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13話 次のレクチャー
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シラガ部長はふたたび追いつき先をゆく、ぜぇぜぇ息を荒げ走る黒髪に振り向いた。
「はぁはぁ……なんでそんなにプラロボ部がなぞにタフなわけっ……ハァ」
「プラロボ部部長でリバーシのパイロットだからな! ってちょっとおまえ」
「そんなに無理せずちょっと止まっていいからサボれよ。さっきアッチ行ったばっかだろ、校長も見てないぜ」
「耳はかさないっ」
「は? っておおーーい────……走っていきやがった」
「────うん若さかな(耳はかさない使いすぎだろ……便利だけど学校の先生にはやめとけと言いたい……)」
アスファルトの端を急に駆けて抜かしていった、汗を流していた女子高生の背。
「にしても校長がカーゼタンクって言ったとき、びびったな。意外過ぎるだろ……はは。みんななにかしらプラロボのこと知ってんだなぁ。グランドの歴史は俺の生まれる前から……長いしな」
「メイさんも俺より断然くわしいし、校長もなんか良い感じにくたびれてて40歳ぐらい? 原点をリアルタイムで見てた世代であってもおかしくないよな……」
「すごいなぁグランド」
ちいさくなっていくがんばる背を見つめながら、立ち止まった銀河は大人たちとグランドのことをなんとなく考えておもいふけっていた。
「────ア、止まった……おーーーいビギナーパイロットぉーー」
電柱に右手をつき見つめる遠い青い瞳を、白髪を乱しながら追いかけていく。
▼
▽
運動した後はスポーツドリンクで栄養補給。
グランドナイツのパイロットたちは体力作りのトレーニングを切り上げてジャージ姿のまま部室へと戻った。
「おまえ明日どうする?」
「ぷはぁ……2週間しかないんでしょ?」
うなじに引っ付くべたついたうしろ髪をかきあげながら、水分補給を終え淡々と部員は答えた。
「そうだけどそりゃ……おまえ水の星のグランドを全話観るってなったらさ1日10話のハイペースでもあと3日はかかるな? そのうえアッチで訓練もしてるし、こうしてパイロットとしての体力作りも校長さんに渋く追加されちまって、無理なら無理って言ってくれた方が俺も分かりやすくていいぞ?」
「……それってぜんぶ、あそびのことじゃん。あそびに無理ってあるの?」
すこし心配そうに聞いたが、今日のプラロボ部としてのすべてのメニューをこなしていった彼女はそれを“あそび”と言い放った。
「あそび……一応プラロボ部としての部活動のつもりなんだけどな……否定はできるわけもない……。そうだな、たのしいあそびに無理はないな。でもおまえいくら水の星のグランドとフェアリーナイトに乗れるのがたのしいつづきだからって、またゲロ吐くなよ?」
「はぁ?」
いつまでソレ引っ張ってんのとでも言わんばかりに見合う海魅の顔は引き攣っている。
「ま、まぁじゃな! 今日はもういい時間だしこれにて部活動終了、俺は明日もいるけどっ」
そそくさと荷をまとめ逃げるようにドアの方へと銀河は急いでいった。
「────また明日、カラメルバッチリ」
汗が依然べたつく前髪を上げたスタイルになっているいつもとはすこし違う女子部員は、そうまた淡々と抑揚のない口調で言った。
「お、おう! バッチリ……筋肉痛なら無理に来なくてもいいぞーー!」
ドアはバンと慌てたように閉まる。
シラガはもうそこにいない。
「────ふっ」
ふーん。部活動とはいうけど……巨大ロボットを動かせるのはプラロボ部だけだよね。
正直意味不明の連続だけどグランドについてわかることも増えたよねフェアリーナイトにだってわたしは乗ってるしパイロットだし、うん。
だるだるだった1年2組の佐伯海魅さんがなかなかおもしろくなってきたところじゃない? ね、アオハルレーダー。
「あ、鍵」
