

あるがままに受け入れて、海都からその穴を与えられ使われつづけながら、男女密着のセックスをしながら、観察する。

「あぁー、…まじぽかぽかきもちよくて…イキそうだわ、その調子打ち込んでこーい、んっんっ、やぁばいわ、これ…あーぁ…いいかんじ、かもっ……ゆかげん、」
「あぁあああどみこしゃん♡あぁ…あ」
「名前呼ばれんのふつうに照れるわ、ハイハイだいじょうぶ、どみこ姉ちゃんよイマ、当主代行やめて」
「ぁああどみこしゃんどみこしゃ…♡」
「めっちゃ甘えてくるじゃん、カピバラ男子。ん──、あー、ひょっとしてちゅーしたい? あー、どうしよ…しゃーないわ、ほい──おいで」

両腕を天へと伸ばす。そんな謎の包容力を今に魅せた眼下のド神子に導かれるように────海都は沈み込んだ、彼女の柔い肉体へと。その醸し出す魔力と慈愛魅力には逆らえず、彼女の中にすっかり溺れていく。

惚けた顔が近づいて、いつまでも虚空をパクパクと吸うだけの青年の隙だらけの唇を、じれったいので待ち疲れたド神子はさらに引き込み──いただいた。

頭に腕を回し引き込まれて唇を唇で抱かれ、躊躇いのない長いキスに一抹の躊躇いなど溶かされてゆく。ゆっくりはむはむと唇肉を舌をやわく咀嚼され、うながされる。そのまま、耐えきれず海都はド神子と正常位で繋がったまま射精した。

ド神子のキスに夢中になり腰を動かすこともなく射精。きゅっとド神子の膣壁に上手に締め上げられ、その収縮性能のいい蜜壺の名器に、ザーメンを漏らしていく。
食べるようなキスの動きにリンクしてか、どぷどぷと…長々と…漏れ出でて止まらない……。

そしてようやく────

「んちゅぱえろれろれぇ……────あーぁ、カラダ、…めっちゃぽかってんわ、さいこうじゃん、あーぁなんか、なんかめっちゃ体調いい感じだわ。ダンジョンっ子なカピバラたちをしゃーなし育成するつもりが、──ねむれるド神子育成イベントのほうだったとはね、じんせいそんなことあんのね、」

「あああぁ…♡」

「ああああーぁ。じゃ、寝るわ、てんぞうくん。──あーぁ、…まいっか、毛布くん、」

だらしなくもたれかかり、覆い被さりダウンする。キスとセックスで精を出し尽くした青年。
どかそうとも思ったが案外その重みがちょうどよかったので、肉の毛布にしそのまま古井戸神子は……猫のようなのびやかな欠伸をし────心地良いねがおで眠りについた。






★★★
たくさんのカピバラたちといっしょに大きな一枚のチョコチップクッキーに齧り付いている。
青い2匹のカピバラや、赤いカピバラ、静謐をこのむ金のカピバラや、何かの映像を夢中で眺めているメガネのカピバラ、槍持つ高飛車なカピバラも、べつの青く賑やかな三姉妹のカピバラも、新しい顔も、ふるき顔も、

悪の種を撒く魔王を寝かしつけた勇者古井戸神子は、今、平和な王国にいる。

腹を満たし、寝る、繰り返す

気合を込めた剣と剣がぶつかり合う音でまた目が覚める。そしてまた何かを握り取り、寝起きのちょっかいを……。

彼女にとって浮世とはそんなものである。
しかし、ずっと、そうもいかない。

彼女は役目を終えたソレを握ったまま寝ていた。

不安を掻き立てる慌ただしい重なり合う足音が、もうそこまで近付いてきている。


心地の良い眠りから覚めると────




「ええ、なんでこうなって…」

「あと1分寝てたらやぁばかったわ、きてんねーカピバラ、じゃなくてザリガニ? いや夢? はは、カサカサ、やぁばいわ」

古井戸神子は握っていたイッポンの硬い感覚が無くなり、目覚めた。
同衾していた海都に起こされ、共にスイカテント内から外に出たところ────。ビーチにもう何度も海都が見かけたことのある例のヤドカリのモンスターが攻めてきたのであった。どうやら相当この青い環境がどうしても占領したいほどにお気に召したらしい。