作業台に置かれていたのか、置き忘れていたのか、独り残された海魅は部室の鍵をはじめて手に取り。
今日のプラロボ部の後始末をちゃっかり鍵閉めバッチリしてあげた。
▼▼▼
▽▽▽
時は流れた────────1日だけ。
若干の筋肉痛を押して日曜日にも部室に顔を出した海魅部員と既に早くから居た銀河部長が合流を果たした。
そして昨日のように今日は25話から視聴スタート。
流れはほぼ一緒だ。
そして当然今日も────────
例のシミュレーター世界と称される場所の例のエリアに2人はやって来ていた。
訓練は昨日と同じ手を繋いでグランドパワーを流し天脳システムの一部感覚を共有する高効率の方法を採用し始まっていた。
やがてコツをつかみ1人でも問題なしに自由に歩ける走れるようになったフェアリーナイトとその女子高生パイロット佐伯海魅。
今までこなしてきた訓練の成果があったということである。
「リバーシの補助なしでも大したものだな、兄貴分としてマイトお前は最高だぜ!」
『マイトじゃないけど、ふーーん。マイトの1話は超えたかな』
「伝説のパイロット、マイ・トメイロをライバル設定するのはいいことだけどさ……はは」
「じゃあさっそくその辺散歩しに行くか」
『ふんふーー、ん?』
佐伯海魅部員が一応の動作ができるようになったところでレクチャーは次の段階へと、
散歩と称した難易度☆エリアの探索。野をともに歩いていく、先導するリバーシとその後をゆくフェアリーナイトは各々のプラスチックの足裏で進み。
既に接敵。
スクラップの小山から生まれたように現れてきた3匹の鉄犬。
リバーシの腰の高さほどの全高の敵である。
「こいつは【犬メタルドッグ】だ」
『え、なに、敵!? は……それって犬なのにグランドロボット?』
「いやさぁなっ、ただのしらないその辺の野良犬! ははは、よしいい感じにエンカウントしたところでさっそく次のレクチャーだビギナーナイト!」
召喚したグランドナイツソードを手持ち────先行した一匹の鉄犬が飛びつく前に、巧みに一歩高速で前に踏み込みリバーシは剣を振り下ろし敵をぶった切った。
切れ味は鋭く、天から地へと狂いなく縦に真っ二つに両断された敵機がそこにいる。
取り返しのつかないダメージを受けたのは明らか────爆散。
「【グランドナイツソード】、グランドナイツのみが持つことを許された魔王討伐の意思を紡ぐ最高の剣だ。帯剣しなくても召喚すればどこでも応じて出現する便利さがある、まぁ言ったらこいつはRPGの通常近接攻撃だな!」
『これが通常……』
戦闘中にレクチャーしている暇は本来ない、敵はその間にも攻めてきた。
今度は2匹左右から同時に、さっきのは捨て駒だったのだろう。
いつの間にか左腕に装着した小盾バックラーを構える防御姿勢。
赤熱する牙と爪を剥き出しで飛びついた左の一匹とぶつかる瞬間のその前。
ピンクのレーザーが撃たれる。渦模様の構造で収縮するバックラーの中心から覗かせたブラックオニキスの瞳から放たれた。
閃光が貫いたのは飛びつき攻撃を仕掛けたはずだった犬の下顎。
「【灰マジック:霞散布】」
グランドパワーを使用、マジックを発動。即構築された灰色の魔法陣、灰色の霞を散布し右から同時のタイミングで襲ってきていた鉄犬がその灰色のナカへと入り込み、
勢いよく霞から出てきたのは一瞬にして──斬! されたものであった。
縦真っ二つの次は横真っ二つに、後方にいたフェアリーナイトの前ミドリの野に転がる敵機だったモノがある。
次から次に爆散、破壊された鉄犬はちいさなジグソーピースへと変わりリバーシの元へと吸い寄せられていった。
「でこれが盾とビームとマジックだ、次世代グランドナイツたち。なんてな」
灰色のマジックは明けて振り返る。見えてきた灰色の顔には黒の横長バイザーの目、
垂れた灰耳がぴくりと一瞬愛らしく跳ねた。
リバーシと浦島銀河のコンビを見つめるフェアリーナイトと佐伯海魅。
『さんぽいきなりいぬとせんとう……』