「いや、ザリガニでも夢でもなくてヤドカリかとっ!! …またあんな数が攻めて…あっ! でもどみこさんってたしか先生より強いんすよね!!」

「あーぁ」

海都は思い出した。先刻、雷夏先生のしていた過去自分語りのことを。その回想のお話の中では、古井戸神子は先生ですらまだまだ敵わないと、刃を一度も交えずとも、そう評価されるほどの傑物であったことを。

見飽きた敵が攻めてきている焦燥のシーンではあるが、見つけたお隣のドデカイ希望に海都は期待の眼差しをむける。
そんなお熱い視線にえくぼをつくり、古井戸神子はパジャマをゆっくりと羽織りなおし、なにやら気合を入れるようにボタンを留めながら────

「サクッとやれちゃったりぃ…?」
「あぁー、アレ演技」
「おねが…え?」
「ぜんぶ嘘なんだわ(そのかいそう)道場で1番よわいよド神子、げんぞうガンバ」

ボタンを互い違いのチグハグに留められた黒パジャマの女は、寝ぐせ頭をかきながら笑っている。

海都は期待の眼差しからそのまま目をぐっと見開いた、驚きでだ。良くない意味でのおどろき。蟹脚の足音が近づく切迫する状況で、衝撃の事実をさらっと聞かされてしまった。

「ぜんぶ嘘」──だが、またそれも彼女の嘘であると焦燥する海都の脳内では思わずにはいられない。

「ええ!? いや、ウソですよね! え!? た、たたたたかってください! 先生じゃないですし俺だけじゃ絶対あんな数のヤドカリの相手なんて無理っスよ!! なんか前より…殻がイカつくなってますし! ってもう来てッ」

既に肉薄、上陸した砂浜にて敵と衝突する。2人が話し込んでいる間にも敵の足音は近付いてやまない。
「たたかってください!」ハンドガンを既に握りながらも海都は情けなくもそう居合わせた彼女に懇願するしかなく、神子もまた頭を掻いてこれ以上意味のない行為をしている余裕じかんはなかった。

捨て身で直進してきたヤドカリを最小限の動きでド神子は横にいなし、持参していた適当な古い手持ちの剣チップですれ違い様に斬ったものの──。その高く鳴らした剣音、柄に返るてごたえは硬い。

ゴテゴテした装飾の貝殻には浅い引っ掻き傷だけで大したダメージを与えたようには見えず────。

「んー確かにイカつい歴戦のヤドカリ? ちょっときぃついかぁたいわ、」

なおも敵は2人とスイカ柄の宿の方へと執拗に接敵行動をしてきている。攻撃を避けても数に劣る2人に油断する暇はない。襲来したヤドカリモンスターの多勢相手に平和ボケの会話を繰り広げている場合ではない。巡り来た危うい状況に、さっきまで同衾し寝入っていた人間たちはどちらも戦闘のスイッチへと切り替わった。

「そいつら硬いんで殻に籠る前に罠か手早くヤっちゃえとのことです! そう先生ガ!!! 【策咲クレープグレープ弾】 っす!!!」

海都は自身と神子の立つ位置に罠を仕掛ける。今オーラを伸ばした敷いた白い円形クレープエリアに入った敵意を、さらに生成する聖なる槍で自動迎撃する。駆けてきた厄介なヤドカリ客を、地から天国の宿へと見事に貫きお帰しした。

「なぁ~。なるほどね、はやくか、夏ちゃんのわりにかんがえたねぇー。でも罠にはかかるけど罠ハレるタイプじゃないわ、おっ、」

傍目に青年のヤドカリモンスターの調理方法を確認。その技を感心かつ理解したド神子は先程2人を乗せていた砂の匂いを嗅ぎ取り、寝ぼけていた目を見開き、ぼんやりとひらめく────。
そしてゆったりと、使え慣れぬ形状の剣を下段に構えた。