エンカウントした野良犬3匹は瞬く間に華麗に殲滅され、突き刺したグランドナイツソードを合わせた両手の杖にして────リバーシは堂々と大地に立っていた。
「はぁはぁ……なんでそんなにプラロボ部がなぞにタフなわけっ……ハァ」
「プラロボ部部長でリバーシのパイロットだからな! ってちょっとおまえ」
「そんなに無理せずちょっと止まっていいからサボれよ。さっきアッチ行ったばっかだろ、校長も見てないぜ」
「耳はかさないっ」
「は? っておおーーい────……走っていきやがった」
「────うん若さかな(耳はかさない使いすぎだろ……便利だけど学校の先生にはやめとけと言いたい……)」
アスファルトの端を急に駆けて抜かしていった、汗を流していた女子高生の背。
「にしても校長がカーゼタンクって言ったとき、びびったな。意外過ぎるだろ……はは。みんななにかしらプラロボのこと知ってんだなぁ。グランドの歴史は俺の生まれる前から……長いしな」
「メイさんも俺より断然くわしいし、校長もなんか良い感じにくたびれてて40歳ぐらい? 原点をリアルタイムで見てた世代であってもおかしくないよな……」
「すごいなぁグランド」
ちいさくなっていくがんばる背を見つめながら、立ち止まった銀河は大人たちとグランドのことをなんとなく考えておもいふけっていた。
「────ア、止まった……おーーーいビギナーパイロットぉーー」
電柱に右手をつき見つめる遠い青い瞳を、白髪を乱しながら追いかけていく。
▼
▽
運動した後はスポーツドリンクで栄養補給。
グランドナイツのパイロットたちは体力作りのトレーニングを切り上げてジャージ姿のまま部室へと戻った。
「おまえ明日どうする?」
「ぷはぁ……2週間しかないんでしょ?」
うなじに引っ付くべたついたうしろ髪をかきあげながら、水分補給を終え淡々と部員は答えた。
「そうだけどそりゃ……おまえ水の星のグランドを全話観るってなったらさ1日10話のハイペースでもあと3日はかかるな? そのうえアッチで訓練もしてるし、こうしてパイロットとしての体力作りも校長さんに渋く追加されちまって、無理なら無理って言ってくれた方が俺も分かりやすくていいぞ?」
「……それってぜんぶ、あそびのことじゃん。あそびに無理ってあるの?」
すこし心配そうに聞いたが、今日のプラロボ部としてのすべてのメニューをこなしていった彼女はそれを“あそび”と言い放った。
「あそび……一応プラロボ部としての部活動のつもりなんだけどな……否定はできるわけもない……。そうだな、たのしいあそびに無理はないな。でもおまえいくら水の星のグランドとフェアリーナイトに乗れるのがたのしいつづきだからって、またゲロ吐くなよ?」
「はぁ?」
いつまでソレ引っ張ってんのとでも言わんばかりに見合う海魅の顔は引き攣っている。
「ま、まぁじゃな! 今日はもういい時間だしこれにて部活動終了、俺は明日もいるけどっ」
そそくさと荷をまとめ逃げるようにドアの方へと銀河は急いでいった。
「────また明日、カラメルバッチリ」
汗が依然べたつく前髪を上げたスタイルになっているいつもとはすこし違う女子部員は、そうまた淡々と抑揚のない口調で言った。
「お、おう! バッチリ……筋肉痛なら無理に来なくてもいいぞーー!」
ドアはバンと慌てたように閉まる。
シラガはもうそこにいない。
「────ふっ」
ふーん。部活動とはいうけど……巨大ロボットを動かせるのはプラロボ部だけだよね。
正直意味不明の連続だけどグランドについてわかることも増えたよねフェアリーナイトにだってわたしは乗ってるしパイロットだし、うん。
だるだるだった1年2組の佐伯海魅さんがなかなかおもしろくなってきたところじゃない? ね、アオハルレーダー。
「あ、鍵」
作業台に置かれていたのか、置き忘れていたのか、独り残された海魅は部室の鍵をはじめて手に取り。
今日のプラロボ部の後始末をちゃっかり鍵閉めバッチリしてあげた。
▼▼▼
▽▽▽
時は流れた────────1日だけ。