左右前、三方から助走をつけアタックを仕掛けてきたヤドカリを────斬、

赤、青、黄のヤドカリは殻に籠り砂をスベリご自慢の硬さをぶつける前に……その中身を目にも止まらぬ剣速で、踏み込み、調理され──散。


【サクサク○だんだだ~~ん♪】:
先ほど砂地を円く焼いた白いクレープエリアのオーラ残滓を嗅ぎ取り、利用し、理解。
海都の敷いていた罠をもう一度薄く焼きなおすように……張る。
そして【策咲クレープグレープ弾】を自己流に瞬間天才アレンジした。
自身が罠となり、甘く感知した敵へと目を瞑りながら身を任せ斬り刻む。
そのクレープエリア内に侵入した敵へと斬り刻む無数の解・太刀筋のイメージを、甘さの種類で表し、古井戸神子の味蕾を介し脳へと伝える。
情報を甘さに変え、甘い情報を摂取! そうして繰り出した先程の三つの剣筋、やった本人ですら理屈の訳の分からない最速の〝剣〟は見事起動したのであった。

「チョコ味、さつまいも味、ヤドカリ味。なにこの技……あったまオカシくてやぁばいじゃん、さすがにやぁばくてひくわ、ぅべぇ──」

目を見開き舌をべーっと出した。
無理な技を放ち、急速にその刀身へと熱のこもった武器チップの剣は散り散りと砕け失せる。そんな失敗した事情も知らず、ド神子の目にも止まらぬ神技を見ていた海都は口をあんぐりとあけ驚嘆した。

「す、すごすぎる…一瞬で三体も…ナニが…」

「いやさっきの毛布くんの方が動かずにオートマチックやってんじゃん、嫌味はだめよ。やっぱ剣ってよぉわいわ、(次はもうちょいオーラを辛くしてやってみるか? にしても技に、オーラに、味がついてんのやぁばいじゃん、これって彼の【設計図】というより彼の【メニュー】? はは、なぁる)」

「いやいや全然強いすって!!! …俺はただ先生に教えられた技出してるだけなんで…あっまた来てます! やっぱあいつらのコトって性懲りないっていうんすよね!」

「性懲りない」さっきの三体では終わりではない。まだ4、5、続々と海の彼方からこのビーチとスイカテントの住みよい環境を奪うために、ヤドカリの集団が殴り込みお越しである。どんなに犠牲を払ってでも手に入れたいものなのか。

「カチャリ」……ハンドガンを構え直す。先ほどの剣士の活躍に触発されてか、少し勇ましさと余裕を取り戻した青年の横顔をド神子は見つめている。
その視線に彼も気付き、いい表情で振り向くと────

「男子、熱いところわりぃ、動けんだわ、」

「え? うごっけ…?」

「しょうこり、肩こり」

剣を杖代わりにし、いつの間にか彼女の身から出た汗で濡れにぬれた、足元の砂地に突き刺す。
そして凄腕の女剣士はぼそぼそ語り、よぼよぼなお爺ちゃんのように頼りなくそこに突っ立っている。

状況から察するにその言葉の意味は、その場から一歩も動けない…そう言いたいと推測される。しかし、そんなおふざけに彼も付き合ってはいられない。
一番弱いというのもまったくの嘘であったことを海都は先程の彼女の剣捌きで知っているからだ。

「しょうこ…ええ!? いやッッ肩こりなら動けますって! 何またふざけてんすかァどみこさんッ!」

「やーやーまずったぁ、調子ノリすぎたわ……楽天海都くん──まもって、いやほんとにやぁばいわ、、、、一歩も、」

「ええええ!?? ホントにイpッポモ!? いや、いあやいやいやいやム────うおおおおおおおもうきてるぅうって!! なんで俺の名前を今になってちゃんとここでぇッ、知ってたんじゃないすかあああああとなんでおれ毛布なんすかあああああああああああ」

絶叫しながらも握る銃は【策咲クレープグレープ弾】を、急に役に立たなくなったド神子を守るためにもう一度オーラを振り絞り、罠を仕掛ける。
押し寄せるヤドカリの尖兵を2、3討つがまだ滅ぼすには足りない。
チップから呼び出したハンドガンを2丁、狙いもあいまいに撃ち放つ。できるだけ腹の底から叫びながら────。
しかしダンジョンビギナーが気合だけで乗り切れる局面など────、

迫るヤドカリの鋏が近い────


「────なんだ、海都まじ、、さっきからつぅよいじゃん。────濡れたわ、」


なんでもいいから手に取る手持ちのチップを次々に使用した。汗水を散らし乱射する2丁銃はいつの間にかそうではなく……海都は無我夢中の最中で巡り来た──重いトリガーを、両腕が痛むほどの目一杯のパワーで引いていた。

乱れ咲く桜色の拡散ビームはスベテの硬い甲殻を貫いていった。

「────────アレ…………なんでこいつ…また?」

手にしていたのはあの純白。召喚したおぼえのない、前回のダンジョン、あのとき、役目を終えて失われたとばかりに思っていたレアチップ、純白の円い盾がたしかに……。迫る危機に必死の全力を出し切り、砂地に派手に尻餅を付いた海都の右腕に、装備されていたのであった。

「あー、みれんがましく宿ってんだわそれ」
「宿ってる?」
「どれどれ、あぁー」
「な、何か分かったんすか?」

一緒に将棋倒しになった背後の古井戸神子は、海都の頭の右側からひょっこり顔を出し、厳しい局面を凌いだ白盾のまだ熱宿るその曲面をなぞる…………。
消耗し散り失われたはずの海都が手に入れたレアチップが今ここにある。しばらく感触を確かめるように黙っていたド神子はレア盾を撫でるのをやめ、語りだした。

「『ド神子お姉さままじ死んだ魚の目みたいだけど顔だけはべりータイプ』だって、」

「どんな!ええ…?? いや俺がききたいのは冗談の方じゃなくて…え、ほんとに?」

すぐ真横にある顔にもう一度、海都はたずねた。

「冗談、盾がしゃべるわけないんだわ、」

「なんすかそれ…ってですよね…」

「本当に冗談しか言わない人だ。さっきのも演技だったのではないか?」海都がそうもやもやと思いながら苦い表情でいると、後ろから彼の脳天へとイッパツ──。古井戸神子は何故かノリツッコミを、芸人もおどろくような弱い声量でした。

「だれが死んだ魚の目だってぇ」
「いて!? え、なんでチョップ」
「やっぱツキヤマいるわ、まじカピバラ遊撃手、間合いがひろい、」
「……カピバラゆうげきしゅ? …痛たっ!? なな、なんでぇ…」
「前のこれ、無限にあいこしかださないわ。わかった、あと、今から5年──えぇと、いいやぁー、うーーーす、ともらいなきは禁止、はいっ────」
「えぇ…あっ いたっ!?」
「ふふふ、あっ、またまたヤドカァぁリきてんだわ無限チョップマシーンくん」
「えぇ!? ヤドカリのぞうえ いたっ!?」
「んじゃぁ、さっきのエロ盾で10秒で倒してきて」
「えぇ…じゃなくてハイ! ──ってアレ!??」
「あー、やぁばいわ。エロ盾ド神子なでなででイキ死んでんね。あーぁ…………でもっ、まいっか──しゃーないわ、エロチョップくんさがってな」
「ハイっ!!! 痛たっ!? なななんでぇ…」

青年を散々チョップし笑う古井戸神子は、また新たな剣を構えた。

チグハグのしゃれた○×△□のボタンはさり気無く、その纏う黒布に、今度は正しく、留められ。

さすれば限りなく万全……。ネムリから覚めた切先の期待感を、ダンジョン彼方の海へと向けて────




「これがだれかを守りたいココロね。そんなくっさいみれんがましいエロ盾の正義────熱くて濡れたわ、おもったより、」

「ええ…これってびー…む……。こんなのって!? まるで、よ、横綱級【ゴッチャビーム】……超鋼RIKISHIゴッチャンの……!?」

「ゴッチャ?? あぁー、なぁ~んかソレ、おもいだしたわ。そういえば昔、カピバラパーティーにもこんなのいたっけ。──んんー、じゃあ15年分……パクったロマン砲の設計図はついにかんせい、歓声────もうしんどっ、」

ビーチに海の雨が降る。海都が白盾でオーラを放ち無我夢中でつくったさわやかな飛沫どころではない──。海の幸まで、ぴちぴちチャプチャプと、拍手と歓声をあげている。
そのイチゲキは海に見せることのない土肌の道を作った。
その秘道に陽の光が直接当たる。