若干の筋肉痛を押して日曜日にも部室に顔を出した海魅部員と既に早くから居た銀河部長が合流を果たした。
そして昨日のように今日は25話から視聴スタート。
流れはほぼ一緒だ。
そして当然今日も────────
例のシミュレーター世界と称される場所の例のエリアに2人はやって来ていた。
訓練は昨日と同じ手を繋いでグランドパワーを流し天脳システムの一部感覚を共有する高効率の方法を採用し始まっていた。
やがてコツをつかみ1人でも問題なしに自由に歩ける走れるようになったフェアリーナイトとその女子高生パイロット佐伯海魅。
今までこなしてきた訓練の成果があったということである。
「リバーシの補助なしでも大したものだな、兄貴分としてマイトお前は最高だぜ!」
『マイトじゃないけど、ふーーん。マイトの1話は超えたかな』
「伝説のパイロット、マイ・トメイロをライバル設定するのはいいことだけどさ……はは」
「じゃあさっそくその辺散歩しに行くか」
『ふんふーー、ん?』
佐伯海魅部員が一応の動作ができるようになったところでレクチャーは次の段階へと、
散歩と称した難易度☆エリアの探索。野をともに歩いていく、先導するリバーシとその後をゆくフェアリーナイトは各々のプラスチックの足裏で進み。
既に接敵。
スクラップの小山から生まれたように現れてきた3匹の鉄犬。
リバーシの腰の高さほどの全高の敵である。
「こいつは【犬メタルドッグ】だ」
『え、なに、敵!? は……それって犬なのにグランドロボット?』
「いやさぁなっ、ただのしらないその辺の野良犬! ははは、よしいい感じにエンカウントしたところでさっそく次のレクチャーだビギナーナイト!」
召喚したグランドナイツソードを手持ち────先行した一匹の鉄犬が飛びつく前に、巧みに一歩高速で前に踏み込みリバーシは剣を振り下ろし敵をぶった切った。
切れ味は鋭く、天から地へと狂いなく縦に真っ二つに両断された敵機がそこにいる。
取り返しのつかないダメージを受けたのは明らか────爆散。
「【グランドナイツソード】、グランドナイツのみが持つことを許された魔王討伐の意思を紡ぐ最高の剣だ。帯剣しなくても召喚すればどこでも応じて出現する便利さがある、まぁ言ったらこいつはRPGの通常近接攻撃だな!」
『これが通常……』
戦闘中にレクチャーしている暇は本来ない、敵はその間にも攻めてきた。
今度は2匹左右から同時に、さっきのは捨て駒だったのだろう。
いつの間にか左腕に装着した小盾バックラーを構える防御姿勢。
赤熱する牙と爪を剥き出しで飛びついた左の一匹とぶつかる瞬間のその前。
ピンクのレーザーが撃たれる。渦模様の構造で収縮するバックラーの中心から覗かせたブラックオニキスの瞳から放たれた。
閃光が貫いたのは飛びつき攻撃を仕掛けたはずだった犬の下顎。
「【灰マジック:霞散布】」
グランドパワーを使用、マジックを発動。即構築された灰色の魔法陣、灰色の霞を散布し右から同時のタイミングで襲ってきていた鉄犬がその灰色のナカへと入り込み、
勢いよく霞から出てきたのは一瞬にして──斬! されたものであった。
縦真っ二つの次は横真っ二つに、後方にいたフェアリーナイトの前ミドリの野に転がる敵機だったモノがある。
次から次に爆散、破壊された鉄犬はちいさなジグソーピースへと変わりリバーシの元へと吸い寄せられていった。
「でこれが盾とビームとマジックだ、次世代グランドナイツたち。なんてな」
灰色のマジックは明けて振り返る。見えてきた灰色の顔には黒の横長バイザーの目、
垂れた灰耳がぴくりと一瞬愛らしく跳ねた。
リバーシと浦島銀河のコンビを見つめるフェアリーナイトと佐伯海魅。
『さんぽいきなりいぬとせんとう……』
エンカウントした野良犬3匹は瞬く間に華麗に殲滅され、突き刺したグランドナイツソードを合わせた両手の杖にして────リバーシは堂々と大地に立っていた。
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