古井戸神子はまた眠ってしまわないように己の瞳を見開いた──。開かれたその道の先をただ、見つめている。
アレから時が経ち、今は遥か遠い彼方、思い出は閉じゆく海とともに、立つ荒波に元通りに呑まれた。
海面上に描いた虹の光を見つめて、古びた赤鞘の刀をそのアーチにかざして────────。



▼▼
▽▽



【育成イベント牛頭梢編】

独りのカフェテラス席にいたずらなそよ風が吹いた────。ナポリタンを平らげた牛頭梢はイチマイ、目の前に流れてきたなぞの52ページ目を手にしていた。

「この紙なに、────────なぞ」

そのちり紙であかいケチャップの口元を拭うか……迷っているようだ。

午後4時25分、なぞがなぞを運んで────



【育成イベント月山編】

「はぁああああああ」
「つぁっーーーー」
「はぁああああああああ」
「ツァッーーーーーーー」

【ド神子編】

ロボット王国こと千葉県出身の若き男に、有名ロボットアニメになぞらえて、横綱級と評されるビームを放ち……。またすっかりバッテリーと体力の切れた神子が例のテントで寝ている間に、オーダーの品、海都お手製のカレーはお疲れの彼女を労うために作られた。

【まくまくシーフードカレークレープ】:
降って来た海の幸のいちぶを有効活用。雷夏先生がホームセンターで新たに買い足したカセットコンロの上に、中鍋を置き、カレールーとダンジョン産のタコ、イカ、エビ類などをふんだんに放り込む。
何故かクーラーボックスに入れてあった見慣れた色合いと香りのするクレープ液をありがたく使い、それを代用したお好み焼き用のコテで薄く伸ばし、仲間のヤドカリの特殊殻に接続したホットプレートの上で、丁寧に焼き上げた。
とろみをつけすぎたカレールーが予想以上にお熱いので巻くのは断念。
焼き重ねたご自慢のクレープ生地をシーフードカレー餡にディップして味わう一品の完成だ。


「また変なのできてんねぇ、──まじ美味いわこれ、」

「それはあざっす……! あのぉ…ところで、さっきのなんだったんすか? 煮込んでる間もそれが気になってしまって…」

「あーぁ、さっき? なんかやったっけ?(生地にもイカ練り込んでんの? 海鮮しつこすぎてうぅまいわ、)」

「(ハイ。そっす…え、しつこ…)えっと、赤い刀から特大ゴッチャビームみたいなのを…ついさっきたしかに」

「あぁー、これか。これトクダイゴッチャビームなの? なんかダァさいわ、ソレ、誰かの二番煎じで、」

※【ゴッチャビーム】とは超硬RIKISHIゴッチャンに登場する大関級以上の機体RIKISHIが使えるルール無用の必殺の飛び道具のことである。主に相撲の投げ技と張り手だけではどうしようもない卑怯な敵に対して、ここぞのピンチの場面で使われることが多い。

古井戸神子は自身の内から、先程の戦いで出し入れ可能にまでレベルアップした赤鞘の刀を今、取りだして、質問者へと見せびらかした。

「いや、すんません……でもみたことないすごい威力してましたソレ、めちゃくちゃ…!」

「あー、さっきエロ盾からパクったからね」

「パク…え?」

「エロ盾のくっさい正義と、お陀仏カピバラパーティーの遺影からメガネと銃を拝借、(いぇい)」

シーフードカレークレープを平らげた指を舐め──舐め──。古井戸神子はその指で海都に謎のピースサインを形作り見せた。しかし、彼女は雷夏先生よりも全く分からないことばかりを言う。

「ど、どゆこと…でもアレやばすぎましたよ! やっぱ弱いなんてゼンゼン嘘じゃないすか!」

「それ、さっき強くなったんだわ、」

「えぇ、またまたそんな嘘を……でもっ。先生がかなわないって言っていた理由分かりました! とにかくすごすぎますよ! ひょっとしてなんか…っダンジョンクリアできちゃうくらい! ほんともうッあハハハ! クリアとかあるんすかねっあははは」

「あーぁ、あはは。久々にそぉんな褒められるときぃついわ。みんなには内緒でたのむ、」

「あははえぇ!? ナンべべすかそりぇ!」

ピースしていた中指を一本折りたたんだ神子はいつもよりテンションの高い海都の口元に、とんと、人指し指を押し当てた。
そして真顔をつくり、驚く海都のお顔に、ひとこと。

「──青いカピバラちゃんがうるさいから、とくに、」

「え?? …………なるほど…」

彼女がよく言うカピバラがなんのことかは分からないが、青いカピバラだけは何故かドレでダレであるのかが海都にも分かる。正面にした神子がその時はものすごく説得力のある真剣な表情をしていることも、海都にはよく感じ取れた。
そして、海都は神子の言動に自分も心底理解を示すように、ゆっくりとおおきくうなずいてしまった。

「────なるほどじゃないっ、」

「いてっ! ??」

繰り出したのはいつの日かのド神子チョップ。隙だらけの青年の脳天を打った。
しかし、今なぜ打たれたのか分からず。今日だけで9度頭頂を打たれたことになる海都は、ド神子のその自由すぎるノリと暴力に困った顔をしている。

「理不尽夏っちゃんのことをそこまでけちょんけちょんに悪く言うなイカ毛布くん、」
「えぇ!? そんなのは俺言って!? そんなつもりは……、え、──イカ毛布?? りふ」
「冗談、ところでさっきのゴッチャンビームだっけ? ダァさいわ、他の、毛布イカくん」
「も、もう…俺のことはなんでもいいっすけど……え? 急になんで俺が…まじ──すか…? でもきゅうに他っていわれても…えっと、──あっ(あまくひらめいた!)弾断ダンダンクレープグレ」
「ハイダメ」
「!? ……クレー」
「ダメ」
「! 横綱級メガ」
「ダメ」

「…えっと、クレ、くれ、くれ…クリ」

「栗?」

ド神子は苦悩しアイディアを搾りだそうとする海都の変な表情を、右手のひらを垂直に立てながら、迫るように覗き込んでいる。

「クリ…ティカル…」

「照かる?」

垂直に待機していた手を天におおきく振りかぶる。

「ショット……」

このどうしようもない流れに、いつもの如く身を任せ、できるだけを出し切った海都は、来るであろう衝撃にそなえて目を閉じた。


(くる……)

(くる…)

(アレ? こない──)

「……──まじいいわ、ソレ。」

むきだしの腹に右拳が、とんと、やさしくタッチし響いた。古井戸神子は真顔からじんわり表情が緩み──ワラっている。
どうやら海都が追い込まれて出したソレが気に入ったらしい。ぶつぶつと何度か声に出し、繰り返し──やはりと彼女は首を縦にうなずく。

「えっ…まじすか? いや俺としては(チョップされずに済んで)良かったすけど…やっぱさっきの剣の技なんで…あの…斬波メガトンバズーカきゃ」

「じゃ帰るわ、」

「え!?」

大採用されたもののソレがさっきのとてつもないイチゲキの名前になるのは申し訳ないと思い、海都はやんわりもう一度彼女に考案し直すように促したが。
突然──「帰るわ」とキレ良くド神子は言い放った。さっぱりと良い笑顔を披露して彼女は帰る。背を見せたよごれた黒パジャマは、

────

砂浜に足を取られて、こけた。


「ダ、大丈夫すか!??」

「そ、そそ…そそそ」

「ソソソ???」

「そそそこの刀、取って! ぶちこんでェェド神子に、やぁばいぃぃ!!! ──…しにそ、(あもだめ…)」

「ええええは、ハイーーーー!!! ──と取ってきました! って、ぶちこ!?? え、どこに!?」

海都の今慌てて拾い上げた忘れ物の赤い刀は、迷ったあげく不格好に倒れていた彼女の背に突き刺すようにぶち込まれた。
それから瀕死だったド神子は忘れ物のひとつを不思議にも己の内に仕舞い……。嘘のように元気を取り戻し「じゃ帰るわ、(リトライ)」──と言い直しダンジョンから外の現実へと帰ったのであった。



【クリティカルショット】:
神牙流当主代行古井戸神子はこの日、もう使うことも完成することもないのだろうと、あたためて眠らせていた夢の中の設計図のひとつを、運よく巡り合わせた浮世の出会いで完成させおぼえた。
その熱き、とてつもない空想必殺の一刺しを、彼女は生涯、寝ても覚めても忘れないのであった。
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